医療

メタバース薬局で実践教育~一般用医薬品の陳列体験 名城大学薬学部

薬+読 編集部からのコメント

名城大学薬学部は、2024年度からインターネット上の仮想空間にお薬相談カウンターや一般薬の陳列棚、カンファレンスルームなどを備えた「メタバース薬局」を開設し、4年生に一般用医薬品の陳列を体験してもらうなど実践的な教育への活用を開始しました。

名城大学薬学部は今年度から、インターネット上の仮想空間に「メタバース薬局」を開設し、4年生に一般用医薬品の陳列を体験してもらうなど実践的な教育への活用を開始した。実務実習でこうした経験を積む機会は十分ではないとして、学内で臨場感のある教育を行えるように工夫した。今年度後期に、メタバース薬局での一般薬の選択や陳列、POP作製を経験した4年生の約8割が「今後もメタバースを利用した授業に参加したい」と回答(中間解析値)するなど学生の反応も良好で、活用法次第で高い教育効果が得られそうだ。

メタバース薬局は、仮想空間内に、お薬相談カウンターや一般薬の陳列棚、カンファレンスルームなどを備える。教員や学生は自身の分身であるアバターを操作して薬局内を移動し、参加者同士で音声の会話も行える。今年度後期に牛田誠氏(臨床薬学教育・研究推進センター実践薬学II准教授)が担当した必修講義「セルフメディケーション」の課題の一環でメタバース薬局を活用した。

 

牛田氏は、講義で学生に対し、総合感冒薬や胃腸薬等の成分や作用、副作用を解説し、消費者に合った適切な医薬品選択やトリアージを行えるように要点を伝えた。講義で得た知識の定着や実践を目的に課題を提示し、一般薬に関するレポート提出とメタバース薬局での課題のどちらかに取り組んでもらった。

 

メタバース薬局での課題は、総合感冒薬や胃腸薬等の指定領域の一般薬の中から棚に陳列する最大24製品を選択した上で、製品の特徴を消費者に分かりやすく示したPOPを作製するもの。学生は数人のグループを組み、自由な時間に薬局内等で集まって話し合い課題に挑戦した。

 

グループによって、製品の数を絞って陳列したり、同じ製薬企業の製品を並べたりするなど一般薬の選択は様々で、POPにも個性や違いがあった。

 

牛田氏は、メタバース薬局内で各グループの発表を見て回り、消費者の多様な要望に応じたタイプの異なる一般薬を陳列しているか、POPは分かりやすい表現になっているかなどを評価した。

 

今回、約7割の学生がメタバース薬局の課題を選び、既存のレポート提出を選択した割合は小さかった。「今後、メタバースを利用した授業等があったら参加してみたいか」と聞いたところ、中間解析では「とてもそう思う」30.8%、「ややそう思う」45.1%と前向きな意見が約8割を占めた。

 

学生からは「実際に自分たちで医薬品を比較しながらそれぞれの特徴を知ることができて良かった」「メタバースの操作は最初難しかったが、慣れてきたら作るのは楽しかった」などの声が上がった。

 

メタバース薬局は、NTTグループが提供する仮想空間プラットフォーム「DOOR」で制作した。基本的に無料で利用できるが、通信データ量を軽減し操作性を高めるため、薬局制作は有料で業者に依頼した。

 

牛田氏は「実務実習で一般薬の販売に学生が関わる機会は十分ではない」と指摘。「一般薬に興味を持ってもらうことも含めて、今回の教育に取り組んだ」と語る。

 

今後はメタバース薬局を舞台にした販売演習を本格的に実施したい考え。今年度の4年生前期演習で、学生が患者役と薬剤師役に分かれた解熱鎮痛薬の販売演習を試行したところ、アバターの名前を伏せたことで匿名性が高まり、真剣に演習を実施できたという。

 

現在、いくつかの薬系大学でメタバース等の仮想空間や仮想現実技術を取り入れた教育が始まりつつあるものの、まだ活用は十分ではない。牛田氏は「教育現場も新しい技術に、どうついていくかがカギになる。仮想空間ならではの教育効果を出すのは、まだこれから」と話している。

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出典:薬事日報

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