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【京都府医大・阪口准教授】乳癌患者にリフィル積極発行~患者や医療者の負担軽減

薬+読 編集部からのコメント

リフィル処方箋の導入が全国的に進まない中、京都府立医科大学内分泌・乳腺外科の阪口准教授の取り組みが注目を集めています。乳癌患者の術後に再発予防目的で投与するホルモン療法を対象に、2022年7月よりリフィル処方箋の発行を開始。これまで大きな問題はなく、順調に推移しています。

全国的に導入が進んでいないリフィル処方箋を積極的に発行する大学病院の医師が、京都にいる。京都府立医科大学内分泌・乳腺外科の阪口晃一准教授(写真)だ。昨年7月に、乳癌患者の術後に再発予防目的で投与するホルモン療法を対象にリフィル処方箋の発行を始めてから1年半が過ぎた。これまで大きな問題はなく、順調に推移している。阪口氏は、患者の通院負担軽減だけでなく、医師を含む医療従事者の負担軽減にも役立つと評価している。

阪口氏は、「患者の利便性や負担軽減を最優先して、リフィル処方箋の発行に踏み切った。仕事を休まなくて済むなど、患者さんは非常に喜んでいる」と振り返る。2カ月分の処方箋を2~3回繰り返し使用可能な形でリフィルを発行し、期間中に問題がなければ受診せず、薬は自宅や職場近くの薬局で複数回受け取ってもらうようにした。

 

患者は1~3カ月に1回の通院が必要だったが、開始後は4~6カ月に1回の通院で済むようになった。乳癌の再発を確認するCTやマンモグラフィの検査を病院で定期的に受ける必要はあるが、薬の継続処方の目的だけで受診することがなくなった。

 

再発予防目的で乳癌の術後ホルモン療法を受ける患者は、リフィル処方箋に適しているという。基本的に患者の病状は安定しており、同じ薬を5~10年の長期にわたって服用する。約9割の患者が再発せず、そのまま経過を観察することになる。ほてりやのぼせなどの副作用はあるが、患者自身でケアできる事例がほとんどで、医療従事者の介入が必要な重篤な事例は少ない。

 

患者の多くは働いている世代だ。育児中の患者も少なくない。京都府北部など遠方から通院する患者も多く、時間や交通費の捻出が負担になる。リフィル処方箋によって通院回数が減少するメリットは大きい。

 

懸念される安全面について、阪口氏は「患者さんとの付き合いは長く、日常生活で何か変わったことがあれば遠慮なく病院に連絡してもらうようにしている。これまで特に問題が起こったことはない」と語る。

 

リフィル処方箋を調剤する薬局薬剤師からも直接連絡が来たり、薬剤部を介してフィードバックを受けたりする。「副作用への対処や、突然生理が来たようだがどうしたら良いかなど、突発的な事象についての連絡が多い。『しばらく様子を見てください』『受診してください』などと返事をしている」

 

京都府立医科大学病院で阪口氏は、週1日は手術に費やし、2日は同院で外来を担当する。外来で診察することが多い再発患者には、リフィル処方箋を発行していない。基本的に手術後の再発予防目的の患者は地域の病院に紹介しているが、中には同院での継続受診を希望する患者がいる。この患者がリフィルの対象になり、阪口氏の提案でほぼ全てが発行に応じる。紹介先の2病院で週2日勤務しており、ここでもリフィル処方箋を発行している。

 

リフィル処方箋の導入は、医師ら医療従事者の負担軽減にもつながった。阪口氏は「外来での業務時間は以前より短くなった。一人ひとりの患者さんにゆっくり余裕をもって診察できるようになった。働き方改革に必要な手段だと思う」と評価する。

 

同院は、昨年7月にリフィル処方箋を発行できる体制を整えた。主導したのは薬剤部だ。四方敬介薬剤部長は「リフィル処方箋の制度が設けられたからには、発行できる仕組みを作っておかなければならない。リフィルは働き方改革にも貢献すると院内で提案し、外来の業務を減らしたい病院の意向と一致して認められた」と語る。

 

各診療科の医師が揃う場でリフィルの仕組みを説明した。実際に発行するかどうかは医師に委ね、その後積極的な働きかけは行っていないが、阪口氏のように呼応する医師が現れた。

 

11月の中央社会保険医療協議会で示された資料によると、今年3月時点で全処方箋に占めるリフィル処方箋の割合は0.05%。枚数が少ない上、昨年5月以降ほとんど伸びていない。一般的に診療所や民間病院は収入減につながるとして、リフィルを敬遠する傾向が強い。同院は公的な大学病院として別の観点で経営に取り組んでいることも、リフィルを発行できた背景にあるようだ。

 

同院で発行するリフィル処方箋は月間約120枚。大半が内分泌・乳腺外科からの発行だ。他の診療科は先天性疾患、脂質異常症、甲状腺疾患等の患者を対象に発行している。

 

薬剤部が昨年7月末から今年3月末までにリフィル処方箋が発行された133人を対象に経過を調べたところ、リフィル処方箋を発行した診療科に予約外で受診したのは3人(2.3%)だけで、入院や救急外来受診はゼロ。予約外受診はいずれも副作用での受診だった。発行患者の受診回数は大幅に減少しており、安全性を確保しつつ負担軽減に貢献したことが分かった。

 

四方氏は「先行している病院として、リフィルのポジティブな結果を示したかった。特にトラブルはなかった」と言及。「薬が高額化し、供給不足も続く中、残薬が発生するのはもったいない。リフィルなどで薬を小分けして渡すことは、残薬の抑制にもつながる」と話している。

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出典:薬事日報

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