医療

「薬剤師職能が縮小する」~原告の薬局2社代表、零売規制訴訟の意義主張

薬+読 編集部からのコメント

処方箋医薬品以外の医療用医薬品を販売する「零売」を、法的根拠なく通知のみで国が規制していることの違法性・違憲性を問う民事訴訟を提起した原告の薬局2社の代表が薬事日報紙の取材に応じ、「今回の医薬品医療機器等法改正で薬剤師の職能が縮小される懸念があり、薬剤師が結束して止めるべき」と訴訟の意義を語りました。

国が法的根拠なく通知のみで処方箋医薬品以外の医療用医薬品を販売する「零売」を規制していることの違法性・違憲性を問う民事訴訟を提起した原告の薬局2社の代表は、本紙の取材に応じ、「今回の医薬品医療機器等法改正で薬剤師の職能が縮小される懸念があり、薬剤師が結束して止めるべき」と訴訟の意義を強調した。処方箋医薬品とOTC医薬品の間に存在する零売薬局の価値を主張し、法改正が零売薬局の営業を追い込む内容となった場合は追加訴訟を検討する考えを示した。

今春にも初公判が開かれる見通しの今回の訴訟では、零売薬局を経営するグランドヘルス、まゆみ薬局と過去経営していた長澤薬品の計3社が原告となり、国を被告とした地位確認請求と国家賠償請求を17日に提起している。

 

原告代表を務める長澤薬品代表取締役の長澤育弘氏(写真左)は、改正案について「薬局の零売は認めるが、零売を専門的に行う薬局を狙い撃ちしたものになるのではないか」と予想し、「通知と法律では影響力が異なる。薬剤師が販売できる医薬品約1万6000種類が今回の改正で半分となり、薬剤師の職能が縮小する」と懸念を示す。

 

全国の零売薬局に訴訟提起への協力を相談したものの、行政訴訟における原告側の勝率の低さなどもあり、原告は今回の3社のみとなった。「零売薬局だけでなく、薬剤師全体が法改正への関心が薄いと感じる。薬剤師業務は調剤報酬だけでなく、薬機法と薬剤師法で形成されており、守るべき領土」と危惧する。

 

訴訟の見通しにも触れ、「弁護士は勝率を1~2割程度と予測し、何らかの違法の部分があるとの判決が出るのではないかと見ているが、担当裁判官の判断によるので見通しは難しい」とした。

 

通知を根拠に零売薬局の多くは大手医薬品卸や二次卸との取引が制限され、保健所からの指導も頻繁に入るため、困難な経営に陥る。一方で、零売薬局は処方箋医薬品とOTC医薬品の間にあるため、零売がその価格差を埋め、使用方法や副作用等にもより注意を払う薬剤師の職能を発揮する存在とも主張する。

 

グランドヘルス代表取締役の箱石智史氏(写真右)は、「処方箋がないだけで、患者に直接薬剤師が説明しやすいことに零売薬局の価値がある。副作用に関する指導など安全性により注意を払った指導も行い、生活面からアプローチできるのも強み」と強調。「法改正により困る患者は少なくない。零売薬局に興味があり、能力を生かしたいと考える薬剤師の職能も奪う」と主張する。

 

訴訟期間中の法改正も予想されるが、長澤氏は「現役の零売薬局が営業できなくなる改正内容であれば職業選択の自由に反し、立法事由がないので追加訴訟を考えたい」と述べ、クラウドファンディングで費用を賄う考えを示す。

 

その上で、「実際に協力してくれるのは1000人から1万人に1人いるかどうかだが、若手薬剤師に明るい未来を見せる意味でも、少しでも抵抗する人がいることを示したい」と覚悟を語った。

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出典:株式会社薬事日報社 

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