医療

若手薬剤師確保へ新規事業~奨学金返済支援など展開【山口県】

薬+読 編集部からのコメント

山口県では今年度より、就職活動時から就職後まで幅広い取り組みを複合的に展開する若手薬剤師の確保と偏在緩和を目的とした新規事業を開始しました。地域医療介護総合確保基金等で薬剤師の奨学金返済を支援するほか、病院と薬局の求人情報が掲載される山口県主導のウェブサイトを新設し、県内での就職を呼び込みます。病院と薬局での3年間の標準的な薬剤師育成プログラムを構築することで、各施設で役立ててもらう考えです。

山口県は今年度から、若手薬剤師の確保と偏在緩和を目的とする新規事業を開始した。就職活動時から就職後まで幅広くいくつかの取り組みを複合的に展開するのが特徴。地域医療介護総合確保基金等で薬剤師の奨学金返済を支援するほか、病院と薬局の求人情報を掲載する県主導のウェブサイトを新設し、県内での就職を呼び込む。病院と薬局での3年間の標準的な薬剤師育成プログラムを構築し、各施設で役立ててもらう考え。薬局や病院、薬系大学、行政の関係者が一堂に会して偏在対策を話し合う場を新設し、効果的な対策の立案も進める計画だ。

 

新規事業には1000万円強の予算が付いた。来年度に就職する薬剤師から適用できるように、今年度の早い時期にそれぞれの仕組みを構築する。奨学金返済支援の対象は最大7人。対象施設へ就職した場合、薬学部5~6年時の2年間の奨学金返済を支援する。支援額は1年当たり最大約29万円。働き続けてもらえば最長5年間支援する。

 

病院では、薬剤師の不足感が強い高度急性期、急性期、公的病院等に就職した薬剤師を対象に、最大5人の返済を支援。財源には地域医療介護総合確保基金を活用する。

 

薬局では、へき地の薬局に就職した薬剤師を対象に最大2人の返済を支援する。財源は奨学金を活用した若者の地方定着を促進する総務省の仕組みで創設。薬局が半額を拠出するほか、県が4分の1、国が4分の1の資金を負担する。

 

標準的な薬剤師育成プログラムの策定も進める。各施設で3年間段階的に修得するスキルを示したもので、病院版と薬局版を設定。認定資格取得等につながるように各施設で活用してもらい、地方では成長しづらいとの不安を解消して就職を促す。同基金での奨学金返済支援は、プログラムの受講が要件となる。

 

また、病院と薬局の求人情報を掲載する県主導のウェブサイトを12月頃をメドに新設する。各施設ごとに求人情報を発信しても、薬学生や薬剤師には届きにくい。一元的な情報発信サイトを新設し、各施設の特徴や魅力をアピールしてもらう。施設や求職者の相談に応じるスタッフを山口県薬剤師会に配置し、その人件費を県が補助する。

 

県薬剤師会や病院薬剤師会、山口東京理科大学薬学部、県薬務課の関係者計7人が一堂に会して偏在対策を話し合う「薬剤師確保検討チーム」も新たに立ち上げる。今年度は4回の会合を開く予定で、薬剤師充足状況や県内就職動向を調査するほか、関係者の連携強化によって効果的な対策を立案し、次年度以降の事業に反映させる。

 

山口県の35歳未満の若手薬剤師数は、全国平均の推移に反して右肩下がりで減少している()。県は2021年度に山口東京理科大学に委託し、薬剤師需給の現況や将来必要な薬剤師数を調べた。

その結果、病院薬剤師数は全域で不足し、地域によっては薬局薬剤師を含め、不足が顕著であることが分かった。将来、薬剤師の需要は高まる一方、中高年薬剤師の引退や死亡に伴って薬剤師数は24年頃から横ばいとなり、34年頃から減少。35年時点で薬剤師数は需要に対し250~400人不足するとの推計が示された。

 

こうした結果を踏まえ、22年度に策定された県の5年間総合計画「やまぐち未来維新プラン」に若手薬剤師確保や育成、県内就職促進が盛り込まれ、今年度から新規事業が始まった。

 

県健康福祉部薬務課の久保田明子氏は、「就職活動期の薬学生だけでなく、就職後の資質向上も幅広く支援し、県内での定着を図りたい」と期待を語る。

 

来年度以降も中期的に事業を続けたい考え。今後、薬剤師が不足する施設への派遣や出向の仕組み創設も検討する可能性がある。

 

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出典:薬事日報

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