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知れば知るほど奥が深い漢方の世界。患者さんへのアドバイスに、将来の転職に、漢方の知識やスキルは役立つはず。薬剤師として今後生き残っていくためにも、漢方の学びは強みに。中医学の基本から身近な漢方の話まで、薬剤師・国際中医師の中垣亜希子先生が解説。

第45回 意外と知らない「ふつうの生理」とは?

生理痛や生理前のイライラなど、生理にまつわるトラブルや悩みを抱えている女性はたくさんいます。ところが、当たり前だと思っていた不調も中医学にもとづくと実は「正常な状態」ではないケースがほとんどです。きめ細やかで厳密な中医学流「生理」をチェックし、自分の体の状態を確認しましょう。

目次

生理の悩みとは 周期、遅れ、塊が混じる…

生理痛、生理前のイライラや気分の落ち込み、胸が張って痛い、周期が不規則、排卵痛、経血にレバー状の塊が混じるなど、生理にまつわる悩みを抱える女性はとても多いようです。一方、漢方薬局でヒアリングをすると、当たり前だと思っていた自分の生理の状態が正常じゃないと知ってびっくりした!ということがよくあります。

昔は婦人病を「血の道症(※)」と呼んだように、「血(けつ)」の状態・あり方そのものは、その女性の健康と美容に、そのまま反映されます。漢方相談では、婦人科と関係ない疾患や症状で悩んでいる患者さんにも、必ず月経の状態を尋ねます。閉経している場合は、月経があった頃のことや閉経した時期、更年期の症状など、月経にまつわることをひととおりチェックするほど、月経は女性の健康状態を映し出す鏡、体質を知るための情報がつまっている宝庫といえます。
(※)血の道症:月経、妊娠、出産、産後、更年期などのホルモンの変動によって起きる精神的症状や肉体的症状のこと。

「ふつうの生理」とは、どんな生理?

中医学のチェックはきめ細かく厳密です。ポイントは、月経周期、出血期間と経血量(出血量)、経血の色、経血の質、生理痛、生理にまつわる症状(生理前・生理中・生理後・排卵期の周期の影響を受ける症状)です。

下記の項目はすべて正常な月経について書かれています。
自分の生理の状態を、チェックしてみましょう!です。

中医学流 生理チェックシート

□生理周期は、25日~35日(個人差あり) ベストは、28日±3日
□出血期間(生理期間)は、3日~7日間(個人差あり)
□経血の色は、赤~暗赤色
□経血に、レバー状の塊や大小のツブツブした塊が混ざらない
□生理痛はない(腹部・下腹部の痛み、頭痛、腰痛など痛む場所は人さまざま)
□月経前症候群(PMS)はほとんどない
□不正出血しない
□排卵期に、下腹部の張りや排卵痛がない
□排卵期と生理前2~3日に透明なおりものが分泌される
□子宮筋腫・内膜症などの婦人科の既往歴がない
□初潮は12歳前後である

中医学では生理の周期日数の変化を重視する

中医学では、日数の長さより、日数の変化を重要視します。

例えば、ずっと27日周期の人が、あるとき35日周期と長くなったり、逆にずっと31日周期の人が、あるとき25日周期と短くなったりするのは、周期としては正常範囲内だったとしても、なにかしらのトラブルがあると考えます。20代前半までは28日周期だったのに、20代後半から周期が短くなってきたor長くなってきた…というケースは、なにかしらの精神的・肉体的負担のある女性にみられるケースです。

また、周期が25日~35日以内であったとしても、月によって周期がバラバラなのも、健康的な生理とはいえません。27日周期なら27日後にぴったりくるのが、本当に健康的な生理です。

とはいえ、風邪をひいて長く寝込んだ、疲れていたなどの理由で、たまに1~2日前後することもありますが、基本的に整っていれば、それほど神経質にならなくてもよいです。

出血期間は、生理が始まってから出血が完全に終わるまでの日数のこと。日数は3~7日とか5~7日などと言われ、個人差・年齢差があります。この期間内であれば、正常なイメージです。この期間より短いor長い場合は、不調のサインです。生理周期と同じく、今までと比べて経血量が減ったor増えたなどの変化も、不調のサインととらえます。

・生理の悩み① 経血の内容に注目:瘀血・血虚など

経血になにかしらの塊(固形物)が混じるのは、「瘀血(おけつ)」といって、血行が悪い証拠です。瘀血があると、黒く暗めの色の出血になります。瘀血に至る原因はさまざまで、「血液の不足」「冷え」「ストレスで気のめぐりが悪くなる」などでも瘀血になります。それゆえ、「なぜ瘀血になったのか?」は丁寧にひもとく必要があります。

また、血の不足=「血虚(けっきょ)」があると水っぽく薄い経血になります。これもまた、「なぜ血虚になったのか?」をつきとめる必要があります。

・生理の悩み②月経前症候群(PMS):気・血・津液の不足や停滞

月経前のさまざまな症状は、気・血・津液の不足や停滞によって引き起こされます。イライラ・気分の落ち込みといった情緒トラブルの多くは、肝気の滞りが関係しています。中医学でいう「肝」は、自律神経系の調節・精神情緒系の安定をつかさどっています。

そして、本来、「生理は痛くない」のが当たり前です。生理痛がある場合は、痛む時期、痛み方によって体質が分けられ、体質によって治し方もひとりひとり異なります。

・生理の悩み③不正出血の原因:脾気虚・血熱・腎虚・血瘀など

いつもの月経周期内に2回生理がきたら、一方は生理ですが、もう一方は無排卵性の不正出血の可能性があります。不正出血は、脾気虚(ひききょ:消化器系の弱さ)・血熱・腎虚(じんきょ:腎の弱さ)・血瘀(けつお:血行の悪さ)などで引き起こされます。全身症状やその他の婦人科系の症状でどのタイプなのかを見分けます。

また、排卵期出血(中間期出血)といって、生理と生理の間の排卵期あたりの1~3日間、少量の出血をする人がいます。生理的なものと言われていますが、ほかに全身症状や不調があるのならば、治してしまった方がよいでしょう。

悩んでいる不調が、実は生理周期と関係することも

また、生理とは関係ないと思っていた体の不調が、実は生理周期と関係していたというのは、よくあることです。

生活の養生の上でも、生理前はイライラしたり落ち込んだりしやすいから、苦手なことは避けて機嫌よく過ごすようにしようとか、排卵期はだるくなるから、予定を詰め込まずにゆったり過ごそうというように、不調を予測して対処できるようになります。

生理は身体の状態を知るための、大切なサインです。正しい生理を知ったうえで、まずは自分の生理をよく知りましょう!

参考文献:
・田久和義隆(翻訳)、羅元愷(主編)、曽敬光(副主編)、夏桂成・徐志華・毛美蓉(編委)、張玉珍(協編)『中医薬大学全国共通教材 全訳中医婦人科学』 たにぐち書店 2014年
・戦 憲斌 (翻訳)、 張 斉 (翻訳)、 黒竜江中医学院『中医産婦人科の臨床応用―西医の弁病治療と中医の弁証施治の有機的結合へ』 雄渾社 1986年

「薬読」編集部より

「生理痛はない」「PMSはほとんどない」という中医学流の「正常な生理」に驚いた方も多いのではないでしょうか? 生理に悩みを抱える女性はたくさんいますので、今回ご紹介した知識を患者さんから相談を受けた際に役立てることはもちろん、自身の体調管理にも生かしましょう。

 
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中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、国際中医薬膳師、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、管理薬剤師。

薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。 東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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