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西洋医学とは異なる理論で処方される漢方薬。患者さんから漢方薬について聞かれて、困った経験のある薬剤師さんもいるのでは? このコラムでは、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生に中医学を基本から解説していただきます。基礎を学んで、漢方に強くなりましょう!

第25回 木火土金水のバランスの崩れ方 (1)相乗

前回は、五行(木火土金水)の正常なバランスを表す「相生関係」と「相剋関係」についてお話ししました。今回と次回はバランスの崩れ方、「相乗(そうじょう)」と「相侮(そうぶ)」についてお話しします。

「相乗」と「相侮」はどちらも「相剋」の異常パターン、つまり、正常な抑制関係が壊れてしまった状態のことをいいます。おおまかに以下のような違いがあり、どちらも結果として、五行の正常な生剋関係(※)が崩れてしまいます。
※生剋…相生と相剋の両方を表す単語

「相乗」…「相剋関係」の抑制が強くなり過ぎる・相手を抑え過ぎるパターン
「相侮」…「相剋関係」に逆方向の抑制が起きる・逆に自分が抑制されていて侮られるパターン

「相乗」とは“抑え過ぎてしまう関係”

「相乗」の「乗」には、「強いものが弱いものを虐げる・凌駕する」などの意味があります。「相乗」とは、五行のうちの「剋している一行」が相手を強く抑えすぎてしまい、過度な相剋反応が起きることをいいます。

「相乗」を引き起こす原因として、五行のうちの一行が、「1.強くなりすぎる」「2.弱くなりすぎる」の2つのケースが考えられます。

また中医学では、木火土金水のいずれかが強くなりすぎることを「太過(たいか)」、弱くなりすぎることを「不及(ふきゅう)」と言います。

【ケース1:一方の太過による相乗】

五行のなかの一行が強くなりすぎたため、相手を抑えすぎて弱まらせてしまうケースです。
第24回でお話した「木火土金水」のイメージで、このケースを考えてみましょう。木が強くなりすぎたとき、土は栄養を摂られすぎて痩せてしまいます。
このように木が強くなりすぎて、木が土を過剰に抑える状態、これを「木乗土(もくじょうど)」といいます。

【ケース2:一方の不及による相乗】

五行のなかの一行が弱まり、通常の抑制にすら耐えられなくなって、さらに衰弱したケースです。

これも例を出してイメージしてみましょう。栄養が豊かでない土は、木の正常範囲内での栄養摂取でも耐えられずに、さらに土が衰弱していきます。
このように、土が弱まり、相対的に木が土を抑える力が強くなった状態、これを「土虚木乗(どきょもくじょう)」といいます。

次回は「相剋関係」とは逆方向の抑制が起きる状態=「相侮」についてお話します。お楽しみに!

中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、国際中医薬膳師、管理薬剤師。

薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。 東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、イスクラ中医薬研修塾、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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