薬剤師会

GE薬業界を俯瞰し、現状と展望を聞く‐沢井製薬会長 澤井 弘行氏

薬+読 編集部からのコメント

ジェネリック医薬品企業経営に50年以上携わった、沢井製薬会長 澤井 弘行さんがGE薬の黎明期から現在までについて語りました。
現行の3価格制についても「営業要員がいなかったり、販売網を持たなかったりする企業と同じ薬価になることは、極めて不公平」との意見を述べ、GE薬メーカーの体力はもたない、と市場実勢価格主義を主張しました。

医療費適正化に向け、2020年9月までのジェネリック医薬品(GE薬)の使用割合80%達成が政府目標として掲げられ、その達成に向け様々な使用促進施策が講じられている。これまでの間、GE薬企業の経営に50年以上携わり、07年から3期6年間、日本ジェネリック製薬協会会長として最もGE薬が飛躍した変化の時代に、その啓発に奔走したのが沢井製薬の澤井弘行氏(現・会長)だ。業界の生き字引的な存在でもある澤井氏に、GE薬の黎明期から今日までの市場を俯瞰し、現状の課題やあるべき姿など私見を交えて語っていただいた。

 

1978年以降20年余、「塗炭の苦しみ」

 

――まずは、日本でのGE薬の黎明期から、今日までの流れを俯瞰しての見解について。

 

終戦以降から1965年頃までの日本の医薬品産業は、多くが海外企業からの導入品が主流で、日本発の新薬はほとんどなく、国内企業は活性ビタミンB1等が主力品という時代が続いていた。61年の国民皆保険制度導入、その後67年に日本で最初の薬価制度として「統一限定列記方式」が採用された。この時は、先発品もGE薬も同じ薬価。今のようなGE薬に対するインセンティブはなく、多くの医療機関が薬価差益で薬を購入し、医師が薬を出していた。

 

当時、GE薬は最初から半額以下で販売し薬価差益を提供でき、次の薬価改正では先発品と同じ成分は同じ薬価となるなど零細企業が多かったGE薬メーカーも急伸することができた。その後、約10年後の78年に「銘柄別収載方式」に変更し、市場実勢価格に基づいて薬価を決めることになり、ここからわれわれは苦戦を強いられるようになった。以後20年余り、塗炭の苦しみを味わうことになる。

 

94年にまず、初収載品は先発最低薬価の0.9掛となり、96年には0.8掛となるなど、歴史的に言えば78年以降は、国が新薬メーカーの育成に注力し、結果的にGE薬メーカーを抑制する施策となった。また、80年から90年の間には10年間でGE薬は3回しか追補収載がなく、また部分改正と称して4年連続、薬価乖離の大きいGE薬中心に薬価改定が行われた。そのため、日本のGE業界は世界から20~30年遅れをとることになり、00年までは売上200億円を超える企業はほとんど存在しなかった。

 

その後、02年にGE薬の使用促進施策が打ち出され、GE薬の処方・調剤時に薬価差以外で医師、薬剤師への経済的インセンティブが初めてついた。当時、薬価の下支えをしていたGEルールも廃止され、経営的にも極めて厳しい状況だったが、02年以降、厚生労働省はGE薬の使用促進の強化を進め、その流れに乗る形で、この15年間は右肩上がりの増収増益を達成することができ、売上高1000億円超規模の企業が出現するようになったというのがこれまでの流れである。

 

3価格帯制「極めて厳しい」

 

――現行のGE薬の薬価改定とその影響について。

 

14年度からの3価格帯制度では、GEの薬価は、市場実勢価格が先発薬価の「30%未満」「30%以上50%未満」「50%以上」の三つの価格帯に分けられ、各価格帯ごとに加重平均値され、それぞれ1価格帯として収載されている。14年度は大きな影響はなかったが、16年度以降はこの3価格帯制度によりの収益は激減している。現行のままでは、シミュレーションしても、各社ともに中長期の経営計画を立てられないような厳しい状況になっている。

 

特に、現行の3価格帯制度では、適正価格で販売している製品が、安価で販売する製品に引っ張られる格好で格が引き下げられる。例えば、ランクが一つ下がれば余分に約15%下がる。バイイング・パワーの増大と競争の激化で2ランク下がるのは時間の問題で、結局、適正価格販売をしていても市場実勢価格以外に余分に30%も薬価が下がることになるのである。逆に、安価販売しているメーカーは市場実勢価格よりプラスの薬価になる。

 

営業要員がいなかったり、販売網を持たなかったりする企業と同じ薬価になることは、極めて不公平だと思う。GE薬を集約して数を減らすことがそれほど必要なのだろうか。品質、情報提供、安定供給の点で完璧を期するためには適正価格による販売が必要になる。適正価格販売に努力している企業とそうでない企業も同一価格では、あまりにも理不尽である。

 

一方、18年度からの薬価制度改革では、長期収載品目をGE薬並に引き下げていく方向性の新ルールが導入されることになった。そのため外資系、国内大手も含め長期収載品に依存する新薬メーカーが大きなダメージを受ける。GE薬を一つの価格帯へ誘導するやり方はGE薬メーカーを有力企業に集約していく方向にはならない。これまで、「GE薬メーカーの数が多過ぎる」「品目数が多過ぎる」「価格の違いがあり過ぎる」などの意見があり、これらをなんとか集約する方向にあるのだろうが、GE専業メーカーとしては、あくまで新薬と同様に市場実勢価格主義を厳守していただきたい。

 

先ほどの67年の統一限定列記方式導入以降の10年間、GE薬メーカーは驚くほど急伸することができた。その後、20年間はとことん抑制され、良い会社でもどんどん退場し、整理淘汰されていった。02年以降のGE薬使用促進策と相まって、その後15年間は大きく伸長することができ、われわれも海外企業を買収できるレベルの企業に成長できたが、今後はGE薬メーカーにとっても厳しい時代に入るイメージだ。

 

とにかく、この3価格帯主義はわれわれにとっては極めて厳しい制度になる。低薬価品の底上げや、不採算品目の是正、GE薬のR幅を定額制にするなど、なんらかの対策を望んでいる。医療の質を下げず、年間2兆~3兆円も同じ効果で医療費節減に貢献しているGE薬メーカーが存続できるようGE薬協(JGA)は積極的に提案していかなければならない。

 

業界再編の可能性も

 

――GE薬メーカーの立場として政策的な要望は。

 

われわれは原則、市場実勢価格主義に戻し、薬価改定も毎年改定は反対というスタンスだが、中央社会保険医療協議会や国が基本方針として発表した以上、もとには戻らないと思う。ただ、GE薬の場合は、毎年薬価調査を実施して改定していくことに耐えられる体力はない。特に低薬価品目については対象外というより薬価を引き上げてもらわないと困難な状況になってきた。乖離幅については、例えば10%乖離があっても実際の引き下げは5%にとどめるなどの策が講じられなければ、GE薬メーカーの体力は持たないと思う。

 

これまで数量ベースで大きく伸長した時期は、それでカバーできたが、現在の数量ベース約68%を2年ほどで80%までの引き上げを目指す中では、急激な数字の拡張は望めない中で、薬価改定の影響は大きくなる。

 

繰り返しになるが、導入されている3価格帯制度に耐えられる会社はない。当然、新薬メーカーの新規参入はないと思うし、取り組んでいる企業も撤退する可能性もある。GE薬メーカーの中でも再編が起きる可能性は否定できない。

 

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出典:薬事日報

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