現在、地域医療のあり方は大きく変化しています。本書は今の地域医療が抱える問題や、これからの地域医療で必要なこと、そしてそれぞれの時代において薬剤師に求められていることについてまとめられた1冊です。著者が外科医として病院へ勤務した経験や、実家の薬局との関わりを通して実感したことに基づいて書かれているため、内容には説得力があります。
急速な高齢化にともなって急性期病院でも高齢の患者さんが増えていることや、患者さんが希望するままに薬を処方し、相互作用への配慮がなされていない病院の実態、6年制に移行する以前の薬学部で解剖学や生理学についてあまり教えられていなかったことによる薬剤師の知識不足など、現在の医療には多くの課題があります。
これらの課題に対処し、時代に合った医療を行うためのキーワードが「地域包括ケア」であると著者はいいます。
地域包括ケアでは医療や介護、ソーシャルワーク、生活支援などを連携させ、医療支援を必要とする人の日常生活の見守りや介助を提供していくことが必要になります。さらに、一人暮らしや近くに血縁者がいない高齢者のために物品供給や司法・金融などのサービスの体制を整えることも必要です。そのほかにも認知症患者さんに対する見守りや危険予知、緊急時の対応のためのバックアップシステムを構築すること、高齢者の健康寿命を延ばすためのケアシステムなども求められています。
では、このような地域ぐるみでの医療ケアが重視される時代に、薬剤師にはどのような役割が求められるのでしょうか? この答えとして著者は「患者さんに寄り添う姿勢」「自分自身のスキルを磨き続けること」「チーム医療体制を構築すること」などを挙げています。
薬剤師の仕事は調剤だけではなく、患者さんや薬物治療に寄り添うことも必要です。また、医療をとりまく変化に対応するためには薬剤師の強みと弱みを理解し、講習会への参加やインターネットの活用などを通して学び続けることも不可欠です。さらに地域医療においてはチーム医療の体制を整えることが非常に重要となるため、他の職種とどのように連携していくかを考えることも欠かせないのです。
薬剤師に求められることは、時代の変化とともに変化します。これからの時代に何が求められているのかを理解して、働き方に反映させたい人におすすめの指南書です。