心房細動早期発見へ新事業~健サポ薬局30施設で開始
秋田県薬剤師会は1日から、30施設の健康サポート薬局に設置した医療機器によって、脳梗塞のリスクとなる心房細動を早期に発見し、受診勧奨を行う事業を始めた。秋田県は、脳血管疾患による死亡率はここ3年でも全国ワースト1位か2位という状況で、脳血管疾患の予防は長年の医療課題。健サポ薬局の薬剤師と医師が連携し、課題解決を目指す。
同事業は、オムロンヘルスケアとスマートヘルスケア協会が共同で推進する「心電図記録による受診勧奨モデル」への参加により実施されるもの。薬剤師会としては、秋田県薬が最初の参加となった。
薬局内に設置する機器は、オムロンヘルスケアが3月に新発売した国内初の「心電計付き上腕式血圧計」。機器は実施薬局が購入する。心電図記録を希望した人のうち、年齢や生活習慣、既往歴などからリスクチェックを行い、測定する。両手の親指と他の2本以上の指を機器のセンサー部分に軽く接触させ、30秒で測定(写真)。記録や解析結果から心房細動の可能性があると判断されれば、薬剤師が受診勧奨を行い、本人同意のもとでトレーシングレポートを作成する。
秋田県薬の担当常務理事の佐藤一実氏は、心電図測定が目的ではなく、疾患啓発がメインだと強調する。心房細動を知らない人が多いためで、心房細動を発症すると血栓ができやすくなり、脳梗塞のリスクになることを伝える。心房細動を早期に見つけ、医師に受診することで脳梗塞の予防につながり得ることを知ってもらう。その上で機器を見てもらい、希望した場合には測定するという流れだ。
主に30代以上を対象に、パンフレットを見てもらうなどし、反応を見ながら、声かけをするようなことを想定する。医師からは「隠れ心房細動」の発見に期待する声もあるという。
実施薬局の一つシオン薬局(秋田県大館市)の管理薬剤師である疋田大賀氏は、「地域の人の健康のための取り組み」とした上で「秋田は脳血管疾患が多い。そのリスクとなる心房細動を早く見つけ、予防につなげたい」と意気込む。
同薬局は、定期的に健康フェアを開催したり、体組成や体脂肪、血圧などを計測できる機器を常設するなど、地域住民の健康支援に力を入れており、同事業への参加も一連の活動の一環と位置づける。来局者へどう声かけを行うかは検討中だが、健康フェアの活用も一案に挙げる。「心房細動の可能性があると判断された場合のフォローは丁寧に行いたい」と話した。
県薬が参加した経緯は、協会側が脳血管疾患の死亡率の高さが長年の課題となっている秋田県に着目し、県薬に相談したのがきっかけ。脳血管疾患が多い地域性の中で健康サポート薬局の役割を模索していた県薬との意向が一致し、事業を始めることになった。県内に健サポ薬局は41あるが、協会が提供する心房細動、関連疾患の知識、モデルの運営方法などの講習を受けた30薬局が参加。高い参加率となり、関心の高さがうかがえる。
県薬は来年3月までの9カ月間、同事業に参加した来局者(既に専門医の診察を受けている人は除く)の既往歴、心臓関連の自覚症状の有無、測定結果、心房細動の可能性ありと判断された場合の対応などの実施結果をまとめ、今後に生かす方針だ。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
秋田県薬剤師会は、6月1日から健康サポート薬局30施設に設置した医療機器で、心房細動を早期発見し、受診勧奨を行う事業を始めました。心房細動は脳梗塞のリスク要因で、秋田県の脳血管疾患による過去3年の死亡率は全国ワースト1位か2位という状況。薬剤師と医師が連携し予防を目指しています。