国試過去問 国試過去問

薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!

第31回 潰瘍性大腸炎症状の的確なコントロールを目指して

潰瘍性大腸炎とは、原因不明の大腸粘膜の炎症によって、慢性的にびらんや潰瘍ができる疾患のこと。発症年齢のピークは20~30代で、便意異常が高く過剰なケースでは1日のトイレの回数が何十回にものぼり、QOLが低下する疾患でもあります。
2017年には約18万人が発症しており、国が定める指定難病の1つです。原因不明ということもあり当初は治療に難渋していましたが、2008年の5-ASA製剤発売から10年で、治療法と治療効果が劇的に改善してきました。その治療法に関して、今年の春に行われた第103回薬剤師国家試験 問327を参考に確認していきましょう。

【過去問題】

第103回 薬剤師国家試験問題 問327から出題

問 327(実務)

26歳男性。1日数回の下痢を繰り返し、また、血便が出ていたので近医を受診した。検査の結果、潰瘍性大腸炎と診断され、メサラジン錠を用いた治療を開始した。2年後、出血性下痢の増加と腹痛を認めるようになり、薬物はメサラジン錠とプレドニゾロン錠の併用に変更になった。
この患者の病態と薬学的管理について適切でないのはどれか。2つ選べ。

  • 1服用困難な場合には、メサラジン錠を粉砕する。
  • 2感染症にかかりやすい。
  • 3メサラジンの副作用として、消化器症状に気をつける。
  • 4定期的に大腸癌の検査を受ける。
  • 5メサラジン錠服用により、潰瘍性大腸炎の完治が期待できる。

<解答>1、5

解説

  • 1
    メサラジン錠は、サラゾスルファピリジンの副作用が出ないように改良された薬剤です。製剤的には活性本体の5−アミノサリチル酸(5−ASA)を多孔性被膜でコーティングし、小腸から大腸の全域にわたって放出する放出制御型製剤のため、粉砕すると放出調節機能が失われます。よって粉砕することは望ましくありません。
  • 2
    本患者は、副腎皮質ステロイド製剤であるプレドニゾロンを服用していることから、易感染状態にあります。
  • 3
    メサラジンの代表的な副作用として、消化器症状(下痢、下血、血便、腹痛等)を起こすことがあります。
  • 4
    長期にわたり潰瘍性大腸炎を患っていると、その発症後累積大腸癌発生率は10年で1.6%、20年で8.3%、30年で18.4%と年々発生率が高くなる傾向にあるほか、大腸癌に移行するケースもあります。そのため、定期的に大腸癌の検査(大腸内視鏡検査等)を受ける必要があります。
  • 5
    潰瘍性大腸炎の治療は、主に薬物療法(メサラジン、サラゾスルファピリジン、副腎皮質ステロイド性薬、シクロスポリンなど)によって行われます。薬物療法のみでも症状の緩和は期待できますが、潰瘍性大腸炎の完治は期待できません。

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– 実務での活かし方 –

乳がんの分子標的薬と化学療法の実例

乳がんには、細胞の表面にあるHER2と呼ばれるタンパク質が過剰に発現しているタイプがあります。HER2が司令塔としてがん細胞を増殖させる働きをもち、このHER2をピンポイントに攻撃する治療法を「抗HER2療法」といいます。
病理検査でHER2が陽性であることが分かった場合に検討される治療ですが、この時に使用される薬剤が、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体と呼ばれる種類の分子標的薬となります。分子標的薬とは、がん細胞が増殖するに関わっている特異的に見られる分子に標的を定めて、その働きを阻害する薬。これにより、効果的にがん細胞に作用します。

潰瘍性大腸炎の概略(表1)
主な症状 下痢・血便・腹痛
軽症:約63%
中等症:約28%
重症:約3%
経過 活動期:大腸粘膜に炎症が強く発現し症状が強く発現する時期
寛解期:症状が治まっている時期
患者数 18万人以上
好発発症年齢 20~30代
性差 なし
原因 不明
炎症部位 大腸のみ
全大腸炎型:約38%
左側大腸炎型:約37%
直腸炎型:約22%
その他:約3%
治療法 大腸粘膜の炎症を抑える。活動期と寛解期で治療が異なる

完治できる治療方法がない現時点では、活動期には寛解導入治療を行い、寛解導入後は寛解維持治療を長期にわたり継続、重症度や罹患範囲・QOL(生活の質)の状態などを考慮しながら、大腸の粘膜の炎症を抑えることに主眼がおかれています。
基本的には、治療を継続することにより大多数の患者は寛解期を維持することが可能ですが、場合により活動期と寛解期を繰り返してしまうこともあります。

続いて、部位・重症度に応じた薬物治療の治療方針を確認しましょう。

寛解導入療法(表2)
軽症 中等症 重症 劇症
5-ASA製剤(経口) ○● ○● ○●  
5-ASA製剤(坐剤)  
5-ASA製剤(注腸剤) ○● ○● ○●  
ステロイド(注射)    
ステロイド(経口)      
ステロイド(坐剤)  
ステロイド(注腸剤) ○● ○● ○●  
カルシニューリン阻害剤(経口)      
カルシニューリン阻害剤(注射)      
JAK阻害剤    
抗インデグリン抗体製剤    

※○:左側大腸炎型及び全大腸炎型/●:直腸炎型/★:新薬

寛解導入療法(難治例)(表3)
ステロイド依存例 ステロイド抵抗例
チオプリン製剤  
抗TNFα抗体製剤
カルシニューリン阻害剤(経口)
カルシニューリン阻害剤(注射)  
JAK阻害剤  
※新薬
抗インデグリン抗体製剤  
※新薬

寛解維持療法(表4)
非難治例 難治例
5-ASA製剤(経口)
5-ASA製剤(坐剤)
5-ASA製剤(注腸剤)
チオプリン製剤  
抗TNFα抗体製剤  

潰瘍性大腸炎の活動期における基準となる薬剤は5-アミノサリチル(5-ASA)酸製剤です。これに症状変化にあわせてステロイド製剤を追加併用し、それでも治療経過が好ましくない場合には、抗TNFα抗体製剤、カルシニューリン阻害剤を使用します。5-アミノサリチル(5-ASA)酸製剤とステロイド製剤については、それぞれ炎症部位にあわせて経口・坐剤・注腸製剤など各剤型が揃っています。

事例

患者さんに薬の副作用や治療の方向性を伝えよう

新規作用薬も多く発売される中、この疾患への治療薬の特長としては、非常に多くの剤型と工夫が凝らされていることが挙げられます。
表5にて、この疾患に使用される主な薬剤の剤型種類と、発売年(適応追加も含む)を確認しましょう。

寛解維持療法(表5)
発売年 内服 注射 坐薬 その他
2008 5-SAS製剤(ペンタサ錠500mg®)      
2009 5-SAS製剤(サラゾピリン錠500mg®)   5-SAS製剤(サラゾピリン坐剤500mg®)  
カルシニューリン阻害剤(プログラフカプセル® 0.5mg 1mg 5mg)※      
5-SAS製剤(アサコール錠400mg®)      
2010   抗TNFα抗体製剤(レミケード点滴静注用100®)※    
2013   抗TNFα抗体製剤(ヒュミラ皮下注®40mg 80mg)※ 5-SAS製剤(ペンタサ坐剤1g®)  
2015 5-SAS製剤(ペンタサ顆粒94%®)      
2016 5-SAS製剤(リアルダ錠1200mg®)      
2017   抗TNFα抗体製剤(シンポニー皮下注50mgシリンジ®)※   ステロイド(レクタブル2mg注腸フォーム®)
2018 JAK阻害剤(ゼルヤンツ錠5mg®) 抗インテグリン抗体製剤(エンタイピオ点滴静注用300mg®)    

※追加適応取得年

本来、潰瘍性大腸炎の炎症の大部分が発現している直腸やS状結腸には、局所作用を発揮する坐薬や注腸剤の使用が効果的です。ただし、腸内奥部までの浸透となると、注腸製剤は注入時に横臥位になり、注入後も肛門から液が漏れる可能性がありました。

2017年には、注腸製剤でありながら、液状タイプではなく泡(フォーム)状タイプのステロイド注腸製剤が発売され、その用途が広がりました。
また、非侵襲的に使用できる経口製剤について、従来は胃酸での分解などによって腸内での作用にはあまり期待できませんでした。
2008年には、大腸内での拡散を視野にフィルムコーティングを施した5-SAS製剤のメサラジンが発売されて以来、コーティングの変化により数種類が発売。
2016年には、胃でのpH変化に対応できるフィルムコーティングなどを有したメサラジン製剤(リアルダⓇ)が登場し、内服でも持続的に消化管粘膜に浸透して炎症を抑えることが可能となりました。
さらに、新規薬剤としては、2018年5月に適応の追加ではありますが、内服でJAK阻害薬(トファシチニブクエン酸塩)も使用可能となりました。この薬剤は、リンパ球の活性化、増殖などに作用するインターロイキン2(IL-2)を始めとするシグナル伝達であるヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害することで免疫反応を抑制します。
また、注射製剤での新規薬剤としては、2018年8月予定の抗インテグリン抗体製剤(ベドリズマブ)があります。高い腸管選択性が期待されるこの抗インテグリン抗体は、消化管粘膜に発現するMAdCAM-1 と特異的に結合することで、腸管の炎症局所へのリンパ球の遊走を阻害する生物学的製剤です。

以上のように、潰瘍性大腸炎を抱える患者の容態などにあわせ、細部にわたり薬剤選択が可能になってきました。きめ細かい患者の症状把握と適切な服薬指導によって健常者と変わらない生活を送れることを念頭に、急性期や症状が再発した患者への対応をこころがけましょう。

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター。

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:http://mantle-1995.com

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター

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