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毎年薬価改定「もはや限界」~抜本的な制度見直し必要

薬+読 編集部からのコメント

6月9日に薬価制度の抱える課題を分析した研究報告を発表した日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会は、薬価改定を毎年実施することについて「もはや限界である」と指摘しました。現在の薬価改定の根拠となる薬価差が生じないよう市場実勢価格に基づかない薬価改定方式などの導入など、抜本見直しに向けた検討が必要と主張しています。

日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会は9日、薬価制度の課題を分析した研究報告を発表し、「薬価改定を毎年実施することは、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロス、安定供給確保への支障など、医薬品へのアクセスに対する影響が深刻化している現状において、もはや限界である」と指摘した。現在の薬価改定の根拠となる薬価差が生じないよう市場実勢価格に基づかない薬価改定方式などの導入など、抜本見直しに向けた検討が必要と主張した。具体的な方策として、革新的新薬に対する特許期間中の薬価維持、長期収載品の撤退ルール(G1ルール)の見直し、低薬価となっている医療上必要性の高い医薬品の薬価下支えの仕組みなどを挙げた。

 

新薬創出等加算については、「(2018年の)薬価制度の抜本改革により薬価が維持できない特許期間中の新薬が増加した上、中間年改定の実施で改革頻度が増加したことにより、薬価低下が加速している」と指摘。その上で、「市場実勢価格に基づいて算定される額に加算するという同制度の仕組みが複雑であることや、公平性、予見性に乏しい企業要件・企業指標が現在の新薬開発の主体となりつつある新興バイオ医薬品企業のような少数品目を扱う企業に不利である」と分析した。

 

ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの要因になっているとして、現行の企業要件・企業指標は不要と指摘。医薬品そのものの価値を評価し、薬価差が生じない市場実勢価格に基づかないシンプルな仕組みとして、革新的新薬について特許期間中の薬価を維持する制度の「実現を目指し検討すべき」とまとめた。日本製薬工業協会の提案は、この方向に沿ったものだとした。

 

予見性を低下させていると企業側から指摘されている市場拡大再算定に対しては、「追加した効能・効果が市場に与える影響が小さい場合等、使用実態が著しく変化していないと判断できる場合には、再算定を適用すべきではない」と指摘した。

 

同算定の特例にも触れ、「単に年間販売額と市場規模拡大率のみに基づいて薬価が引き下げられることから、再算定の基本的な考え方と整合性が取れておらず不合理」として「廃止を含め検討すべき」と廃止に踏み込んだ。

 

長期収載品のG1ルールについては「G1品目シェアが20%を既に下回っているにも関わらず、後発品企業が増産対応を行うと判断する事例が少ない」とし、撤退できず薬価を下げられながら供給し続けなければならない恐れがあると指摘した。その事態に備え、撤退できるようにしたり、供給を続ける場合において薬価改定方法などを検討する必要性を挙げた。

 

後発品については、価格帯集約により銘柄によっては市場実勢価格を下回る改定となり、安定供給に支障を来す恐れが指摘されているため、銘柄別改定の見直しを検討すべきとした。

 

低薬価品などの安定供給策としては、安定確保医薬品のカテゴリーBの6割、同Cの8割で薬価が引き下げられ、「薬価の下支えが必要な品目であっても適切な手当がなされていない可能性が示唆された」と分析し、基礎的医薬品の対象拡大の検討を求めた。

 

不採算品再算定の「全ての類似薬について該当する場合に限る」という要件についても、供給実態が不明で同再算定の適用を希望しないために要件を満たせないケースが推察されるとして、「一定の供給が確保できる価格をどのように設定すべきかが問題である」と指摘。運用の見直しが必要とした。

 

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出典:薬事日報

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