CKDシートで疑義照会~薬局が腎機能低下を把握 釧路薬剤師会

釧路薬剤師会は薬剤師がCKD(慢性腎臓病)患者のお薬手帳に「CKDシール」を貼付して患者の腎機能低下を把握し、疑義照会から処方変更に至った事例が約4年間で計294件に上る調査結果を公表した。シールが薬剤師業務の適正化と適正な薬物療法に寄与しているとして、オンライン健診情報による腎機能確認が停滞する現状も踏まえ、シールの貼付と活用を続ける必要性を強調した。
18日に札幌市内で開かれた北海道薬学大会で同薬剤師会の大屋太郎氏(写真)が発表したもの。
高齢化が進む釧路地域では、疾患別の死亡割合として腎不全が肺癌や食道癌等を上回っていた。2016年度のレセプト1件当たり医療費でも、入院・外来共に腎不全が首位を占める状況となっていた。
地域一体でCKDの発症・重症化予防に取り組むため、行政と薬剤師会、医師会、歯科医師会、栄養士会など多職種による「くしろCKDネットワーク」が18年に設置された。取り組みの一つとして薬剤師会が中心となり、腎機能が「中等度~高度低下」以上に該当する患者から同意を得た上で、お薬手帳に貼付して多職種での情報共有を目的としたCKDシールを作成。取り組み前までに、薬剤師を対象に腎機能評価や症例に関する勉強会を複数回実施した。
貼付したシール枚数は18年9月~22年6月までに計3560枚となり、このうち腎機能に関わる疑義照会件数は746件、疑義照会でシールにより腎機能低下を把握したのは373件だった。373件のうち、処方変更に至ったのは294件で、大屋氏は「シールが貼付されていなければ見過ごされていた可能性があった事例だ。少なくとも、シールは薬剤師業務の適正化と患者の適正な薬物療法に寄与していることが示された」と強調した。
処方変更となった件数を薬効別に見ると、抗菌剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗ヒスタミンの順、診療科別では内科、皮膚科、整形外科の順に多かった。
シール貼付の取り組みに対する医師側の反応も良好で、大屋氏は「特に腎機能低下の進行に関わる可能性があるNSAIDsの処方が減少したのが肌感覚としてある。医師主導で始まったこともあり、好意的に評価されている」とした。
オンライン健診情報で腎機能を確認できる一方、3月に会員薬局を対象に行ったアンケート結果では、「健診情報を開示している患者割合が3割以下」が36.8%、「開示していない」が26.3%に上った。腎機能の確認を実施していない割合も44.7%に上る実態を踏まえ、大屋氏は「現時点では釧路地域では医療DXによる確認が難しいケースが多い。医療DXへの対応や患者への啓発は行いつつ、しばらくはシールの貼付と活用が必要」との考えを示した。
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
薬剤師がCKD(慢性腎臓病)患者のお薬手帳に「CKDシール」を貼付して患者の腎機能低下を把握し、疑義照会から処方変更に至った事例が約4年間で計294件に上るという調査結果を、釧路薬剤師会が公表しました。