ブックレビュー

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変革期を迎えた薬業界の問題に専門紙記者がメスを入れる

【書籍概要】

薬業界紙(誌)4社4人の記者が会社の枠を超え薬局、病院の薬剤師、並びに薬局の現状と将来的な展望について語った業界初コラボの書籍。薬剤師を焦点に薬業界が抱える多様な課題について、医薬分業、薬局・薬剤師の本来的な責務、“調剤市場”への新たな参入者、薬局の数、そして病院薬剤師の課題と新たな展開などにフォーカスを合わせ、それぞれの見解や提言、思いを語る。なお、本書最後の座談会形式による“本音トーク”も見逃せない。

COLUMN

薬読 編集部より
今年10月の発売以来アマゾンのカテゴリ別ランキングで連日1位を獲得するなど、薬業界でいま注目されている書籍があります。それが今回紹介する『薬剤師に迫るコペルニクス的“転界”~専門紙記者がみる過去、現在、そして未来~』です。「薬剤師は世の中からどう見られているのか?」「薬業界がいま置かれている状況とは?」について客観的に、ときに辛辣に語られた本書にはこの先薬剤師が生き残るために知っておくべき情報が凝縮されています。本書に込められたメッセージについて、著者の一人である薬事日報社出版委員の髙塩健一氏にご寄稿いただきました。

 
 

節目の年に“医薬分業”を振り返る

 
日本 の「医師」「薬剤師」は、実はそれほど永い歴史があるわけではない。薬剤師は明治22(1889)年に「薬品営業並薬品取扱規則(法律第10号)」に名称とその職能が規定されたのが始まりで、130年の歴史しかない。身分法「薬剤師法」が成立したのは、「医師法」成立から約20年後の大正14(1925)年で95年目。もう少しで1世紀の節目だ。一方、処方箋により薬局が医薬品を販売する、“医薬分業”は実質、昭和49(1974)年の「分業元年」からで46年目。半世紀が経とうとしている。“分業率(処方箋受取率)”は74.0%(2018年度)と当初目標「70%」を超えている。いまや、国民にとって“分業”が当たり前になったにもかかわらず達成感はない。むしろ分業バッシングや薬剤師批判に曝されている。
 
そのような薬剤師・薬局に対するアゲインストが吹き続ける中で、薬業界メディア4社の記者共著による書籍『薬剤師に迫るコペルニクス的“転界”~専門紙記者がみる過去、現在、そして未来~』をこのたび発行させていただいた。同業他社の記者がコラボし、書籍を発行するのは、少なくとも薬業界では初めてのこと。
 
記者のイメージは、公的論議の場に臨み、個別要人と会い話を聞き、「いま」を切り取り読者に伝える―と想像するが、実際、どう見られているのか。当の本人達はよく分かっていない。薬剤師の方々も同様のように思う。「意外に自分のことは分かっていない」ということだろう。
 
そのためか最近、職能団体や薬系学会から口演依頼をいただく機会がある。求められるのは、第三者として薬剤師(薬局・病院)がどう見られているのか、何が求められ、今後どう進んでいくべきか(期待)—などだ。一般紙の社会部記者であれば、痛烈な話を展開するだろうが、我々は、悪く言えば“薬業界寄りのバイアス”が掛かっている。むしろ同じ医療界の住人の医師や看護師、ケアマネなどから話を聞いた方が良いのではないかと正直思う。
 
さて、記者の本分は「文書で伝える」こと。ただ、日々のニュースは古いものから順に儚く消えていく。ならば、報道活動で知り得た公的「第三者」の視点や不満(要望)、自身の認識や思いと事実、将来的な期待など、口下手で語るより、後に残る『本』の形にしたらどうだろう、という考えに至った。ただし、小心者の私は、姑息にも連帯責任者を募り、見事、親交のある3社3人を引き入れた。それから数ヶ月、何度も集まり、メールで情報共有しつつ大筋を固め、取材経験や視点、関心度などを踏まえ個別的テーマの選定、割り振りを行った。2019年2月頃には、各担当のテーマとサブテーマが固まった。なぜ、サブテーマまで決めたかといえば、執筆内容の大筋を相互に確認し、内容の重複をなるべく避けるためだった。
 
少し遡る18年12月。厚労省「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」(制度部会)の報告書で、「医薬分業に関するまとめ」に“医療界の住人”や“国民”からの痛烈な批判が書き込まれた。これは、永らく“分業率”という数値を追い、調剤報酬点数の呪縛にとらわれてきた振る舞いに対する、これまでの公式・非公式批判の“決定打”と映った。

 

 
 

刺激的なタイトルの意図とは?

 
近年の不正請求や偽薬事件など様々な“悪事”をみるにつけ、薬剤師、保険薬局として「大切な何か」を忘れているように映る。ある市民団体代表も、「危機感がない!」と本気で心配する。もはや、視点をガラッと変える「コペルニクス的転回」が必要だ。その思いが書籍タイトルの「薬剤師に迫るコペルニクス的“転界”~専門紙記者がみる過去、現在、そして未来~」へと落とし込まれた。
 
なぜ、“転界”なのか? 行政指導等ではなく、薬剤師自身が患者・国民視点でも問われる「本質業務」を考え、気づき、取り組む。それにより薬剤師を巡る世界も変わり、新たな視界が開けるのではないか。そんな思いが“転界”を生み出した。つまり、この“傲慢”な「書籍タイトル」こそが、我々のメッセージともいえる。
 
サブタイトルには「過去、現在、そして未来」とあるが、過去は“分業”が始まった45年ほど前まで振り返る。その後“分業率”追い、点数の呪縛に捕らわれてきた、と我々が感じる事実や現状、そして第三者の意見等。近年続出した薬歴未記載、付け替え不正請求事件などを背景にした分業バッシング、薬剤師批判の“表の理由”と“裏事情”。“調剤市場”に切り込む新勢力の動向、 “分業”により“対人業務”へシフトし多様化に努める病院薬剤師の姿など―6つの領域にフォーカスを合わせて、それぞれの記者なりの視点や思いなどを盛り込んだ。
 
いま、本当に薬剤師・薬局に対して厳しい視線が向けられている。このままでは、薬剤師が“医療界”から退場せざるを得ない事態も考えられないか。今回触れなかった大学教育も含め、関係者全員の問題でもあると思う。我々のFOCUSが本当に合っているのか、是非、ご自身の眼で確認いただきたい。
 

執筆者代表 髙塩健一

 

髙塩 健一(たかしお けんいち)

薬剤師(1983年取得)。1983年日本大学理工学部薬学科卒、同年薬事日報社入社(編集局)、主に行政取材を約5年担当。その後、医・薬学系学会及び日業薬・病薬を担当。その間、93年創刊の月刊学会情報誌「Medical Academy NEWS」の取材・編集全般を兼務。97年から主に日薬等の職能団体、調剤関連企業・団体等の担当、併せて05年創刊の隔月紙「薬学生新聞」の制作等を兼務。2015年からは出版局・出版委員として時々、代打記者。

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