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最新 薬剤師業界のTopicsをラク〜にまとめ読み 医薬NEWS超楽読

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2019年10月の「医薬NEWS超楽読」では、協会けんぽの調査で明らかになった抗菌薬使用の実態について解説。また開発の動向が注目される話題の「AI創薬システム」とは何か?について紹介します。

「かぜに対する抗菌薬」使用が減少/「AI創薬システム」で漢方薬を再開発?

ラク~にまとめ読み
  • Topics 1 無意味な「かぜに対する抗菌薬」使用が減少
  • 広域スペクトラム抗菌薬の使用割合が極めて高い日本。地域差が大きく、都道府県別で使用割合が最も高いのは奈良県、最も低いのは福井県であった。
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  • Topics 2 「AI創薬システム」で漢方薬を開発?
  • AI創薬システムの開発によって、既存の漢方薬の作用機序を解き明かしたり、新たな効能を予測したりするなど、漢方薬の可能性の拡大が期待される。
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Topics 1 無意味な「かぜに対する抗菌薬」使用が減少

日本における抗菌薬の使用量は諸外国と比べて突出して多いわけではないものの、マクロライド系、キノロン系、セフェム系など広域スペクトラム抗菌薬の使用割合が極めて高いことが分かっています。これらの抗菌薬を濫用すると耐性菌の出現を招きやすく、実際、日本ではバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)などが大きな問題となっています。そのため、抗菌薬の適正使用を促す取り組みが世界的に進められており、日本でも厚生労働省が中心となり、2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定されています。

こうした中、全国健康保険協会(協会けんぽ)は加入者の抗菌薬使用状況を調査し、結果を公表しました。一般的に「かぜ」と呼ばれる急性上気道炎の多くはウイルス感染によるものであり、抗菌薬が効かないとされています。しかし、実際には「かぜ」に対して漫然と抗菌薬を処方する医療機関は多く、上記調査によると2018年度はかぜ患者さんの31.4%に抗菌薬が出されていました。ただし、3年前の調査より10%以上低下している点に光明が見出せます。種類別ではマクロライド系が27.3%と最多でしたが、AMRアクションプランで耐性菌出現リスクが低いとされているペニシリン系の使用割合も増加傾向にあります。

今回の調査では、かぜ患者さんに対する抗菌薬の使用状況に大きな地域差があることも分かりました。最も多く投与しているのは奈良県であり、その割合は48.9%にものぼります。次いで、宮崎県(47.6%)、和歌山県(46.6%)が多く、使用率が高い県は西日本に集中していました。逆に、使用率が最も低かったのは福井県(26.6%)で、北海道(30.0%)、沖縄県(30.9%)と続く結果でした。今後さらにAMR対策の意識を浸透させることにより、抗菌薬の適正使用が全国で(地域格差なく)進んでいってほしいものです。

抗菌薬を多く使用する地域ほど耐性菌が出現しやすいとのエビデンスは、今のところありません。しかし、不適正な抗菌薬使用を多く行えば行うほど耐性菌が出現する可能性は高くなり、蔓延しやすくなると考えてよいでしょう。交通網が発展した現代では、またたく間に耐性菌が広範囲に拡がる可能性も低くはありません。

2015年にはイギリスのエコノミストであるジム・オニールが、このまま抗菌薬の不適正使用が続けば2050年には世界で年間1000万人が耐性菌感染により死亡すると予測しています。これはがんが原因で亡くなる人よりも多く、決して看過できるものではありません。

薬剤師は、医師の処方に対して助言や指摘ができる唯一の職種です。その専門性を大いに生かし、抗菌薬の不適正使用を見つけたら躊躇なく医師に連絡して、処方内容を見直してもらってください。薬剤師の存在は耐性菌に立ち向かうために必要不可欠であり、皆さんのがんばりが患者さんを守ることにつながります。

Topics 2 「AI創薬システム」で漢方薬を再開発?

漢方薬は古くから様々な病気や症状に対して用いられていますが、その作用機序などははっきりと解明されていない部分も多くあります。また、効果に個人差が大きく、医療従事者の中でも漢方薬の使用については賛否両論あるのが現状です。そのため、臨床上広く使用されている漢方薬の科学的根拠に基づいた作用機序を解明すべく、現在も様々な研究が進められています。

2019年8月31日に開催された「第36回和漢医薬学会学術大会」のシンポジウムでは、漢方薬の成分化合物や化学構造の情報などから、AI(人工知能)を用いて作用機序や新規効能を予測する研究が紹介されました。特に、膨大なデータをAIで探り、薬と病気の新たな関係性を見出す「AI創薬システム」の開発が大きく注目されています。

「AI創薬システム」は、既存の薬や開発に失敗した薬などの新しい効果を発見し、従来とはまったく異なる病気の治療薬として再開発する「ドラックリポジショニング」を行う技術です。既存の漢方薬の作用機序を解き明かしたり、これまで知られていなかった新たな効能を予測したりすることが可能となり、漢方薬の可能性を大きく広げることにつながります。さらに、新しい薬を開発するには莫大な費用と膨大な時間が必要ですが、AIを活用することにより、それらを大幅に引き下げることができるのです。

現在、国から承認を受けた漢方薬は約300種類。保険適用されるものも148種類にのぼります。さらに漢方薬の再開発が進んでいくことで、より多くの患者さんが救われることを期待したいですね。

<参考URL>
「風邪」の抗菌薬処方に大きな地域差 協会けんぽ調査(日本経済新聞 2019年9月6日)

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※この記事に掲載された情報は2019年10月28日(月)時点のものです。

成田亜希子(なりた あきこ)

2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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