市場価格との乖離率6.0%~過去20年間で最も小さく 厚生労働省
厚生労働省は1日、医療用医薬品の現行薬価と市場取引価格の開きを示す平均乖離率が、今年9月取引分で約6.0%だったとの薬価調査結果の速報値を中央社会保険医療協議会総会に報告した。昨年度調査結果より1.0ポイント縮小し、過去20年間で最も小さい乖離率となった。単品単価交渉・契約の推進など流通改善に向けた努力が実った結果とも言える。医療上必要性が高い医薬品の価格下支え制度の見直しには「流通改善が前提」と中医協委員から指摘されていたが、3年連続で乖離率が縮小したことで今後の議論にも弾みがつきそうだ。
流通改善で一定の成果
今回の調査は、9月取引分を対象に販売サイドから11月2日までに報告があった取引価格を集計。平均乖離率は20年度に8.0%、21年度に7.6%、22年度に7.0%で推移しており、3年連続で乖離率の縮小を実現した。1ポイント以上の縮小は07年度調査以来16年ぶり。今年度調査では全ての投与形態で前年度から乖離率が縮小し、薬効群別に見ても乖離率10%を超えたのは2薬効群と前年度から一つ減った。
市場規模の大きい主な薬効群別の乖離率を取引金額上位で見ると、内用薬は「血圧降下剤」が12.3%で最大の乖離率となり、「消化性潰瘍用剤」10.6%、「精神神経用剤」9.3%と続いた。内用薬全体では7.0%と前年度から1.2ポイント縮小した。「その他の中枢神経系用薬」は9.0%から7.5%と大きく縮小した。
注射薬については、「その他のホルモン剤」が6.5%、「他に分類されない代謝性医薬品」5.7%、「その他の腫瘍用薬」4.3%の順で、注射薬全体では4.4%と0.6ポイント縮小した。
外用薬では、「眼科用剤」が8.3%、「鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤」が7.9%、「その他呼吸器官用薬」が6.9%で、外用薬全体では7.2%と0.8ポイント小さくなった。
後発品の数量シェアは約80.2%で、前年度の約79.0%から上昇。過去5年間は70%台にとどまっていたが、国が目標とする80%以上に達した。
総会で松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「前回改定で特例的な引き下げを実施し、不採算品や安定供給の問題が指摘されたのを踏まえると、平均乖離率で一定の縮小が見られた。医薬品業界が主張する状況がある程度見られた」と評価。その上で「まだ薬価差は存在しており、薬効や投与形態で見るとバラツキがある」との認識を示した。
調査結果の速報値を受け、同日の閣議後に会見した武見敬三厚労相は、平均乖離率が縮小していることに言及。「国から医薬品卸や医療機関に対して適正な流通を働きかけてきたこと、物価高騰の影響により原材料の調達コストが高騰してきていることなど、様々な要因が影響を与えた可能性がある」との見方を示した。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
医療用医薬品の現行薬価と市場取引価格の開きを示す平均乖離率が、2023年9月取引分で約6.0%だったという薬価調査結果の速報値が、厚労省から中医協総会に報告されました。2022年度調査結果より1.0ポイント縮小し、過去20年間で最も小さい乖離率となっています。