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米処方薬価格引き下げ要請~トランプ大統領が製薬17社に 米ホワイトハウス

薬+読 編集部からのコメント

トランプ米大統領が、欧米の製薬企業17社に米国での処方薬価格を他の先進国で提供される最低価格(最恵国待遇価格)に合わせるよう要請する書簡を送付しました。ホワイトハウスの発表資料には、貿易政策を利用して他国の価格引き上げを支援するとも記されています。

 ラグ拡大危惧する声も

米ホワイトハウスは7月31日(現地時間)、欧米の製薬企業17社に米国での処方薬価格を他の先進国で提供される最低価格(最恵国待遇価格)に合わせるよう要請する書簡を、トランプ大統領が送付したと発表した。発表資料には、貿易政策を利用して他国の価格引き上げを支援するとも記されている。対象になっていない日本の製薬業界は書簡の精査に入った。企業関係者からは、価格引き下げを受けないように米国を最優先にして上市する動きがさらに強まり、ドラッグラグが進むことを危惧する声が出ている。

 

発表資料では、米国人がブランド薬に支払う価格はOECD諸国が支払う価格の3倍以上とのデータを示し、対応の必要性を強調している。

 

対象企業は、アッヴィ、アムジェン、アストラゼネカ、ベーリンガーインゲルハイム、ブリストル・マイヤーズスクイブ、イーライリリー、EMDセローノ(独メルク傘下)、ジェネンテック、ギリアド、グラクソ・スミスクライン、ジョンソン&ジョンソン、メルク、ノバルティス、ノボノルディスク、ファイザー、リジェネロン、サノフィ――の17社。

 

対応を拒否する場合「連邦政府はあらゆる手段を講じる」としている。

 

発表によると、各社に伝えられた内容は▽メディケイド患者一人ひとりに最恵国価格を提供するよう要請する▽米国で提示されている価格よりも有利な価格で他の先進国に新薬を提供しないことを規定することを求める▽先進国で入手可能な最高価格以下の価格で、中間業者を介さずに患者に直接医薬品を販売する手段をメーカーに提供する▽海外での収益増加が米国の患者と納税者に対する価格引き下げに直接再投資されることを条件として、貿易政策を利用してメーカーによる国際的な価格引き上げを支援する――というもの。

 

最恵国待遇価格設定について、米国研究製薬工業協会(PhRMA)は一貫して反対している。投資資金が減り、研究開発を阻害し、患者の利益にならないと主張している。

 

日本製薬工業協会は1日、今回の書簡について広報担当者は本紙に「国際委員会で内容を精査している。日本から何らかの発信をする必要があるか、欧米の団体と連携しながら対応を決めていく」と話した。

 

協和キリンの宮本昌志会長兼CEOは、1日に本社で開いた決算説明会で、最恵国待遇価格設定の書簡に関する質問に、新薬上市を米国最優先にする企業行動が加速し、患者アクセスが阻害されることに懸念を示した。

 

宮本氏は、一般論として「一番恐れるのは、米国の価格で維持できるのなら、まず米国だけで発売して、他国は相当後回しにする戦略が出てくることを危惧している」と話した。

 

最恵国待遇では、先進国の価格を参照して最も安い国の価格に合わせることになる。そのため、まず米国だけで発売すれば、米国価格で他国にも販売できるようになる。仮に日本の価格が米国の半値ならば、他国は後回しにするということが起きかねない。

 

宮本氏は、あくまで可能性として話したものだが、「将来、そのようなことが起こるのであれば良くない」と述べた。また、「製薬企業のトップとして、(世界最大市場の)米国があのように変わると、今までと同じようなことができないのかもしれないと頭に置きながら中長期的戦略を考えていくことになると思う」と話した。

 

今回の書簡については、「どういう意味、効力を持っているのか分からない。そこをしっかり見ていかなければならない」と慎重な見方を示した。

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出典:株式会社薬事日報社 

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