インタビュー 公開日:2022.07.01 インタビュー

介護現場や在宅医療における最適な薬剤選びとは~メディスンショップ蘇我薬局

高齢化が進む住宅街エリアで、介護現場における在宅医療を支援する保険薬局。薬の服用が困難な患者さんが多い中、薬の選択や介護現場への対応をどのように行っているのか、在宅医療を軸に地域に根ざす「メディスンショップ蘇我薬局」にお話を伺いました。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医薬情報おまとめ便サービス」2017年6月号特集「私たちの薬剤選び『ジェネリック医薬品』患者さんに最適な薬はどれだろう?CASE01高齢者向け」P.5-6を再構成したものです。

お話を聞いたのは……
 

メディスンショップ蘇我薬局
千葉県千葉市中央区蘇我2-5-3
管理薬剤師 雜賀匡史先生

介護療養施設や在宅患者の服薬管理が業務の中心

Q.「メディスンショップ蘇我薬局」さんの特徴についてお聞かせください。

管理薬剤師 雜賀匡史先生 (以下同) 近隣に小児科医院がある関係でお子様の患者さんもいらっしゃいますが、基本的には高齢者が多い地域ですので、患者さんも高齢の方が多いです。特に私たちはグループホームや老人ホーム、在宅患者宅の訪問をメインに行っており、外来1に対して在宅9というくらいの比率で在宅医療業務を請け負っている状況です。



管理薬剤師 雜賀匡史先生

 

患者の疾患種別としては認知症疾患の方が一番多いですね。年代は70代・80代の要介護認定を受けている方が主ですが、最近は90代や100歳を超える方もいらっしゃいます。

飲めない原因を追求することが処方提案の一歩

Q.認知症患者などの在宅医療支援をしていく中でどのような薬剤選択を心がけているのでしょうか?

高齢者は認知症、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症など、複数の疾患を併せ持っている方が多いので、1人で何種類もの薬を飲んでいます。それだけ残薬も増えやすく、困ったケアマネジャーさんから相談を受けることが多々あります。
 
それに高齢者は飲み込む力や咳き込む力が衰えてくるので、服用回数や一回量を飲みやすく調整する必要があります。服用回数が多すぎると介護する方の負担も大きくなりますよね。そのため処方提案をする際は、まず飲めない理由を知ることから始めます。回数が多くて飲めないのか、錠剤のサイズなのか、分量なのか…患者さんを訪問した際に必ず原因を見極めるようにしています。
 
その際、食生活で固形のものが食べられるか、嚥下障害がないか、ご家族の介護体制なども含めて確認し、本人、ご家族と相談した上で医師に提案します。

後発品ならではの工夫が、介護現場のニーズと合致

Q.高齢者や認知症の患者さんにとってジェネリック医薬品を利用するメリットとは?

患者さんの中には、錠剤が飲みにくい方や認知症によって薬と認識できず吐き出してしまう方などが多くいます。そんな方にはフィルムタイプのOD錠のような剤型の薬剤が使用できると助かっています。舌の上に乗せるだけでピタッと張り付き、あっという間に溶け出してくれるので、吐き出さず楽に飲んでいただけます。



 

降圧剤や認知症の薬などにもこのようなジェネリック医薬品のOD錠があり、とても重宝しています(※ア・イ)。睡眠導入剤にもOD錠がありますが、これは就寝時に水を汲みにいかなくてもベッドサイドですぐ服用できるのが魅力ですね。以前、これらを認知症家族の会の方に紹介したところ、やはりとても好評でした。
 
外用薬では貼り薬を利用するケースもあります。上腕や背中に貼るだけですので介護する方にも使いやすく安心です。ただ貼り薬は色が目立ちにくく、取り替えるのを忘れることもありますから、外出時に肌着の上から透けて見えるなどの問題がなければ、もう少し目立つ工夫がされるとより便利になると思いますね。
 
また、嚥下障害のあるような方にはゼリー剤もご提案しています。ドライシロップのように味覚的には飲みやすく改良されたものも有効ですが、こちらはお子様に好まれることの方が多いですね。錠剤の場合は、印字錠だけでなく、錠形が普通の丸形でない特徴的な形のものを採用することもあります。
 
在宅の方には一包化調剤(※ウ)が多いですが、これなら落薬をした時も、介護者に錠剤の刻印を読んでもらうことなく、形の特徴で伝えてもらえるので、電話口でも落とした薬を簡単に特定することができます。
 
あるいは、片手でも簡単に半錠に割れるように工夫された錠剤なども患者さんによっては大きなメリットです。やはりジェネリック医薬品の魅力は、介護する方も使いやすく、見やすく、価格も抑えられるところではないでしょうか。

「飲めるようになった」という現場の声を活かして

Q.今後、ジェネリック医薬品に期待することや課題などはございますか?

具体的には、より粒の小さな錠剤やOD錠を可能な限り開発してもらいたいですね。フィルム剤や貼り薬のように先発品にないような剤形のものも、工夫していってもらえると有り難いです。
 
うちは開業当初から後発医薬品調剤体制加算を受けてジェネリック医薬品を積極的に取り入れてきましたが、それはジェネリック医薬品の方が患者さんに合うものが多く、飲めなかった状況の改善に役立たせることができたからです。
 
ですが、ジェネリック医薬品は先発品と比較して医薬品情報が少ないという課題があり、効き目について懐疑的になる患者さんもいます。それに、ジェネリック医薬品といっても先発メーカーにはない付加価値を工夫する会社もあれば、先発メーカーの色、形、大きさを忠実に再現する会社もありますし、最近では、先発メーカーからジェネリック医薬品より使いやすく改良されたものも発売されています。
 
ですから、日々情報収集に努めながら製剤見本を取り寄せるなどして薬剤選択や服薬管理に役立てていきたいと思います。

 

<お話の中で出てきた薬の一例>
 

※ア
製造販売元:救急薬品工業株式会社
販売元:株式会社ビオメディクス
アムロジピンODフィルム2.5mg「QQ」

※イ
エルメッド エーザイ株式会社
ドネペジル塩酸塩
ODフィルム5mg「EE」

※ウ
株式会社陽進堂
ナフトピジル
OD錠50mg「YD」

 

 

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医薬情報おまとめ便サービス」特集2017年6月号

 
 

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