処遇改善、人事院に要望へ~薬局薬剤師との格差解消
日本病院薬剤師会は5日の常務理事会で、病院薬剤師の処遇改善を人事院等に求める要望書をまとめた。国家公務員の医師らに支給される初任給調整手当の対象に薬剤師を含めることや、国家公務員の医療職俸給表(二)から薬剤師を独立させた俸給表の創設を求める。国家公務員の給与体系を参考にする公立病院や私立病院への波及効果を想定し、若い年代での薬局薬剤師との給与の格差を埋めて、病院での薬剤師確保につなげたい考えだ。
同日、都内で開いた記者会見で武田泰生会長(写真)は「病院薬剤師の不足と偏在の要因の一つに薬局薬剤師との処遇格差がある」と語った。
一般的に薬局薬剤師の方が初任給は高い。6年制卒薬剤師の半数弱は奨学金の返済を抱えていると見られ、高い給与をもらえる薬局やドラッグストアに入社する傾向が強い。病院薬剤師の確保には、若い年代での薬局薬剤師との処遇格差の解消が必要として、要望書をまとめた。日本薬剤師会や厚生労働省、関係団体との意見交換を経て、なるべく早期に要望書を人事院等に提出する計画だ。
俸給表の枠外で給与を上乗せする初任給調整手当、勤続年数や職務階級に応じて基本給を定める俸給表という給与を構成する2種類の要素を最適な形でうまく組み合わせることにより、関係者の賛同を得やすい柔軟な給与体系の設計が可能になると期待している。
この俸給表が適用される国家公務員の薬剤師は少数だが、全国の病院の約25%が給与体系の参考にしていると見られ、他の公立病院や私立病院への波及効果は大きい。
国家公務員の医師の給与は医療職俸給表(一)、看護師は医療職俸給表(三)で評価されるのに対し、薬剤師の給与は医療職俸給表(二)で算定される。医療職俸給表(二)は、栄養士、臨床検査技師、診療放射線技師なども対象となり、薬剤師独自の給与体系にはなっていない。
医療職俸給表(二)から薬剤師が抜けることは、10年以上前にも日病薬の課題になった。薬学教育6年制への移行を機に、医療職俸給表(二)からの独立や、医療職俸給表(一)での評価を得る策が検討されたが、結果的には医療職俸給表(二)の枠内での号棒アップで決着。4年制卒薬剤師の初任給に比べ、6年制卒では2万円強が上積みされる形になった。
今回は薬局薬剤師との格差解消を焦点に、独立した俸給表の創設を求めることになる。全体を画一的に底上げするのではなく、初任給調整手当を含めた柔軟な給与体系の構築が視野にあるようだ。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
日本病院薬剤師会が常務理事会(7月5日)で、病院薬剤師の処遇改善を人事院等に求める要望書をまとめました。国家公務員の医師らに支給される初任給調整手当の対象に薬剤師を含めることや、国家公務員の医療職俸給表(二)から薬剤師を独立させた俸給表の創設を求めたものです。同薬剤会の武田会長は「病院薬剤師の不足と偏在の要因の一つに薬局薬剤師との処遇格差がある」と語っています。