薬剤師会

「推奨薬リスト」運用開始へ~睡眠薬の適正使用目指す 仙台市薬剤師会

薬+読 編集部からのコメント

医薬品の適正使用に向けた「推奨薬リスト」の運用が、宮城県仙台市内で開始されます。仙台市薬剤師会が仙台市医師会、仙台歯科医師会と協力してスタートするもので、運用開始後には適正使用の成果をアウトカムとして検証したい考えです。

仙台市薬剤師会は、仙台市医師会、仙台歯科医師会と協力し、医薬品の適正使用に向けた「推奨薬リスト」の運用を市内で開始する。医師会とは入眠困難の患者を対象に、睡眠薬の推奨薬リストを年齢別で運用。転倒リスクが指摘されるベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤の使用を減らし、適切な薬剤の処方につなげる。歯科医師会とは抗菌薬と鎮痛薬に関する推奨薬リストに合意し、9月からの運用開始を目指す。人口100万人規模の政令指定都市で、医師・歯科医師と協働して日常診療に役立つ推奨薬リストをまとめたケースは珍しい。運用開始後には適正使用の成果をアウトカムとして検証したい考えだ。

宮城県では、既に後発品の使用割合が8割を超えており、その中核市である仙台市は人口110万人、診療所・クリニック987施設、歯科医院610施設を抱える大都市である。こうした中、仙台市薬は、2021年4月から学術委員会にワーキンググループを設置。医薬品の適正使用と医療安全に役立てることを基本方針に、推奨薬リストの検討を進めてきた。

 

作成に当たっては、医師と歯科医師に有用な推奨薬リストとすることを最重視した。ワーキンググループではまず、地域包括ケアシステムの観点から高齢者の薬物治療に課題があり、医師が処方時に役立つ推奨薬として睡眠薬を選定した。

 

実際、仙台市薬が会員薬局のレセプトから市内の開業医の処方動向を調査し、国のナショナルデータベースとも照合したところ、転倒リスクの高いBZ系薬剤が多く使われていることが判明した。その中で、開業医が睡眠薬を処方するケースとして、「眠れない」と訴える入眠困難の患者への対応に焦点を当てた推奨薬リストを作成することに決めた。

 

仙台市薬の高橋将喜副会長(写真右上)は「転倒リスクのあるBZ系薬剤がこんなに使われているのかと驚いた」と実感を語る。

 

睡眠薬の推奨薬リストは精神科専門医の助言も踏まえ、65歳以上の高齢者患者と65歳未満の成人患者に適用するものをそれぞれ作成。特に転倒・転落防止を考慮し、65歳以上ではレンボレキサント、エスゾピクロン、ラメルテオンを推奨薬とした。65歳未満では、これら3剤に加え、オプションとしてスボレキサント、ゾルピデムを加えた。高橋氏は「推奨薬を年齢で分けて考えているところがポイント」と話す。

 

レンボレキサントとスボレキサントは先発品のみとなるが、仙台市薬でアドバイザーを務める東北医科薬科大学名誉教授の渡邊善照氏(写真左下)は「医師も患者さんに適切な薬を使いたいと考えているので、必要であれば先発品もきちんと推奨薬リストに置くべき」と話す。

 

既に医師会とは推奨薬リストの最終案に合意している。現在、診療中にすぐ参照できるよう医師会が開業医向けのパンフレットを考案中であり、年内には睡眠薬の推奨薬リストの運用を開始する予定だ。渡邊氏は「医師会が会員に推奨薬リストを周知するためのツールを作成してくれるのは大きな意義があると思う」と強調する。

 

一方、歯科医師会とは、第一段階として抜歯や手術後の処置で使う抗菌薬、鎮痛薬の推奨薬リストを運用する。市内の処方状況の調査に基づき、抗菌薬は成人と小児に分け、成人では軽度感染症の場合はアモキシシリン、アジスロマイシンを推奨。重度感染症ではセフカペンを推奨した。

 

さらに、最近の医薬品供給不足を踏まえ、セフェム系抗菌薬が出荷調整などで使用できない時の代替品も盛り込んだ。

 

鎮痛薬は、成人では痛みに応じてアセトアミノフェン、セレコキシブ、ロキソプロフェン、ジクロフェナクを推奨している。

 

渡邊氏は、「地域で推奨薬リストを作成する場合、薬剤師の思いだけでは動かない。誰が使うのかという視点を持ち、医師のニーズについて意見交換しながら作成しないと難しい」との考えを示す。

 

今後について、仙台市薬理事で仙台オープン病院薬剤部長の栃窪克行氏(写真中央上)は「次の対象薬剤も同じような検討が必要になるが、今回の経験が生きると思う」と話している。

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出典:薬事日報

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