小児癌の疼痛治療介入に課題~オピオイド薬使用へ抵抗感 日本緩和医療薬学会年会
癌疼痛が見られる小児癌患者とその家族に対する薬剤師介入において、鎮痛薬開始に関する説明時に介入が難しいと感じる薬剤師が8割を超える実態が、神戸大学病院薬剤部の森尾佳代子氏の調査で明らかになった。オピオイド鎮痛薬の使用に対して家族の抵抗があるなどの背景が考えられ、森尾氏は「薬剤師が具体的理由を聞き、鎮痛薬使用の利点を説明することが重要」と強調した。
6月21日に千葉市内で開催された日本緩和医療薬学会年会で、学会会員219人を対象としたアンケート調査結果を報告した。
患者に癌疼痛が見られる場合に疼痛評価を実施していた薬剤師は91.2%に上ったが、「疼痛評価を適切に実施できず困った」との回答も88.5%を占めた。その理由として「年齢や理解力の影響で痛みの表現が分かりにくい」「患者との関係性ができておらずコミュニケーションが難しい」「患者の状態が悪い」などが挙がった。
鎮痛薬開始時に患者・家族に説明を行っている薬剤師は86.0%の割合となったが、「患者等がオピオイド鎮痛薬の導入に抵抗がある」「患者等の理解力が不良」「患者の病因により理解不良」といった理由により、説明の際に介入が難しいと感じた薬剤師も83.7%に上った。
これらの結果を踏まえ、森尾氏は「オピオイド鎮痛薬の使用に対する懸念は小児患者では家族の意思決定に影響される可能性があり、長期オピオイド使用の副作用により多くの懸念を持っている可能性がある」と考察し、使用に抵抗がある場合は薬剤師が具体的理由を聞き、鎮痛薬使用の利点を説明することが重要とした。
また、医師や看護師などの他職種に任せているなど、患者の精神的苦痛や社会的苦痛への介入を行っていない薬剤師が45.6%であったことも踏まえ、森尾氏は「患者の年齢や理解力に応じたコミュニケーション手法や適切な疼痛評価方法、疼痛関連問題に対処するための薬剤師向けの包括的な教育プログラムを開発することが必要」との考えも示した。
一方、福岡市立こども病院薬剤部の土屋貴氏は、終末期患者の退院前カンファレンスにおける薬薬連携に関するアンケート調査結果を報告した。調査は昨年2月から約3カ月間、同学会所属の病院薬剤師252人と薬局薬剤師149人を対象に実施したもの。
退院後も在宅支援が必要な患者について薬薬連携で情報共有し、円滑な薬物療法のために退院前カンファレンスが重要とされるが、カンファレンスに関するマニュアルが未整備の病院は92%、薬局は91%に上り、カンファレンスの事前準備に要した時間は病院薬剤師では「30~60分」が6割だった。
薬局薬剤師がカンファレンスに「全て同席していた」「ほとんど同席していた」病院は計25%で、病院薬剤師が参加していた薬局は計21%にとどまった。
土屋氏は「薬局薬剤師が必要とする情報マニュアルやチェックリストを病院薬剤師が作成することで事前準備の時間を短縮できる可能性がある」と指摘。
薬局薬剤師がカンファレンスの開催情報を主に介護支援専門員や地域連携室から入手している現状を踏まえ、「病院薬剤師が患者のかかりつけ薬局を早期に把握し、薬局薬剤師に早期に依頼するなどの支援も必要であり、薬薬連携の強化につながる」と述べた。
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出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
癌疼痛が見られる小児癌患者とその家族に対する薬剤師介入において、鎮痛薬開始に関する説明時に介入が難しいと感じる薬剤師が8割を超える実態が、日本緩和医療薬学会の会員を対象としたアンケート調査で明らかになりました。