
知れば知るほど奥が深い漢方の世界。患者さんへのアドバイスに、将来の転職に、漢方の知識やスキルは役立つはず。薬剤師として今後生き残っていくためにも、漢方の学びは強みに。中医学の基本から身近な漢方の話まで、薬剤師・国際中医師の中垣亜希子先生が解説。
第120回 「五味子(ごみし)」の効能 漏れを止める酸味の力! 動悸、咳止、精神安定、気力・体力アップに
個人的に「かっこよくて心強い!」と思う中薬(生薬)がいくつかあるのですが、「五味子(ごみし)」はその一つです。見た目が小さくてかわいいし、酸味があって、比較的に少量でも効果を発揮するギャップもあります。今回は、五味子の中医学的な効能についてお話しします。
- 1. 五味子(ごみし)って、なにもの?
- 五味子の四気五味(四性五味)とは
- 五味子の分類:収渋薬(しゅうじゅうやく)
- 2. 五味子はどんな時に用いられるのか(使用例)
- (1)肺と腎が弱りによる慢性咳嗽・呼吸困難に:「斂肺滋腎(れんはい・じじん)」
- (2)陰虚の盗汗・陽虚の自汗に:「生津斂汗(しょうしん・れんかん)」
- (3)気陰両虚の口渇・疲労・消渇に:「益気生津・止渇(えっきしょうしん・しかつ)」
- (4)補腎しながら精液・尿・便などの漏れを止める:「渋精止瀉(じゅうせい・ししゃ)」
- (5)心悸・失眠・多夢に:「寧心安神(ねいしん・あんじん)」
- (6)慢性肝炎のトランスアミナーゼ高値に:ALT(GOT)・AST(GPT)降下作用
- 3. 五味子の効能を、中医学の書籍をもとに解説
- 4. 五味子の注意点
- 5. 五味子はどこで購入できる?
1. 五味子(ごみし)って、なにもの?
五味子は乾燥した状態で直径5mmくらいの黒色の果実です。酸・苦・甘・辛・鹹(さん・く・かん・しん・かん)の5つの味すべてをもっていることからその名がついています。「子」は果実や種といったニュアンスです。
実際食べてみると、とにかく酸っぱさが際立っていて、その酸っぱさが五味子の効きの本質・正体です。
ちなみに、韓国の伝統的なお茶のひとつに、五味子を煎じたオミジャチャ(五味子茶)がありますが、中国から伝来した中医学がおおもとにあります。夏バテ予防として好んで飲まれ、かの有名な長編ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い(大長今)』の主演女優さんが、五味子茶で真夏の撮影を乗り切った、とインタビューで語っておられました。もちろん、中国でも、あるいは日本でも、薬茶として親しまれています。
五味子の四気五味(四性五味)とは
中薬・食物(薬食)には、四性(四気)と呼ばれる「寒・熱・温・涼」の4つの性質があり、さらに、温めもせず冷やしもしない、寒熱の偏りがないものは「平(へい)」と言います。五味子は「温性」です。
■生薬や食べ物の「四気(四性)」

五味子の四気五味(四性五味)は「温性、酸味」なので、次のような作用があることがわかります。
・酸味=収斂(しゅうれん)作用・収渋(しゅうじゅう)作用。渋味で引き締めて、渋らせて、せき止める。収斂のチカラで、あちこちに散らかったのを抑え込み、あるべきところに落ち着けるイメージ。
また、五味子は「肺・腎・心のグループ」に作用し、これを中医学では「肺経・腎経・心経に作用する(帰経する)」と表現します。
五味子の分類:収渋薬(しゅうじゅうやく)
中薬学の書籍では、五味子は「収渋薬(しゅうじゅうやく)」に分類され、「収斂薬」「固渋薬」とも呼ばれます。
【収斂と固渋について】
「収斂」の「収」は「おさめる」という意味で、「斂」には、モノがかたまる・まとまる・縮まる・おさまる…といったニュアンスがあります。バラバラに散らかったものをシューっとまとめて、あるべきところへ落ち着かせるイメージです。
たとえば「肺の気」が上にのぼって、散らかっているような状態(咳や息苦しさなど)を、収斂によって下へおさめます。このように「収斂」は、「内向きにおさめる」方向に作用します。
また、精神面でも同じように働きます。たとえば、怒りや興奮などで気が荒ぶっているとき、収斂することで気をまとまらせ、落ち着かせることができます。
【固渋とは】
収斂のうち、特に、流れをせき止めるときは「収渋」「固渋」と言うことが多いようです。「渋」は本来は「澀」の字を用い、「流れ過ぎを固めて渋らせる」…といったニュアンスです。
たとえば多汗・尿漏れ・失禁・下痢など流れ過ぎるものに対して収渋薬を使います。夏に汗をかき過ぎて脱水しないように用いるのもよくある例です。
このように、収斂薬・収澀薬は、「散らかった状態を落ち着かせる」「浮き上がったり突き上げるものを鎮める」「漏れをせき止める」といったイメージで用いられます。
ピンチになったら甘味より酸味?!
大昔、収斂薬・収渋薬は、補気薬として用いられていました。弱って命が消えそうな時に、消化に負担がかかる甘味の補薬を与えてる場合ではありません。そんな時は酸味によって生命体から抜け出しそうな気を収斂し、死んでしまうのを防ぎます。
慢性的な虚弱なタイプに収渋薬(酸味)を配合する
気が不足していて、精神的にも肉体的にもパワー不足な「気虚」の人は、たいていは消化機能が弱いです。したがって、もたれやすくて胃腸に重たい性質を持つ甘味の補薬(ほやく:補う薬)を入れると、良くなるどころか悪化することがあります。こういう人は、酸味の薬を入れると元気になります。
特に五味子の酸味の収斂の働きは、朝が苦手で、お昼を過ぎると調子が出てくるタイプ(たとえば、起立性調節障害・低血圧など)にも使います。
収斂固渋は標治(≒対症療法)の一手段
「耗散(もうさん:必要なものがどんどん消耗して散ってしまうこと)」や「滑脱(かつだつ:必要なものが外に漏れ出てしまうこと)」が続くと、少しずつ気力や体力が衰えて、他の病気を招いてしまうことがあります。収斂固渋は、その消耗や漏れを抑えることを目的に用います。
しかし、消耗や漏れのそもそもの原因は正気虚弱(生命を支える力の不足)にあります。したがって、補薬と収渋薬を配合し、本治(ほんち:根本治療)と標治(ひょうち:対症療法)の両方にアプローチする必要があります。
ただし、外から侵入した邪気がまだ残っている場合や、下痢や咳の初期に収渋薬を使うと、邪気まで体内に閉じ込めてしまい、病気が長引くことがあります。そのため、使用のタイミングには注意が必要です。

2.五味子はどんな時に用いられるのか(使用例)
五味子は、主に以下の6パターンで用いられます。具体的な例を見ていきましょう!
(2) 陰虚の盗汗・陽虚の自汗に:「生津斂汗(しょうしん・れんかん)」
(3) 気陰両虚の口渇・疲労・消渇に:「益気生津・止渇(えっきしょうしん・しかつ)」
(4) 腎虚の遺精・滑精・頻尿・尿失禁・慢性下痢・五更泄瀉に:「渋精止瀉(じゅうせい・ししゃ)」
(5) 心悸・失眠・多夢に:「寧心安神(ねいしん・あんじん)」
(6) 慢性肝炎のトランスアミナーゼ高値に:ALT(GOT)・AST(GPT)降下作用
(1)肺と腎が弱りによる慢性咳嗽・呼吸困難に:「斂肺滋腎(れんはい・じじん)」
長引く咳(久咳)や、息苦しさ(虚喘)が続く状態のことを「久咳虚喘(きゅうがい・きょぜん)」と言います。これに対し、五味子の酸味は気を収斂して、内向き・下向きに落ち着かせることで改善します。
さらに、五味子には温性でかつ潤す作用があります。人体の上方では肺の気を鎮め、下方では腎陰(じんいん:腎の潤い)を補うため、久咳虚喘や、肺と腎の両方が弱って起こる肺腎不足の喘咳に効果を発揮します。
肺虚あるいは肺腎両虚による慢性的な咳や呼吸困難には、麦門冬・熟地黄・山茱萸・党参などと組み合わせて用います。
【処方例】麦味地黄丸(ばくみじおうがん)・五味子湯(ごみしとう)・都気丸(ときがん)
麦味地黄丸は、日本にもエキス顆粒剤や丸剤(直径4mmくらいの黒い玉)があります。味麦地黄丸とも呼ばれますが同じものです。六味地黄丸に麦門冬と五味子を足した処方で、肺腎グループの弱りが関係する慢性的な呼吸器系疾患や皮膚病の根本治療(本治)にも活用されます。
また、五味子は肺寒咳嗽=肺が冷えて起こるしつこい咳にも使うことができます。この場合は、細辛(さいしん)や乾姜(かんきょう)などと用いて治療します。
【方剤例】苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
苓甘姜味辛夏仁湯も小青竜湯も、日本にエキス顆粒剤が存在します。小青竜湯は日本ではなんとなく処方されがちですが、配合生薬から分かるように、漫然と長期間使用し続けると、腎陽虚を招きかねませんので注意が必要です。
(2)陰虚の盗汗・陽虚の自汗に:「生津斂汗(しょうしん・れんかん)」
五味子はその酸味によって、生津作用(潤いを生む)と斂汗作用(過剰な発汗を止める)を持つため、自汗(じかん)や盗汗(とうかん)などの多汗症に用います。酸味によって汗腺をキュッと引き締めて過度な発汗を抑えるとともに、発汗で失われた津液(潤い・体液)も補います。
盗汗…寝ている間にかく汗。眠っている間だけ発汗し、目が覚めると汗は止まるのが特徴。
「生脈散(しょうみやくさん)」は、人参・麦門冬・五味子のたった3味から成る処方です。熱傷気陰(熱による気陰不足)の動悸・不整脈・脈の弱り・口渇・多汗などに用いられます。本コラムでもご紹介したことがある処方です。
【処方例】生脈散
また、柏子仁(はくしにん)・人参(にんじん)・麻黄根(まおうこん)・牡蠣(ぼれい)などを配合し、陰虚による盗汗や、陽虚による自汗を治療します。
【処方例】柏子仁丸(はくしにんがん)
(3)気陰両虚の口渇・疲労・消渇に:「益気生津・止渇(えっきしょうしん・しかつ)」
五味子は「消渇(しょうかつ)」、つまり、現代でいう糖尿病のような強い口渇や多飲がみられる状態にもよく応用されます。
黄耆(おうぎ)・生地黄(しょうじおう)・麦門冬(ばくもんどう)・天花粉(てんかふん)などの補気薬や補陰薬を配合して、口の渇きや多飲(ノドが渇いて水をたくさん飲みたがる)を改善します。
【処方例】黄耆湯
(4)補腎しながら精液・尿・便などの漏れを止める:「渋精止瀉(じゅうせい・ししゃ)」
五味子は、「補腎渋精(ほじん・じゅうせい)」と「収斂止瀉(しゅうれん・ししゃ)」の効能をもちます。簡単に言うと、酸味の力で“ギュッと引き締めて渋らせる”ことで、尿や便などの漏れを止める作用です。
収斂止瀉…酸味の作用で収斂させて、大便の病的な漏れを止めること。
これらの効能により、腎虚が原因で起こる
・遺精(寝ている間などに、不随意で精液が漏れる)
・滑精(白昼に、意思と関係なく精液が漏れる)
・頻尿、尿漏れ
などに、桑螵蛸(そうひょうしょう:カマキリの卵)・竜骨(りゅうこつ)など配合して治療します。
【処方例】桑螵蛸丸(そうひょうしょうがん)
また、破故紙(はこし)・呉茱萸(ごしゅゆ)・肉豆蔲(にくずく)などと配合して、「脾腎虚寒」による「五更泄瀉(ごこうせっしゃ)」を治療します。
【処方例】四神丸(ししんがん)
「五更泄瀉」とは、夜明け前(五更の刻=午前3~5時頃)の鶏が鳴く頃に、決まって下痢することを言います。「五更瀉(ごこうしゃ)」「鶏鳴泄瀉(けいめいせっしゃ)」とも言います。ざっくり言えば、「脾と腎がとにかく冷えている!やたら冷えている!」ために下痢してしまう状況です。
まだ筆者が若いころ、初めて五更瀉の患者さんに出会って「(教科書にのっていた鶏鳴泄瀉は)本当のことだったんだ…」とびっくりした記憶があります。実は意外といらっしゃいます。
四神丸は日本にはエキス顆粒剤が存在しませんが、たとえば、真武湯(しんぶとう)+人参湯(にんじんとう)や参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)などのエキス顆粒剤の組み合わせで対処できるかと思います。
(5)心悸・失眠・多夢に:「寧心安神(ねいしん・あんじん)」
五味子は、気持ちを落ち着かせて安らげる作用(寧心安神)をもちます。そのため、動悸や不整脈、不眠、夢をよく見る(多夢)など、神経の高ぶりが関係する症状に使われます。生地黄・麦門冬・丹参・酸棗仁などと用いて、心腎の陰血不足によるこれらの症状を治療します。
【処方例】天王補心丹(てんのうほしんたん)
朱砂が入っていないバージョンの天王補心丹は、日本の漢方薬局でも入手できます。個人的に大好きな処方です。
(6)慢性肝炎のトランスアミナーゼ高値に:ALT(GOT)・AST(GPT)降下作用
慢性肝炎でトランスアミナーゼが上昇している場合、五味子を粉末にして内服することで、数値を降下させる作用があると、『中薬学』(上海科学技術出版社)に記述されています。
3. 五味子の効能を、中医学の書籍をもとに解説
ここでは中薬学の書籍で紹介されている五味子の効能を見ていきましょう。効能の欄には、四字熟語のような文字が並んでいます。一瞬ギョッとするかもしれませんが、漢字の意味から効能のイメージを掴むのに役立ちます。
【分類】
収渋薬
【処方用名】
五味子・北五味子・北五味・五味・ゴミシ。
【基原】
マツブサ科 Schizandraceae のチョウセンゴミシ Schizandra chinensis BAILL.の成熟果実。『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)
Schisandra chinensis Baill.(北五味子)とSchisandra chinensis Rehd. et Wils.(南五味子)の成熟した果実を指す。北五味子は伝統的に使用される正品である。主に中国東北部、内モンゴル、河北省、山西省で栽培される。また、中国南西部および揚子江以南の地域でも栽培されている。果実は秋に熟した状態で収穫し、枝を切り落とし、天日干しする。生のまま、または、酢とはちみつを混ぜて蒸して天日で乾燥させて用いる。『中薬学』(上海科学技術出版社)
【性味】
酸、温。
【帰経】
肺・腎・心。
【効能】
斂肺滋腎(れんはい・じじん)・生津斂汗(しょうしん・れんかん)・澀精止瀉(じゅうせい・ししゃ)・寧心安神(ねいしん・あんじん)
【応用】
1.久咳虚喘(久しい咳・弱って呼吸困難)に用いる。五味子の酸味はよく収斂し、温性でかつ潤す、上は肺気を収斂し、下は腎陰を滋養するため、肺虚久咳および肺腎不足の喘咳に活用され、止咳平喘の効能をもつ。罌粟殻(おうぞくこく)と配合して肺虚久咳を治療する。
(処方例)五味子丸
また、都気丸は六味地黄丸と併用して腎虚喘促を治療する。五味子は肺寒咳嗽しも用いることができ、ただし辛温宣散の薬物を配合する必要がある。例えば、五味細辛湯は、細辛や乾姜などの温肺化飲の薬物を共に用いることで肺経受寒したしつこい咳を治療する。
2.津傷口渇、自汗、盗汗に用いる。五味子は酸澀により生津しまた斂汗し、ゆえに口渇・多汗の証に用いる。人参・麦門冬・五味子の組成で熱傷気陰による心悸脈虚と口渇多汗に用いる。
(処方例)生脈散
柏子仁・人参・麻黄根・牡蠣などを配合して陰虚による盗汗および陽虚による自汗を治療する。
(処方例)柏子仁丸
消渇証には本品を応用して、黄耆・生地黄・麦門冬・天花粉など益気生津薬を共に用いて口渇多飲の消渇証を治療する。
(処方例)黄耆湯
3.遺精・滑精・久泻不止に用いる。五味子は補腎澀精・収斂止瀉の効能をもつ。≪医学入門≫にあるように、五味子膏は五味子単用で夢遺虚脱を治療する。≪世医得効方≫にあるように、桑螵蛸・竜骨などを配合して精滑不固を治療する。また、破故紙・呉茱萸・肉豆蔲などを配合して、脾腎虚寒による五更泄瀉を治療する。
4.心悸・失眠・多夢に用いる。五味子は寧心安神作用がある。生地黄・麦門冬・丹参・酸棗仁などと配合し心腎陰血虧損による虚煩心悸・失眠多夢を治療する。
(処方例)天王補心丹
このほか、五味子を粉末にして内服し、慢性肝炎にトランスアミナーゼが上昇している人に対して、数値を降下させる作用がある。
【用量・用法】
・2~6g。粉末状にし、1回1~3gを服用。…『中薬学』(上海科学技術出版社)
・3~9g、煎服。…『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)
【使用上の注意】
五味子は酸澀収斂するため、およそ表邪未解、内有実熱、咳嗽初期、麻疹初期は均しく使用に適さない。
※【分類】【処方用名】【基原】【用量・用法】は『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)より部分的に引用/【基原】【性味】【帰経】【効能】【応用】【用量・用法】【使用上の注意】は『中薬学』(上海科学技術出版社)より部分的に抜粋し筆者が和訳・加筆したもの
五味子は、気や陰(潤い)が不足(=虚)している場合の、肺グループ(≒呼吸器系)のトラブルや、動悸・不整脈などの心グループのトラブル(≒ “心”の働きの中でも心臓のポンプ作用の方)に活用されます。
「心肺機能」という言葉があるように、西洋医学でも中医学でも、心と肺は生理的にも病理的にも関わりが深いと考えられています。五味子は、まさにその心肺の働きの改善に用いられる中薬です。
他方で、不眠や多夢や不安感といった、心のグループのトラブル(こころ・メンタルの方)にも活用します。さらに、五味子は生命の根本を支える「腎」に帰経することも大きなポイントで、心身を根元から支えるようなイメージがあります。

4. 五味子の注意点
『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)の【使用上の注意】に、
“②酸斂であるから、熱邪の喘咳・外感の咳嗽で表裏俱実のとき・麻疹の初期などには用いてはならない。”
とあるように、収渋薬として使う際には、注意が必要です(記載量は中国における量で日本とは異なります)。
酸味の収斂・収渋が邪気の出口まで引き締めてしまって、邪気を追い出すのを邪魔してしまうようなケースでは、適切ではありません。
5. 五味子はどこで購入できる?
生薬の五味子や、五味子を含む漢方製剤や健康食品は、漢方薬局で販売されています。また、お茶などの食品としても販売されています。
五味子のお茶は、なにかしらの弱りがあって汗をかき過ぎる場合の養生茶として、毎日飲める一方で、本格的にトラブルがあったときにも常に頼もしい存在です。
五味子を含む漢方製剤は他にも生薬を含みますので、上述の注意点のように、それなりに体質や状況を選びます。まずは中医学の専門家にご相談するのがおすすめです。
参考文献:
・小金井信宏(著)『中医学ってなんだろう(1)人間のしくみ』東洋学術出版社 2009年
・内山恵子(著)『中医診断学ノート』東洋学術出版社 2002年
・丁光迪(著)、小金井 信宏(翻訳)『中薬の配合』東洋学術出版社 2005年
・凌一揆(主編)『中薬学』上海科学技術出版社 2008年
・中山医学院(編)、神戸中医学研究会(訳・編)『漢薬の臨床応用』医歯薬出版株式会社 1994年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社 2004年
・翁 維健(編集)『中医飲食営養学』上海科学技術出版社 2014年6月
・日本中医食養学会(編著)、日本中医学院(監修)『薬膳食典 食物性味表』燎原書店 2019年
・許 済群(編集)、王 錦之(編集)『方剤学』上海科学技術出版社 2014年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社 2004年
・伊藤良・山本巖(監修)、神戸中医学研究会(編著)『中医処方解説』医歯薬出版株式会社 1996年
・李時珍(著)、陳貴廷等(点校)『本草綱目 金陵版点校本』中医古籍出版社 1994年






