薬剤師会

県内薬学部に「地域枠」要望~能登の薬剤師不足が深刻

薬+読 編集部からのコメント

能登地区で深刻な薬剤師不足となっている現状を受け、石川県が地域偏在の解消に向けた対応策を検討しています。石川県の人口10万人当たりの薬剤師数は全国6位となっている一方、能登北部・中部医療圏では全国平均を下回るとされ、特に病院薬剤師不足は深刻です。6月1日の県議会では、地域医療介護総合確保基金を用いた奨学金返済免除制度の活用などについての要望が出され、馳浩知事も対応策を検討していく考えを明らかにしました。

石川県は、能登地区で深刻な薬剤師不足となっている現状を受け、地域偏在の解消に向けた対応策を検討する。1日に行われた県議会定例会の一般質問で、紐野義昭議員が地域医療介護総合確保基金を用いた奨学金返済免除制度の活用や、地域枠入学生枠を県内の金沢大学薬学類や北陸大学薬学部に設定するよう提案。これに対し、馳浩知事は「薬剤師を確保し、地域偏在を解消することは重要なことで、どのようなことができるのか薬剤師会や医療機関、大学などの関係機関等の意向を確認しながらしっかり取り組んでいきたい」と応じた。

 

石川県の薬剤師確保は困難な状況が続いている。特に病院薬剤師の確保が深刻で、2018年に町立富来病院で薬剤師が不在となり、医薬品供給が危機に瀕した。能登地区でも薬剤師が不足しており、金沢大学病院の薬剤師が富来病院や宇出津病院に出向し、県立中央病院に人事異動するなどして医療を支えているほか、県内の多くの病院長や薬剤部長が薬剤師不足を訴えている。学校薬剤師の確保も困難な状況となっている。

 

紐野氏は、「医師不足は全国的な問題だが、薬剤師不足も深刻な状況であり、特に公立病院では薬剤師が確保できず大変苦労していると聞いている」と窮状を訴えた。能登地区での病院薬剤師不足の背景として、「6年制薬剤師の給与水準とキャリアパスの問題がある」との問題点を挙げた。

 

国が実施した調査結果では、薬学生の約3人に1人が奨学金を借り入れている。そのうち、5.7人に1人は1000万円以上の借り入れを抱えていることが明らかになっており、「ドラッグストアより給与水準が低く、仕事の負担が重い病院薬剤師への就職を避ける傾向が強くなる」と指摘した。

 

将来のキャリアアップに必要な専門薬剤師の取得には、大学病院等での研修が必要なため、「たとえ地域医療に貢献する意欲があっても、地域の病院に行くに行けない状況が生じ、薬剤師が集まらない現象が続いている」と述べた。

 

その上で、▽地域医療介護総合確保基金を用いた奨学金返済免除制度の活用▽地域連携薬剤師枠(仮称)を金沢大学病院や県立中央病院等の薬剤部に設置し、基幹病院と地域の病院・薬局が連携して医療を支える持続的な体制を構築する▽医学部と同じように地域枠入学生枠を金沢大学薬学類や北陸大学薬学部に設定し、学生の地域定着を促す――の3点を要望した。

 

これに対し、馳知事は「石川県の人口10万人当たりの薬剤師数は全国6位となっている一方、能登北部・中部医療圏では全国平均を下回り、地域偏在が見られている」と答弁。

 

能登の病院では修学資金制度を設けるなど薬剤師確保に取り組んでいるが、「必ずしも十分な成果につながっていないとの声を聞いている」と述べ、対応策を検討していく考えを明らかにした。

 

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出典:薬事日報

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