「人生会議」に薬剤師参画を~全国的な普及啓発が急務 厚生労働省
人生の最終段階において本人の意思に沿った医療・ケアが行われるようにするため、医療・介護従事者からなる多職種が話し合い、本人の意思決定を支援する「人生会議」(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)の実践に向け、厚生労働省は薬剤師を含む医療・介護従事者を対象にACPの普及啓発に乗り出している。健康な状態から患者とその家族に関わる薬剤師にACPの理解促進を図ることで、「その人らしく生活すること」を支えるチーム医療の一員になってもらうのが狙い。日本薬剤師会もACPを理解した薬剤師の育成を図るため、地域でACPに関する研修を行う計画だ。
ACPは、人生の最終段階の医療・ケアについて本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス。病院における延命治療への対応をイメージしがちだが、外来や在宅医療・介護の現場で、終末期であるかどうかに関わらず、人生のどのステージでも始めることができる。地域住民とは健康な時期から接点がある薬局薬剤師の参画が期待されている。
厚労省は2018年3月に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を改訂し、医療・ケアチームや国民全体に対する普及啓発を進めている。医療・介護従事者からなる多職種にはACPが徐々に浸透してきている状況にある。
22年度に実施した調査では、ACPを「よく知っている」と回答した国民の割合は5.9%と低かった一方、医師や看護師、介護支援専門員では5割弱と17年度調査から大きく向上していたことが判明した。医師・看護師、介護支援専門員に対しACPの実際を聞いたところ、「自身が担当している利用者と十分に話を行っている」との回答は6割程度に上った。
一方、薬剤師に対するACPの意識調査は未実施で、興味や関心の程度が把握できていない。地域包括ケアにおけるチーム医療でACPに対する考え方が浸透しつつある中、薬剤師の理解促進からいかに実践につなげていくかが今後の課題となっている。
その一環として、厚労省は、薬局薬剤師が活用できるACPの普及啓発資材として漫画資材を作成。ポスター、リーフレット、チラシ、ウェブサイトコンテンツなど様々な方法で活用が可能としている。人生会議についてあまり聞いたことがない人たちを対象に、情報に出会うきっかけを提供するのが目的だ。薬局が実施するイベントに合わせ、参加者に配布するチラシとしても活用を促している。
ACPに関する薬剤師向け研修については、厚労省の後援を受け、日本薬剤師研修センターが昨年度から実施している。医政局地域医療計画課で24年度末までACPの政策に携わってきた池田大輔氏は、「薬剤師がチーム医療の中の一員としてACPの理解を深め、チーム医療のメンバーに患者さんの意向や希望などチームに必要な情報を選択して共有していくことが重要。普段の取り組みとACPの関係を体系的に知るきっかけとして研修を活用してほしい」と話している。
日薬も、かかりつけ薬剤師・薬局の基盤整備の先にある次のステージとして全国的にACPを理解した薬剤師の養成に取り組む。荻野構一副会長は、第8次医療計画において在宅医療の四つのステージで指標例が入り、全てのステージで薬剤師の関与が求められるようになったことで「ACPの意識を持った薬剤師の養成が必要」とし、周知啓発への体制整備を検討する。
村杉紀明常務理事も「健康な状態から地域住民に関わることで、地域住民の思いや暮らしの状況に関する情報を他職種と共有していく“情報のつなぎ役”が求められる」と強調。各地域でACPに関する研修を開催していく考えだ。
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
厚労省が薬剤師を含む医療・介護従事者を対象に「人生会議」(ACP=アドバンス・ケア・プランニング)の普及啓発に乗り出しています。日本薬剤師会もACPを理解した薬剤師の育成を図るため、地域でACPに関する研修を行う計画です。