インタビュー 公開日:2021.05.27 インタビュー

在宅医療薬剤師は他職種からどう見られている?【桜新町アーバンクリニック】

医師や看護師、ソーシャルワーカー、介護士などの他職種と連携し、薬剤師が在宅医療の現場で活躍しているという桜新町アーバンクリニック。遠矢純一郎院長のインタビューを紹介した第1回薬剤師のインタビューを紹介した第2回に続き、最終回となる今回は、同クリニック在宅医療部の看護師である船木巳加さん、ケアマネジャー/介護士である大場哲也さん、社会福祉士/精神保健福祉士である染野良子さんに薬剤師との連携についてお話を伺いました。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2017年5月号特集「わたしの在宅医療の取組~薬剤師が在宅医療に参画する意味~」P.11-12を再構成したものです。

看護師・船木巳加さんから見た薬剤師との“連携”

■患者への診療と言う「場」の共有を通して

船木さん 当院では、医師の訪問診療に看護師が同行します。同行では医師の診療の補助をしながら、看護師ならではの視点で患者や家族へアプローチができるよう心がけています。同行看護師として、どのような役割を果たすことができるか、日々悩みながら働いています。

 

桜新町アーバンクリニック 同行看護師・船木巳加さん

 

船木さん 患者が医師へ病状や想いを伝えられているか。医師の説明はきちんと患者や家族へ届いているか。声かけをしながら、伝えきれていない思いや疑問の有無を確認したり、気持ちを聴き取ったりと橋渡し役をすることもあります。また医師が考える治療を、患者の生活スタイルを大切にしながら無理なく実施できているか。地域の訪問看護師やケアマネジャーなど他職種と連携しなから最善を考えています。

■それぞれの役割を知り、連携すること

船木さん このクリニックに来るまで薬剤師との関わりは少なく、仕事内容や役割をきちんと把握していなかったように思います。診療所薬剤師との出会いから、薬剤師の日々の仕事状況や感じていること、悩みを共有できることで必要な情報交換ができるようになり、多方面から患者を知ることへつながっていると感じています。また病状が変わりやすく安定しない場面では、薬剤師の迅速な対応に救われることが多いです。日々の残薬などの薬管理にかかわらず、患者の辛い症状が軽快するために、チームの一員として連携できることが質の良い医療へつながると考えます。今後もより一層協働ができればと思っています。

ケアマネジャー/介護福祉士・大場哲也さんから見た薬剤師との“連携”

■患者・家族とクリニックとの「橋渡し」を

大場さん 現在の役割はおもに介護サービスの調整です。退院前カンファレンスに出ることもあり、その時点から在宅医療、介護サービスがうまく連携していけるように調整します。初回の訪問までに時間がある場合には、先に患者、家族とお会いしてどんな状態なのかを把握し、クリニックのみんなで共有できるようにもしています。

 

桜新町アーバンクリニック ケアマネジャー/介護福祉士・大場哲也さん

 

大場さん 患者の暮らしを考えると、医療だけではまかないきれないことが多くあります。例えば、患者が普段はどんな暮らしを大切にしていて、今後、どう暮らしていきたいかといったところまでは医療だけでは診られない。医師と同行して訪問することで、そういった部分にも目を向け、患者、家族と医師や看護師との「橋渡し」をしていきたいと考えています。

■患者の「暮らし目線」で薬の治療を考える

大場さん 介護は普段の暮らしから患者にアプローチします。お通じ、睡眠、食欲などと薬の関係も気になります。介護福祉士だから気が付く普段の暮らしの変化、それと薬の関係性、残薬や服薬のことなど気がついたことは、すぐに薬剤師に相談しています。クリニックの中に薬剤師がいるので私も安心できますね。例えば、服薬が難しくなってきている患者を院内薬剤師と一緒に訪問すると、暮らしの視点で薬についても考えてくれ、薬の専門家の立場から提案もしてもらえます。そして、訪問服薬指導などのサービスが必要だと判断される場合はその患者ごとのかかりつけの保険薬局と適切な連携をとってくれます。そういった連携ができると、患者、家族により良い在宅医療に貢献できていると感じます。

社会福祉士/精神保健福祉士・染野良子さんから見た薬剤師との“連携”

■患者・家族の「松葉杖」として

染野さん 当初は医療事務職でした。在宅医療の質問や依頼の電話を取り次いでいるうちに、私に知識があればもっとスムーズに在宅医療に移行できる患者がいるはずと思い、社会福祉士の資格を取得しました。今の役割をひと言で示すと、在宅医療を始める前の調整役です。

 

桜新町アーバンクリニック 社会福祉士/精神保健福祉士・染野良子さん

 

染野さん 在宅医療に移行する患者や家族には不安がたくさんあります。お金のこと、治療のこと、最期まで看てもらえるのかという不安……。私は社会福祉士ではなくあえて「相談員」と名乗り、患者や家族の相談窓口になっています。患者や家族を支える「松葉杖」のようでありたいと心がけています。

■患者からの薬の相談は薬剤師と連携して

染野さん 在宅医療に移行する患者には症状が重い方も多く、いかに残された時間を大切に使うかが重要です。病院や外来から在宅医療への移行がスムーズでないと患者も家族も不安になるでしょう。退院前カンファレンスや初回訪問には、私も薬剤師も同行します。院内に薬剤師がいると看護師の負担も減り、その分チーム力がアップします。

 

在宅医療は薬物治療が多いのですが、やはり、薬の説明、服薬の仕方などは薬剤師がきちんと説明することで患者も家族も安心します。患者や家族から「クリニックには薬剤師さんがいますよね」と薬のことを聞かれることも多いです。すぐに院内薬剤師に確認してお答えしています。また、多職種から集まる情報を必要な時に地域のかかりつけ薬局(薬剤師)に伝えてくれるので、患者、家族に安心感をお届けできていると感じています。

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医療情報おまとめ便サービス」特集2017年5月号

3回にわたって在宅医療の現場で薬剤師がどのように活躍しているのか、桜新町アーバンクリニックの取り組みをお届けしました。在宅医療薬剤師の業務内容について詳しく知りたい方は「在宅医療薬剤師の役割とは?チーム医療に不可欠な理由も解説」を続けてお読みください。

 

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