医療

集中治療に専門薬剤師制度~地域でスペシャリスト養成 日本集中治療医学会

薬+読 編集部からのコメント

日本集中治療医学会が、2024年10月にも集中治療専門薬剤師制度を創設。ICU(集中治療室)での治療にICU医療チームの一員として薬剤師が関与し、集中治療の質向上に貢献するのが狙いです。受験資格は日本臨床救急医学会の救急認定薬剤師の資格を取得して3年以上、または救急専門薬剤師の資格を持つ薬剤師が対象となります。

日本集中治療医学会は、10月にも集中治療専門薬剤師制度を創設する。集中治療室(ICU)で行われる治療にICU医療チームの一員として薬剤師が関与し、集中治療の質向上に貢献するのが狙いだ。認定を受けた専門薬剤師が、各地域のICU専従薬剤師に対して教育する体制も整備したい考え。中長期的には、集中治療への薬剤師介入効果を検証する多施設共同臨床研究を通じてエビデンスの構築に取り組むほか、診療ガイドライン作成にも薬剤師が積極的に関与できる体制を目指す。

 

受験資格は、日本臨床救急医学会の救急認定薬剤師の資格を取得して3年以上、または救急専門薬剤師の資格を持つ薬剤師が対象。臨床救急医学会の救急認定薬剤師は昨年4月時点で291人に上る。

 

今月、札幌市で開催される集中治療医学会学術大会後に本格的に始動し、早ければ5月にも専門薬剤師の新規申請受付を開始し、6~8月に書類審査、10月以降をメドに試験を実施する計画だ。

 

ICUで行われる治療をめぐっては薬剤師の専門性に対する期待が高い。ICUに運ばれてくる患者の病態は複雑で、使用される薬剤の種類も幅広い。患者の病状の変化や治療に応じて、薬の効果や副作用、投与量、投与方法などを適切に評価し、緻密な投与計画を設計することが必要になる。

 

同学会は2016年に集中治療における薬剤師のあり方検討委員会(現薬剤委員会)を発足。ICUにおける安全管理指針を作成するなど、薬剤師が参画できる体制に取り組んできた。

 

集中治療医を中心に、近年では看護師、臨床工学技士、理学療法士の認定・認証制度が立ち上がっている。ICU医療チームとして活躍している薬剤師についても、認定制度を求める機運が学会内で高まったことから、制度を創設することになった。

 

同学会集中治療専門薬剤師制度委員会の入江利行氏(小倉記念病院薬剤部)は、「集中治療医学会に入会している薬剤師は160人まで増えたものの、臨床救急医学会には600人以上の薬剤師が入会しているため、まだ少ない」との認識を示す。

 

その上で、「現場では救急外来よりも集中治療室で業務を行っている薬剤師が多いとの話もある。ICUに関わって働きたいと思える薬剤師を増やすことが目標」と話す。

 

専門薬剤師に期待されるのは、各地域で集中治療のスペシャリストを育てていく人材教育への貢献だ。各医療機関のICUで業務をする薬剤師の教育体制にバラツキがある中、聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の前田幹広氏は、「施設単位にとどまらず、各都道府県単位で専門薬剤師が人材育成に関わってもらうと、地域の集中治療の水準が上がっていく」と話す。

 

集中治療への薬剤師介入効果を検証する臨床研究も推進していく。海外では、ICU多職種チームに薬剤師が関与することで患者の死亡率が低下するなどのエビデンスが創出されている。専門薬剤師の裾野を広げることで、単施設に限定した臨床研究から多施設が参加した臨床研究に広げ、日本発エビデンスの発信を目指す。集中治療に関連した診療ガイドラインの作成にも薬剤師がより関与できるようにする。

 

入江氏は、集中治療専門薬剤師を増やす上で「病院薬剤師の不足は課題。一般病棟に薬剤師を配置できなければ、ICUへの配置は難しい」と述べ、病院薬剤師の確保が重要との認識を示す。

 

その上で「全国どの施設のICUに行っても薬剤師が何らかの形で関わっているようにしたい。1人でも多くの薬剤師に集中治療専門薬剤師制度を知ってもらい、興味を感じればぜひ受験していただきたい」と呼びかけている。

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出典:薬事日報

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