医療

病院薬剤師の方向性示す~35年へミッション策定 日本病院薬剤師会

薬+読 編集部からのコメント

日本病院薬剤師会が、創立70周年を機に2035年までのミッション・ビジョンを制定。医療DX社会が到来する中、薬剤師が全ての医療現場でプロフェッショナルとして活躍する社会を実現し、科学技術との協働を通じて「全ての人に安全で最適な薬物療法を届けることで医療と健康社会に貢献する」と提唱しました。

日本病院薬剤師会は、創立70周年を機に80周年を迎える2035年までのミッション・ビジョンを制定した。医療DX社会が到来する中、薬剤師が全ての医療現場でプロフェッショナルとして活躍する社会を実現し、科学技術との協働を通じて「全ての人に安全で最適な薬物療法を届けることで医療と健康社会に貢献する」と提唱した。「資質の向上」「薬剤師の充足」「職能の拡大」を柱に活動を進め、病棟から外来、在宅へと活躍の幅を広げることを目指す。卒後臨床研修の創設や専門薬剤師制度改革、補助者を活用したタスクシフト/シェアの推進、病棟薬剤業務実施加算の算定施設割合50%以上の実現を掲げた。

武田泰生会長(写真)は、18日に都内で開催された地方連絡協議会と70周年記念式典で、「70年の成果をしっかりと受け止め、医療DX社会の医療提供体制のあり方を見据え、病院や診療所等のあるべき姿について議論してきた。ICTやデータサイエンスの活用を通じて医療の質と安全性を高めるだけではなく、患者一人ひとりのウェルビーイングを中心に据えた医療・介護の実現を目指すことにした」と述べ、今後10年の病院薬剤師の進むべき方向についてミッション、ビジョン、具体的な活動を描いた。

 

ミッションでは、「薬剤師の専門性・倫理性・人間性を融合し、科学技術と協働しながら全ての人に安全で最適な薬物療法を届けることで持続可能な医療と健康社会の実現に貢献する」と宣言した。そのためのビジョンとして「薬剤師が高い資質と倫理観を備え、全ての医療現場で信頼されるプロフェッショナルとして活躍する社会を実現する」と定めた。

 

医療の質向上とチーム医療への貢献に向けたバリューとして、▽資質の向上▽薬剤師の充足▽職能の拡大――の三つを活動の柱と位置づけ、職能の拡大に向けては外来・在宅医療、介護施設にも参画し、病院薬剤師が入院から在宅まで一元的・継続的な薬物治療管理をシームレスに実践できるようにするとした。

 

武田氏は「われわれはこれまで、主に入院医療を担当してきたが、昨年の診療報酬改定で新設されたがん薬物療法体制充実加算を皮切りに、薬剤師外来、外来診療についても薬物治療管理を進めていくことが期待される」との認識を示した。

 

在宅については「再入院をできるだけ減らしていく。入院中に関わった薬剤師が退院直後の一定期間、在宅に赴いて在宅における薬物治療管理をかかりつけ薬剤師と一緒に行うのが効率的で効果的な方法になる」との方向性を示した。

 

病棟業務では、病棟薬剤業務実施加算1の届出施設が26.2%にとどまることが課題となっている。400床以上の大病院は約7割の届出率と高い一方、全体の7割を占める200床未満の施設では届出率が19%と中小病院が低調であり、病棟における週20時間の業務時間要件緩和を実現させることなどで、算定施設割合50%以上を目指す。

 

さらに、医師から薬剤師へのタスクシフト/シェアだけではなく、薬剤師の業務整理や補助者の活用により、薬剤師が担っている業務のタスクシフト/シェアも推進すると共に、医療DXを通じて調剤や薬品管理などの業務を効率化する。

 

資質の向上では創薬モダリティの高度化・多様化に対応するため、生涯研修のさらなる充実を図る。卒後臨床研修の創設や専門薬剤師制度改革、職能向上のためのキャリア形成研修の創設により、総合的な臨床能力を持った薬剤師の育成を図る。

 

薬剤師の充足では、地方部や回復期・慢性期病院は薬剤師確保に苦戦している現状を踏まえ、地域医療介護総合確保基金を生かして都道府県病院薬剤師会と連携し、薬剤師確保・偏在解消への取り組み強化で新たな方策を策定する。

🔽 病院薬剤師について解説した記事はこちら

  • 薬剤師のための休日転職相談会
  • 薬剤師の転職・求人・募集はマイナビ薬剤師/5年連続満足度NO.1

出典:株式会社薬事日報社 

ページトップへ