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薬剤師が健康サポート! 医療用医薬品を詰め合わせた救急箱

薬局・なくすりーな 吉田聡さんが生み出した、病院に行くか迷った時に頼れる薬箱

全国の薬局のユニークな取り組みを一般の人に知ってもらう目的で開催されている「第3回みんなで選ぶ薬局アワード」(一般社団法人 薬局支援協会主催)。受賞薬局の中から、一般の投票で選ばれた“オーディエンス賞”に輝いた茨城県の薬局・なくすりーなの取り組みをご紹介します

処方せんなしで提供できる“医療用医薬品救急箱”

「患者さんや地域のためにがんばる薬局の取り組みを全国のみなさんに知ってほしい」。そんな想いからスタートしたイベント「第3回 みんなで選ぶ薬局アワード」(イベントレポート参照)。特別審査員と来場者の投票によって「最優秀賞」「特別審査員賞」「オーディエンス賞」が選ばれました。

 

そこで今回は、“オーディエンス賞”を受賞した、茨城県古河市にある薬局・なくすりーなの吉田聡さんによる「特許申請中!携帯型医療用医薬品救急箱『ラクスリード』」に注目。誕生までのストーリーを伺いました。

病院の“待ち時間の長さ”に着目

吉田さんが代表を務める薬局・なくすりーなには、内科・消化器外科が隣接されています。生活習慣病から風邪などの感染症、ケガの手術までと守備範囲が広く、非常に評判のよい病院です。

 

しかし、この病院に通う患者さんたちが悩まされているのが「待ち時間の長さ」。薬局・なくすりーなに処方せんをもってくる患者さんの中には、「朝9時にきたのにもうお昼過ぎ…」という人も多いそう。

 

そこで吉田さんは、「待ち時間が長い」という声を聞くたびに、「薬局にある薬で何とかできれば、この患者さんは病院に行かなくていいのに…」と感じていたそうです。

 

「第3回 みんなで選ぶ薬局アワード」でオーディエンス賞を受賞した吉田聡さん

 

「風邪のひき始めや胃腸炎、下痢、腹痛などであれば、市販のお薬で対応できます。それで調子がよくなれば、患者さんは安心して自宅でゆっくり過ごせるはずですよね」(吉田さん)。

 

しかし実際には、病院利用者は後を絶ちません。なぜ市販の薬を頼らず、ちょっと調子が悪いだけで待ち時間が長い病院に行く人が多いのでしょうか? まず、吉田さんは薬局の利用者にアンケート調査を行いました。その結果見えてきたのは、薬に対する以下のようなイメージでした。

■薬に対するイメージ

メリット デメリット
配置薬 辛いときすぐ役立つ 使いたい薬がないことも
市販薬 手軽に買える 高い。処方薬より効き目が緩やか
病院薬 保険が効いて安価・安心  待ち時間が長い。面倒

(薬局・なくすりーな 吉田聡さん調べ) 

「患者さんへのアンケート調査から、配置薬、市販薬、病院薬を比較してみたところ、患者さんの要望が見えてきました。辛いときにすぐ使え、安価で安心、しっかり作用する薬があれば、患者さんたちが使ってくれるはずだと考えました」(吉田さん)

桔梗湯、ロキソプロフェン…患者さんに合わせた薬の救急箱

そこで吉田さんが開発したのが、医療用医薬品救急箱「ラクスリード」です。これは処方せんなしで販売できる医療用医薬品5種類を6回分ずつ詰め合わせたもの。6回分と少量にしたのは、過剰摂取を避けるのが狙いです。

 

患者さんの要望に沿った医療用医薬品を詰め合わせた「ラクスリード」(月額1080円)

 

「のど風邪を引きやすい人には桔梗湯、頭痛持ちの人にはロキソプロフェンなど、薬の内容は薬剤師が患者さんと相談して決めます。調子が悪いときは薬剤師に電話やLINEなどで相談してもらうと、薬を使うか病院に行くかを私たち薬剤師が即座にアドバイス。いわば、薬剤師というスペシャリストのアドバイスが付いたオーダーメイドの救急箱。そんなイメージのサービスです」(吉田さん)

 

「ラクスリード」の利用料は、月額1080円。今年1月から、30〜50代の男女10名にモニターとして利用してもらったところ、「最初はたいしたことがないと思って放置していた足の痛みが夜中に激痛になった。そんなとき頼れる薬があってよかった」「風邪をひいたけれど、忙しくて病院に行く時間がないし、倒れるわけにもいかない。この薬のおかげで持ちこたえられた」などの声が届いたそう。モニター期間が終了した後は全員が「継続して使いたい」と答えているそうです。

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医療費の削減にもメリットが

経済の面から考えても、「ラクスリード」には多彩なメリットがあります。例えば風邪をひいて葛根湯を使う場合。病院にかかると医療費が5460円で、患者さんが支払うのは1640円(3割負担の場合)。市販の葛根湯も税込1600円程度と、ほぼ同等のお金がかかります。一方、「ラクスリード」なら月額1080円以上はかかりません。

 

「より大きな視点から見れば、この小さな薬箱によって年間42兆円超にも上る医療費の削減に貢献できるかもしれません。また、医療機関は医師不足や医師の過重労働という悩みを抱えています。ちょっとした風邪などで病院にくる患者さんが減れば、医師の負担も少しは軽減できるのではないかと考えました」(吉田さん)

課題は法的な問題のクリア

「ラクスリード」を開発するにあたって、吉田さんが一番苦労したのが法律的な問題の有無を確認することでした。

 

「弁護士、厚生労働省、保健所などに計画を相談し、『ラクスリード』の提供が合法であることはすでに認められています。また、万が一副作用が起きたときでも、『医薬品副作用被害救済制度』(Pmda、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の対象になることも確認しました」(吉田さん)

 

さらに、吉田さんは熱く語ります。

 

「薬局にとっても、『ラクスリード』は安心して提供できるサービスです。しかしこれは、私たちだけで推進しても効果はごくわずかですし、限られた患者さんにしか役立てていただけません。ですから、全国の薬局にこの取り組みを採用していただき、薬剤師どうしが連携して、患者さんの健康づくりや医療費削減に一緒に力を尽くしてほしいと思っています」(吉田さん)

他の薬を使用する場面も想定済み

「ラクスリード」を使用中に別の薬が必要になったり、入院することになったりした場合についても想定済みだそう。

 

「『ラクスリード』の容器に薬のリストがついています。別の薬を使う場合は病院などでそのリストを見せてもらえば、相互作用のリスクはないと考えています。利用者には、家族やお子さんの分もほしいという声はありますが、薬の種類や対応人数が増えると薬剤師が管理するのが難しいため、それは今後の課題ですね」(吉田さん)

 

安くて、身近にあって、患者さんに必要な薬の詰め合わせ「ラクスリード」。医療費の削減、患者さんの負担軽減――小さな薬箱は、大きな可能性を秘めています。

 

撮影:政川慎治 取材・文:市原淳子

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