DPP-4阻害薬、2番目の週1回投与薬‐11品目の新薬等を了承
薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は8月28日、週1回投与のDPP-4阻害薬としては2番目となるMSDの「マリゼブ錠12.5mg、同錠25mg」など10品目を審議し、了承した。今年2月20日の同部会で継続審議扱いとなったバイエル薬品の経口抗凝固剤「イグザレルト錠10mg、同錠15mg」の効能・効果に「深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症の治療と再発抑制」を追加することも了承された。
「イグザレルト」で効能追加
▽ムルプレタ錠3mg(塩野義製薬):新有効成分のルストロンボパグを含有し、「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」を効能・効果とする。
慢性肝疾患では、末梢血中の血小板数の減少が生じることがあるが、肝疾患の診断や合併症の治療などで観血的な検査や手術などが実施されることが多く、出血リスクが高まるため、血小板数を増やす必要がある。
同剤は、トロンボポエチン受容体に作用することで、造血幹細胞・巨核球系前駆細胞から血小板を産生する巨核球への増殖・分化を促進し、血小板数を増加させる。再審査期間は8年。海外での承認はない。
▽イグザレルト錠10mg、同錠15mg(バイエル薬品):有効成分のリバーロキサバンを含有し、「深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症の治療および再発抑制」の効能・効果を追加する。
静脈血栓塞栓症は、未治療で放置すると肺高血圧や血栓後症候群といった合併症を引き起こし、特に肺血栓塞栓症では致命的な転帰をとることもある疾患で、年間4万人程度が発症すると推測されている。
同剤は、血液凝固に関与する活性型血液凝固第X因子を選択的に阻害して血栓形成を抑制する経口薬で、2012年1月に「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制」で承認されている。
再審査期間は、残余期間の20年1月17日まで。海外では、100以上の国と地域で承認されている。
▽ベンテイビス吸入液10μg(バイエル薬品):新有効成分のイロプロストを含有し、肺動脈性肺高血圧症を効能・効果とする。
肺動脈性肺高血圧症は、肺血管の内腔が狭窄することで肺血圧が上昇し、心不全を呈する疾患で、初期には息切れや疲労感などが現れ、進行すると致命的になる。同剤は、プロスタグランジンI2(PGI2)誘導体で、PGI2と同様に血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を示すことで病態を改善する。
再審査期間は8年。海外では、70以上の国と地域で承認されている。厚労省の「未承認薬・適応外薬検討会議」での開発要請品目。
開発要請品目も登場へ
▽トラクリア小児用分散錠32mg(アクテリオンファーマシューティカルズジャパン):有効成分のボセンタン水和物を含有し、「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。
小児の肺動脈性肺高血圧症患者は300人程度とされるが、これまで小児の用法・用量が承認されている治療薬はなかった。同剤は、エンドセリン受容体拮抗薬。血管収縮作用を有するペプチドホルモンであるエンドセリンの受容体を阻害して、肺血管拡張作用などを示す。
希少疾病用医薬品だが、有効成分であるボセンタン水和物は05年4月に既に承認されており、医療現場で10年の使用経験があるため、同部会では小児用についても10年の使用成績調査は必要ないと判断。「6年を超え、10年を超えない範囲」とされている希少疾病用医薬品の再審査期間のうち、最も短い「6年1日」となった。
海外では、欧州、スイス、メキシコ等で承認されている。未承認薬・適応外薬検討会議の開発要請品目。
▽ラミクタール錠25mg、同錠100mg、同錠小児用2mg、同錠小児用5mg(グラクソ・スミスクライン):有効成分のラモトリギンを含有し、「てんかん患者の定型欠神発作に対する単剤療法」の効能・効果を追加する。
定型欠神発作は、5~15歳の小児期に始まり、周囲の状況が全く認識できなくなるような発作が10~30秒間続く。小児てんかん患者の約2.6%でみられるが、通常は成人期まで続くことはない。同剤は、神経細胞の過剰興奮を抑えることで抗てんかん作用を示す。再審査期間は4年。海外では、欧州などで承認されている。未承認薬・適応外薬検討会議開発要請品目。
▽イフェクサーSRカプセル37.5mg、同75mg(ファイザー):新有効成分のベンラファキシン塩酸塩を含有し、うつ病、うつ状態を効能・効果とする。
同剤は、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)で、デュロキセチン塩酸塩、ミルナシプラン塩酸塩に次いで国内3番手となる。再審査期間は8年。海外では、欧米など91の国と地域で承認されている。
▽コパキソン皮下注20mgシリンジ(武田薬品):新有効成分のグラチラマー酢酸塩を含有し、多発性硬化症の再発予防を効能・効果とする。
同剤は、抗原提示細胞の表面に存在する主要組織適合遺伝子複合体分子に結合し、抗原特異的なT細胞の活性化を阻害することなどにより、多発性硬化症に対する作用を示す。希少疾病用医薬品で、再審査期間は10年。海外では、59の国と地域で承認されている。未承認薬・適応外薬検討会議の開発要請品目。
2型糖尿病の配合剤も
▽ピートルチュアブル錠250mg、同500mg(キッセイ薬品):新有効成分のスクロオキシ水酸化鉄を含有し、「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」を効能・効果とする。
高リン血症は、動脈硬化の原因となる血管の石灰化のほか、骨の変形、骨痛、骨折を誘発する可能性があるが、同剤は、消化管内で食事由来のリン酸と鉄との結合作用によって難溶性の沈澱を形成することで、リンの吸収を抑制する作用を有する。再審査期間は8年。海外では、欧米など35カ国で承認されている。
▽ザガーロカプセル0.1mg、同0.5mg(グラクソ・スミスクライン):有効成分のデュタステリドを含有し、男性の男性型脱毛症を効能・効果とする。
同剤は、テストステロンをジヒドロテストステロンへ変換する5ARを阻害することで男性型脱毛症に対して効果を発揮する5AR阻害薬で、類薬にフィナステリドがある。再審査期間は4年。海外では、韓国で承認されている。
▽マリゼブ錠12.5mg、同錠25mg(MSD):新有効成分のオマリグリプチンを含有し、2型糖尿病を効能・効果とする。
9番目のDPP-4阻害薬で、週1回投与製剤としてはトレラグリプチンコハク酸塩に次いで2番目。再審査期間は8年。海外での承認はなく、欧米で開発中(第III相)の段階。
▽エクメット配合錠LD、同HD(ノバルティスファーマ):有効成分のビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩を含有し、2型糖尿病(ただし、ビルダグリプチンおよびメトホルミン塩酸塩の併用による治療が適切と判断される場合に限る)を効能・効果とする。
国内初のDPP-4阻害薬とビグアナイド系薬による配合剤で、配合比率は、DPP-4阻害薬ビルダグリプチンが「LD」「HD」とも50mg、ビグアナイド系のメトホルミンについては「LD」が250mg、「HD」が500mgとなる。再審査期間は4年。海外では、120の国と地域で承認されている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会DPP-4阻害薬としては2番目となる「マリゼブ錠」ほか10品目を審議、了承しました。2015年2月の同部会で継続審議扱いとなった経口抗凝固剤「イグザレルト錠」の効能・効果に「深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症の治療と再発抑制」を追加することも了承されています。