医療

後発品企業の指標作成へ~北里大・成川教授ら、安定供給力強化対応を評価

薬+読 編集部からのコメント

後発品の品質確保と安定供給に関する問題が取りざたされる中、厚生労働行政推進調査事業費補助金「適切な医薬品開発環境・安定供給及び流通環境の維持・向上に関する研究」の研究班が動き出しました。今年度中を目標に各後発品メーカーの安定供給強化に向けた対応を評価するための指標を作成し、企業指標に基づき要件を満たした後発品は薬価上の配慮を行うよう提案します。

厚生労働行政推進調査事業費補助金「適切な医薬品開発環境・安定供給及び流通環境の維持・向上に関する研究」(研究代表者:北里大学薬学部成川衛教授)の研究班は、今年度中を目標に各後発品メーカーの安定供給強化に向けた対応を評価するための指標を作成し、企業指標に基づき要件を満たした後発品は薬価上の配慮を行うよう提案する。発売後短期間での供給中止実績や在庫、製造余力度、製造計画・製造数量の公表など安定供給や品質、透明性確保に向けた取り組みを評価項目として設定し、薬価上で評価することで、品質が確保された後発品が安定供給される環境につなげたい考えだ。

 

要件満たせば薬価配慮

 

研究班は、後発品の安定供給強化に向け、各企業の安定供給、品質、透明性確保などの取り組みをポイント化し、評価に応じて薬価上の配慮を行うことを提案している。後発品専業メーカー5社を対象にヒアリングし、安定供給強化に向けた取り組みを評価するための企業指標を作成する上で基礎情報となる検討事項をまとめた。

 

安定供給に向けた取り組みでは、▽原薬メーカーの複数ソース化▽自社製造所の保有▽発売後短期間で供給を中止した品目数と理由、製造販売する医薬品数に占める割合▽在庫数量▽製造余力度▽1製造ライン当たりの製造品目数――などを列挙した。

 

品質確保に向けた取り組みでは、▽製造販売する医薬品にかかる製造所の人員体制▽過去3年間などで品質不良に起因して回収した品目数、製造販売する医薬品に占める割合▽製造所に対する定期的な監査の実施――などを挙げた。

 

透明性確保に向けては、製造販売する医薬品の供給停止や出荷調整の状況の医療関係者への適切な周知、原薬等の製造国・製剤製造企業の公表などを重要視したほか、製造販売する基礎的医薬品、安定確保医薬品の数・割合なども考慮に入れる必要があるとした。

 

今後、安定供給強化に向けた対応を評価するための企業指標を作成し、企業指標と個別医薬品の特徴との組み合わせに基づき、要件を満たす品目について何らかの薬価上の配慮を行えるかを検討する。後発品について初回収載時、薬価改定時のどちらにルールを適用するのが望ましいかについても引き続き意見を聴取していくとしている。

 

一方、後発品の共同開発によって承認を取得した品目については、単なる品揃えや規格揃えを目的とした製品が見られ、流通への負担や過当競争を招いている実態から、研究開発の効率化を反映させた特別な薬価算定ルールを検討することを提案した。

 

収載時には先発品価格の0.4倍の薬価を検討することや、共同開発の事実が外部で判明できるよう販売名に適切なグループ名を付記すること、改定時の薬価をグループに属する品目の実勢価格を加重平均することで同一とすることなども提言した。

 

先発品企業から許諾を受け販売される後発品(オーソライズドジェネリック:AG)については、AGに対する特別な薬価算定ルールを定めることは難しいため、AGに製造販売の許諾を与えた先発品に対する何らかのルールを適用すべきと主張した。具体的には、後発品の置き換えが進まない既収載品の薬価改定、後発品収載後10年を経過した長期収載品の後発品価格(G1/G2)の前倒し適用などを挙げた。

 

また、複数企業による同一成分の不採算品目が同時期に市場から撤退した場合には、後発品シェアが高い品目ほど医療現場に大きな混乱を来たすため、供給継続へのインセンティブも含め、安定供給をサポートするルールを検討する必要性も指摘した。

 

成川氏は、「安定供給や品質、透明性確保で実績があり、将来的にも計画を持って取り組んでいく後発品メーカーを評価していくことが必要。今後の研究を通じて後発品メーカーが安定供給に真摯に取り組んでもらうことを応援できるような材料を提供したい」と話している。

 

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出典:薬事日報

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