薬剤師の働き方 公開日:2020.12.17 薬剤師の働き方

薬剤師や薬学生に必要な「医療人としての心構え」とは 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

地域医療の担い手として、ますます期待が高まる薬剤師の存在。薬剤師としての役割を果たし存在感を示すためにも、患者さんとのコミュニケーションにとどまらず、他職種と連携して活動の場をより一層広げることが求められています。今回は薬剤師がさらに活躍するために必要な心構えについてお伝えします。

1. 薬剤師に必要な「心構え」とは

文部科学省が公表している『薬剤師として求められる基本的な資質(案)』では、薬剤師としての心構えを「薬の専門家として、豊かな人間性と生命の尊厳について深い認識をもち、薬剤師の義務及び法令を遵守するとともに、人の命と健康な生活を守る使命感、責任感及び倫理観を有する」としています。まずは、薬剤師という仕事が持つ根本的な心構えについて確認しておきましょう。

 

1-1. 患者さんの命にかかわる仕事

薬剤師は患者さんの命にかかわる仕事であることを強く認識しなければなりません。患者さんの命と健康を守るためにも、医療トピックスを積極的に収集し、最新の知識を得ながら薬剤のプロフェッショナルとしてふるまう必要があります。調剤や監査、疑義照会、服薬指導とさまざまな形で患者さんの健康を守るとともに、患者さんとの接し方を常に意識することが大切です。

 

例えば、服薬指導は、伝え方によって患者さんの健康に影響してしまう可能性があり、伝えることの重要性も認識しなければならないでしょう。指導内容が伝わらなければ、患者さんが食前の薬を食後に飲んでしまったり、体の異変に気付いても副作用とは思わずに服用し続けてしまったりする可能性があります。薬剤師の仕事を行ううえで、患者さんの命と健康にかかわる最前線にあるという心構えで日々の業務に向かうことが大切です。

 

1-2. 伝える力・聞き取る力が求められる

薬剤師は、薬や医療の知識だけでなくその情報を伝える力も問われます。患者さんにとって難解になりやすい専門用語での説明をできるだけ避け、わかりやすい言葉で話すといった工夫も必要でしょう。医療職であると同時に、「患者さんの生活に近い存在」という認識を持つことで、選ぶ言葉や伝え方が変わります。

伝える力と同時に聞き取る力も必要です。患者さんの仕事や食生活、趣味、家族などさまざまな情報を集めることで、生活環境に合わせた服薬指導を行うことができるからです。また、他職種からの情報を含めあらゆる情報をもとに一人ひとりの患者さんに寄り添った服薬指導は、患者さんの生活リズムを乱すことなく、患者さんのアドヒアランスを向上させるきっかけにもなるでしょう。より質の高い医療の提供につながるように、人間力を高めることも心がけておきたいものです。

2. 薬剤師に向いている人

薬剤師の根本的な心構えを行動に移せる人は、薬剤師に向いているといえます。ここでは、薬剤師に向いている人について具体的に考えてみましょう。

 

2-1. 常に冷静な行動がとれる

薬剤師の仕事では、常に冷静な判断が求められます。忙しい時でも時間に余裕がある時と変わらない判断力を維持することは、薬剤師として大切なスキルです。冷静に判断しながら調剤のスピードや正確性を保つことは患者さんの満足度アップにつながります。

 

また、忙しい時でもイライラしない人やポジティブな人は、その場にいるだけで明るい雰囲気を生み出したり、安心感をもたらしたりしますので、どんな職場でも求められる薬剤師といえるでしょう。

 

2-2. コミュニケーションスキルが高い

薬剤師の仕事は、狭い空間で長い時間を職場のスタッフと過ごすことが多いので、職場の人間関係は働きやすさに直結する重要な要素になります。人間関係を円滑にするような高いコミュニケーションスキルは職場の雰囲気を良くするので、薬剤師に求められる大切なスキルといえます。また、コミュニケーションスキルの高い薬剤師は患者さんとも信頼関係を築きやすいので、より質の高い医療を提供できます。

 

2-3. 学ぶ姿勢を持ち続ける

医療情報は日々アップデートされています。医療情報とひとことでいっても、新薬や適応追加といった薬の情報だけでなく、関連法の施行や感染症情報、治療指針の更新など、情報の種類は多岐にわたります。常にアンテナを張り、研修への参加やウェブサイトから情報収集を継続するといった前向きな姿勢を持つことは、薬剤師のスキルを向上させるために大切な要素です。

3. 薬学生が実習に臨む前に持っておくべき心構え

薬学生には、現役薬剤師の仕事を見学したり患者さんと接したりする実務実習があります。ここでは薬学生が実習に臨む前に持っておくべき心構えについてお伝えしましょう。

 

3-1. 薬剤師の仕事は患者さんのQOLを高めること

患者さんそれぞれに生活リズムや考え方があるので、一方的に薬の説明をしたところで用法・用量を守ってもらえないことがあります。薬剤師の仕事は、患者さんのアドヒアランスを向上させるためのお手伝いをすること。生活環境によってコンプライアンスを維持することが難しいと感じた場合は、処方内容を見直すケースも少なくありません。処方通りに服用してもらうことは大切ですが、それが難しい患者さんに対してはその理由に寄り添い、状況によっては医師と相談して薬や飲み方の変更を検討しなければなりません。

 

3-2. 実習の姿勢によって学べることが変わる

実務実習では現役薬剤師から指導を受けることになりますが、実習への取り組み方によって学べることが広がるでしょう。好奇心旺盛に気になることをすぐに調べたり、復習して翌日質問したりするといった積極的な姿勢は、先輩薬剤師にとってもよい刺激となり、もっといろいろなことを教えてもらえるきっかけにもなります。先輩薬剤師とより良い関係を築き、幅広い視点で学ぶことで、薬の知識だけでなく他職種との関わり方など、実践に近いことをより深く学べるでしょう。

 

3-3. 実務実習でも守秘義務がある

当然のことですが、実習中に得た患者さんの情報はもちろん、薬局スタッフの情報はすべて個人情報です。個人情報についてSNSなどに書き込むことはプライバシーの侵害につながります。実務実習であっても守秘義務がありますので注意しましょう。

4. 仕事内容(勤務先)別の薬剤師に求められる心構え

臨床現場で働く薬剤師に共通する心構えとともに、職場ごとに心がけたいポイントをまとめました。

 

4-1. 臨床現場で働く薬剤師共通の心構え

薬剤師が働く代表的な臨床現場として、病院や調剤薬局、ドラックストアなどが挙げられます。ここでは臨床現場での共通する心構えについてお伝えします。

・患者さんと話す時は専門用語を使用しない
服薬指導などの際の患者さんに対する言葉には細心の注意が必要です。日頃使い慣れている言葉でも、患者さんにとってはわかりづらいかもしれません。詳しく説明したつもりでも、患者さんに伝わっていなければ正しく服用してもらえない可能性があります。また、難解な言葉でのやり取りは良好なコミュニケーションをとることも難しくなるため、患者さんとの信頼関係も築きにくいでしょう。患者さんと話す時は、なるべくわかりやすい言葉を使用することが大切です。

 

・患者さんと信頼関係を築く努力をする
患者さんと信頼関係を築くことで、アドヒアランスの向上につながります。例えば、「朝食を食べていないので朝の薬は飲んでいない」「飲み忘れがたくさんある」といった患者さんからは言い出しにくいことも、信頼関係が築けていれば薬剤師に打ち明けてくれることがあります。その際には、「飲まないとダメですよ」と相手を否定するのではなく「どうして飲めないのか」を深く聞き取ることが大切です。患者さんは「本当のことを言っても怒らない」「事情を理解してくれる」と感じ、さらに信頼関係が深まるでしょう。

 

・他職種と連携するためのスキルを磨く
これからの薬剤師には、患者さんやその家族だけでなく他職種と連携して地域医療へ参画し、薬剤師としての知識や経験を提供することが求められます。活躍の幅を広げるためにも医療や医薬品に関する情報を把握し、その情報を伝えるためのコミュニケーションスキルを磨きましょう。

 

4-2. 調剤薬局で働く薬剤師の心構え

調剤薬局は、患者さんが医療従事者とかかわる最後の場所です。処方箋のチェックや、医師とのコミュニケーション不足を補う最後の砦ともいえます。薬剤師は患者さんから多くの情報を聞き取り、処方せんの不備がないように完璧な状態で薬を渡すという心構えが必要です。

 

4-3. 病院薬剤師の心構え

病院薬剤師は入院中の薬の管理だけでなく、退院後の患者さんが退院前と変わらない生活を送れるようにサポートすることも大切な仕事のひとつです。入院中には内服の自己管理ができている患者さんも、退院後に同じように服用できるとは限りません。

 

1日3食きっちり食事をとる習慣がなかったり、夜勤がある仕事だったりする場合は、入院中と同じように薬を服用することは難しいでしょう。また、自己管理が難しい患者さんの場合、退院後は、家族やヘルパーなどが薬の管理をサポートすることになります。退院後の生活について情報収集を行いながら、生活環境に無理のない服薬習慣を取り入れるためにも、他職種と連携して患者さんのサポートをするという意識を持つことが大切です。

4-4. ドラッグストアで働く薬剤師の心構え

ドラックストアの薬剤師は、患者さんの症状にあわせて薬を選ぶという、いわば医師のような立場になります。できるだけ最適な医薬品を提案するためにも、症状を聞き取るコミュニケーションスキルと疾患の知識が必要です。症状によっては病院での詳しい検査が望ましいケースもあるため、受診の必要性を判断する力が求められます。

4-5. 製薬会社で働く薬剤師の心構え

>製薬会社で働く薬剤師の仕事は、研究職、開発職、MR職、DI業務、薬事、企業内診療所の薬剤師、生産・品質管理など幅広いものです。それぞれの立場や業務によって具体的な心構えは異なるものの、一人でも多くの患者さんを助けるために薬を開発したり、自社製品をルールに沿って医療従事者が使用できるようにサポートしたりと、結果として患者さんの健康と安全をサポートしています。

 

おくすり相談室の窓口業務や、企業内診療所に所属する薬剤師でないかぎり、患者さんと直接かかわることが少ない仕事ですが、間接的に患者さんと関わっているという心構えで仕事に取り組むことが大切です。

5. 医療人としての心構えを忘れずに

薬剤師の仕事は人の命と健康にかかわる仕事です。そのことを深く認識し、医療人としての高い使命感と倫理観を持って患者さんとコミュニケーションをとることが大切です。

また、薬の専門家として幅広い知識を習得し、薬剤師の視点で地域医療に参画することが求められています。これからの医療分野を担う薬剤師の一人として、初心を忘れず、これからも研鑽していきたいものです。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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