【中間報告書】薬剤師にメリット実感なく~電子処方箋の課題浮き彫り
厚生労働省は5日、昨年10月末から実施している電子処方箋のモデル事業に関する中間報告書を公表した。利用状況や課題をヒアリングしたところ、マイナンバーカードの利用者が少ないことなどを背景に、「過去の薬剤情報が調剤の参考になる事例がない」と回答する薬剤師が7割超に上るなど、電子処方箋のメリットを享受するには道半ばの実態が浮き彫りとなった。
モデル事業は全国4地域で医療機関12施設、薬局81施設の計93施設が参加。3月24日時点で、医療機関が電子処方箋を原本として電子署名を付して電子処方箋の発行ができ、薬局が電子署名を用いて電子処方箋の応需を実施して調剤結果の登録ができる「ステップ2」には88施設が進んでいる。
電子処方箋の発行件数は、1月の本格運用開始以降に大きく増加したとし、およそ1週間当たり400~600件で推移している。一方、全ての処方箋データ登録件数に占める電子処方箋の割合は6%で、全ての調剤結果データに占める割合も2%にとどまった。
また、参加施設の薬剤師や医師に利用状況や課題をヒアリングした。オンライン資格確認等システムで閲覧した過去の薬剤情報が調剤を考える上で参考になったか尋ねると、薬剤師は「参考になる事例がない」との回答が7割以上となった。
その理由として、「マイナンバーカードの利用が少なく、薬剤情報提供の過去履歴を参照できるケースが少なかった」ことなどがあったが、事例があったと回答した人では「重複や過去治療歴の確認ができた」などの意見が見られた。
重複投薬・併用禁忌チェックがあった場合、従来と比べて処方の実施に影響があったかどうかに関しては「変化はない」との回答が多数だった。
医師についても、電子処方箋データの薬剤情報が処方を考える上で参考になったかどうかは「参考になる事例がない」「あまり事例がない」との回答が9割を占めた。運用面の課題では、申請の遅延で全ての薬剤師・医師にHPKIカードの交付が完了していないとして、速やかに交付しHPKIセカンド電子証明書の取り組み推進も必要とした。
発行された電子処方箋をどの薬局で受け付けたか把握できない事例もあったとして、医療機関側で受付薬局の情報を入手できる体制を用意すべきとした。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2022年10月末から実施されている電子処方箋のモデル事業に関して、厚労省が中間報告書を公表(4月5日)。利用状況や課題をヒアリングしたところ、マイナンバーカードの利用者が少ないことなどを背景に、「過去の薬剤情報が調剤の参考になる事例がない」と回答する薬剤師が7割超に上っていました。電子処方箋のメリットを享受するには、まだ「道半ば」である実態が浮き彫りとなりました。