薬剤師の働き方 公開日:2021.05.25 薬剤師の働き方

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国際的なスポーツ大会で薬剤師が活躍できる、「スポーツファーマシスト」の資格を知っていますか? アスリートの選手活動や地域住民のスポーツ活動を支える重要な役割を持つこの資格は、近年注目が集まっています。薬剤師が「スポーツファーマシスト」の資格を取得する方法と、取得後の活かし方について詳しく解説します。

スポーツファーマシストとはどんな資格?資格取得の方法とやりがい

ポイント

「公認スポーツファーマシスト」は、アンチ・ドーピングの情報提供・啓発を行い、スポーツ競技者や青少年に対し医薬品の適正な使用を促す役割を持つ。アスリートや地域のスポーツ活動を支えるというやりがいがある。薬剤師であれば、講習受講と試験を経て約1年で取得ができることから、近年注目が集まっている。

目 次

1. スポーツファーマシストとは

スポーツファーマシストは、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が認定している資格で、正式には「公認スポーツファーマシスト」と呼ばれます。2009年度から認定制度がスタートし、2021年4月1日現在で1万1,489人の認定者が生まれています。

スポーツファーマシストの使命は、スポーツにおけるドーピングを防止するため、(1)医薬品の適正使用とアンチ・ドーピングに関する情報提供、(2)学校教育の現場におけるアンチ・ドーピング情報を介した医薬品の使用に関する情報提供、(3)地域におけるスポーツファーマシストの存在とアンチ・ドーピング活動の周知、(4)国民体育大会に向けての都道府県選手団への情報提供・啓発活動などを行うこととされています。

スポーツは、気分転換や健康増進に役立つものとして、人々が日常的に楽しみながら行うものですが、競技スポーツともなればその範囲にとどまりません。競技スポーツ選手は日夜厳しい鍛錬を重ね、おのれの限界を超えてパフォーマンスする中で、他の選手よりも一歩抜きん出ようと死力を尽くします。特に国際的な競技大会の場は、選手にとって人生や命運をかけた大舞台です。

このような競技スポーツ選手や指導者に対して、医薬品の適正な使用を促したり、アンチ・ドーピングの情報提供・啓発活動を行ったりすることを通して健全なスポーツ環境を守ることがスポーツファーマシストの役割です。

また処方薬やドラッグストアで販売されている市販の風邪薬やサプリメントの中には、競技大会で規制対象となっている成分が入っていることがあります。そのことを知らずに競技スポーツ選手が摂取したことでドーピング違反になってしまう「うっかりドーピング」が近年問題になっています。薬の専門家としての見地から「うっかりドーピング」を未然に防ぎ競技選手をサポートしていくことも大事な役割です。

2. スポーツファーマシストの資格認定の要件

スポーツファーマシストとして認定されるにはどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。資格取得後に更新をする必要があるのかについても解説します。

2-1. 資格認定の要件とスケジュール

薬剤師がスポーツファーマシストの資格認定を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

<薬剤師のスポーツファーマシストの認定要件>
(1)基礎講習会の受講
(2)実務講習の受講
(3)知識到達度確認試験の合格

実務講習と知識到達度確認試験はオンラインで受講することになります。なお、基礎講習会の受講時点で薬剤師の資格を有していることが大前提となります(年齢は不問)。スポーツファーマシストの資格認定は、例年以下のスケジュールで進められます。

<スポーツファーマシスト資格認定のスケジュール>
・毎年4~5月ごろ:受講者募集受付(受講料7,600円)
・毎年6~7月ごろ:基礎講習会
・毎年11~12月ごろ:実務講習申込受付
・毎年12月~1月ごろ:実務講習、知識到達度確認試験、認定申請(認定料:2万1,000円)
・毎年4月1日:認定

スポーツファーマシストはおよそ1年で取得でき、薬剤師にとっては比較的取得しやすい資格です。スポーツに興味のある方はもちろん、どの資格を取得してみようか迷っている若手薬剤師の方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

2-2. 資格は4年に一度更新する必要がある

スポーツファーマシストの認定資格は4年間有効です。その後も継続して資格を維持するためには毎年実務講習(e-ラーニング)を受講する必要があります。

また資格の更新をするためには、有効期限中の4年目にあたる年に基礎講習(e-ラーニング)、実務講習(e-ラーニング)を受講し、知識到達度確認試験に合格する必要があります。更新の費用として、あらためて受講料7600円と認定料2万1000円が必要となります。

3. スポーツファーマシスト取得の難易度

スポーツファーマシストとして活動するためには、当然のことながら高度な薬学の知識が必要になりますが、だからこそ資格取得のためには薬剤師免許の保持が前提とされています。薬剤師としての知識や経験があった上で、基礎講習会と実務講習を修了し、そこで学んだことを押さえておけば、知識到達度確認試験に合格することはさほど困難ではないでしょう。

ただし、スポーツファーマシスト認定プログラムには募集定員が設定されており、2021年度の場合は2,000人とされています。募集定員を超えた場合は抽選で受講者を決定するとされているので、応募者が多い場合には抽選に落選して資格取得に挑戦できないというケースはありそうです。

4. スポーツファーマシストの資格の活かし方とやりがい

スポーツファーマシストは、主に調剤薬局などに所属し、スポーツの選手(個人)やチームを担当しているドクターと連携し助言するなどして専門性を発揮しています。アンチ・ドーピングの重要性が高まっている中、活躍の場は今後も広がっていくことでしょう。例えば、オリンピックなどの大きな国際スポーツ大会出場を目指す各競技のトップ選手やチーム、指導者をサポートするうえで重要な役割と責任を担います。

例えば、スポーツ関係者が体調不良等によって薬を処方された際、競技種目においてドーピングの規則違反にならないかどうかを確認し、該当する場合は対応を検討したりします。アスリートが存分に力を発揮できるよう、薬の専門家としてサポートするというやりがいがあります。

またスポーツファーマシストの資格を有する薬剤師は、薬局でも重宝されます。処方薬の確認を入念にしたり、日常的に服用する健康食品やサプリメントについて助言したりすることで、部活動に注力する学生たちをはじめとした、地域の人々のスポーツ活動を支えることにも貢献できます。

また、2021年4月現在、スポーツファーマシストの資格を取得している薬剤師は約3%と、まだまだ希少な存在です。同資格を有していない地域の薬剤師から助言を求められるなど、頼られる存在になりそうです。

<参考URL>
・スポーツファーマシスト|公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構

河村武志(かわむら たけし)

編集者。医療系専門出版社で臨床看護誌・看護学習誌・看護学教科書の企画・編集に携わったのちに独立し、編集プロダクション・ナレッジリングを設立。医学書・医療書の製作と医療系ネットメディアの編集に携わる。

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