医療

不眠悩む職員へ薬剤師外来~睡眠薬服用を気軽に相談 聖隷浜松病院薬剤部

薬+読 編集部からのコメント

聖隷浜松病院薬剤部は、不眠に悩む看護師などの職員が気軽に睡眠薬の服用について相談できる「職員向け不眠症薬剤師外来」の取り組みをスタート。2023年7月から、薬剤師が生活指導を実施し、不眠のアセスメントをしながら睡眠薬の処方提案を行う運用を開始したところ、約半数の職員が生活指導のみで不眠が改善する効果が得られています。

聖隷浜松病院薬剤部は、不眠に悩む看護師などの職員が気軽に睡眠薬の服用に関して相談できる「職員向け不眠症薬剤師外来」の取り組みを開始した。不眠に悩みつつ受診をためらったり、睡眠薬への不安を抱く職員に対し、精神科薬物療法認定薬剤師が相談に乗ることで職場のメンタルヘルスにつなげる。薬剤師が生活指導を実施し、不眠のアセスメントをしながら睡眠薬の処方提案を行う運用を昨年7月から始めた結果、約半数が生活指導のみで不眠が改善する効果が得られた。矢部勝茂薬局長(写真㊨)は「もっと気軽に受診してもらえるよう取り組みを広げていきたい」と意気込む。

厚生労働省の2021年度調査では、睡眠時間をうまく取れていない人の割合が約8割に上っており、同院でもここ数年のコロナ対応や感染により、うつ病発症のリスクが高まっていることが懸念されていた。

 

実際、激務に追われる看護師をはじめ、不眠に悩みつつも精神科や街中のメンタルクリニックを受診したり、睡眠薬を服用することには抵抗があるなど、なかなか不眠を解消できない職員が多かったという。

 

そこで、同院薬剤部は、睡眠薬に詳しい薬剤師が面談をして、不眠の評価を行い処方提案する仕組みを構築することで受診のハードルを下げようと、職員向けの薬剤師外来をスタートさせることにした。

 

同外来のスキームは、担当する精神科薬物療法認定薬剤師の奥村知香氏(写真㊧)に職員が直接電話し、面談を実施。初回は厚労省ガイドラインに示された「うまく寝るためのコツ」に沿って生活指導を行うほか、睡眠日誌を記入してもらう。

 

1週間後に再び面談し、世界保健機関(WHO)を中心に作られた不眠症の判定方法であるアテネ不眠尺度と睡眠効率を評価し、必要に応じて神経内科の医師に睡眠薬の処方提案をする流れになる。睡眠薬が必要な職員は初回で2週間分が処方され、再診時に同じ基準で評価する。

 

処方される薬は、オレキシン受容体拮抗薬のレンボレキサントとスボレキサントが中心。夜勤の影響で概日リズム障害のある看護師にはラメルテオン、さらに漢方薬の抑肝散が処方されるケースもある。

 

それでも不眠が解消されない場合は頓用で抗うつ剤のトラゾドンを試す人もいるという。

 

昨年7月から11月までに32件の指導実績があり、そのうち看護師が27件と最も多く、初回面談からアテネ不眠尺度、睡眠効率共に改善している結果が示された。特に約半数の職員では、初回の生活指導のみの実施で不眠の改善が見られており、奥村氏は「眠れるようになったという反応の人が多く、想定以上の効果を感じている」と手応えを語る。

 

長く不眠に悩む職員の中には、一人で悩んでいたり自己流の対応をしている人も多く、うまく寝るためのコツや就寝前のリラックス方法を丁寧に説明することだけでも、大きな効果があったようだ。

 

奥村氏は「精神的に落ち込んでいる人でも、睡眠がしっかり取れるようになると、不眠が解消されることも多い。睡眠環境が整ってくることで前向きになれることもある」と睡眠の効能を話す。

 

睡眠薬を2週間処方された職員も、再診時には不眠が改善しているケースが多いようで、「生活指導の効果に加え、薬と両方で高い効果が出ている」(奥村氏)と実感を語る。

 

ただ、睡眠薬で難しいのは中止するタイミングだ。不眠が改善されて、すぐに服用をやめると再燃が懸念されることから、奥村氏は「睡眠薬をやめるには、最低半年はかかるだろう」との見方を示す。

 

同外来で良好な結果が得られたことから、今後は院内への周知を図り、気軽に相談してもらえるよう環境整備に努めていきたい考えだ。

 

矢部氏は、「睡眠薬に関して一番詳しい薬剤師が相談に乗ったり、処方提案をすることの意義は大きいと思う。今は職場のメンタルヘルスが重視される時代であり、この成果を系列病院にも広げていきたい」と展望している。

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出典:薬事日報

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