2015年6月、政府は「ジェネリック医薬品の普及率を2020年度末までに80%以上にする」という目標を設定しました。2015年9月時点でのジェネリック医薬品普及率は56.2%と6割にせまる数値となっている一方で、ジェネリック医薬品に対する不信感も根強く残っています。
日本医師会総合政策研究機構による「2014年度診療報酬改定の影響に関するワーキングペーパー」で公表されたアンケートによると、ジェネリック医薬品について、診療所医師の5割以上が「品質・効果に問題があると感じている」と回答しており、その問題点としては、「品質」が54.2%、「効果」が50.2%、「情報提供」が41.9%、「安定供給」が31%、「副作用」が30.2%という結果になりました。
また、中央社会保険医療協議会(中医協)が実施した「平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」で、ジェネリック医薬品を積極的に扱っていない薬局の薬剤師にその理由を尋ねたアンケートでは、「後発医薬品の品質(効果や副作用を含む)に疑問がある」という意見が最も多く、「(薬局における)在庫管理の負担が大きい」「(処方箋を発行する)近隣医療機関が後発医薬品の使用に消極的である」「安定供給に不安がある」という意見が続きました。
さらに、同調査によると、患者さんを対象にした調査でも全体の15.6%が「できればジェネリック医薬品を使いたくない」と回答しているとのことです。
このような状況の背景には、「価格の安いジェネリック医薬品と先発品は本当に同じなのか?」という疑問があります。ジェネリック医薬品の承認申請の基準は年を経るごとに厳しくなっており、現在の品質保証体制は国際基準にまで高められているにもかかわらず、このようなジェネリック医薬品の歴史が医師や薬剤師に十分に知られていないことが問題だと著者はいいます。
本書では、ジェネリック医薬品の承認基準の変化や先発品との違いを振り返るとともに、その利用を増やすための具体的な施策として広島県呉市で導入されている「ジェネリック医薬品差額通知システム」を紹介しています。このシステムは、医療保険者が国保加入者に対して、「ジェネリック医薬品を使った場合にどのくらい薬代が安くなるか」を具体的に示すことで、ジェネリック医薬品の利用をうながすもの。これによって、呉市では年間1億円の医療費が削減できたそうです。
このほかにも本書では、疾患領域別のジェネリック医薬品や先進各国でのジェネリック医薬品の利用状況、バイオ医薬品のジェネリックともいえる「バイオシミラー」などを紹介しています。普段の業務でジェネリック医薬品を扱うことが多い人も、これまでなんとなく不信感を抱いていたという人も、ジェネリック医薬品について改めて学び、幅広く理解するために役立つ1冊となるはずです。