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薬剤師のパートとしての働き方【仕事内容・やりがい・時給・キャリア】 文:加藤鉄也(研修認定薬剤師、JPALSレベル6)

プライベートとキャリアの両立がかなう、メリットが多い勤務形態

ライフスタイルが多様化するなか、希望する時間帯に短時間で働けるパート勤務に働き方をシフトする薬剤師もいます。育児や介護に時間を使いたい方やプライベートを重視したい方にとってメリットが大きい勤務形態ですが、やりがいや給与面の実態が気になるのではないでしょうか。今回は、パート薬剤師の働き方の特徴と収入事情について紹介します。

1. パート勤務の薬剤師とは

パートタイム勤務は、正社員に比べて勤務時間が短く、出勤日数が少ない働き方です。ライフステージによって家事や子育て、家族の介護などを優先したい時期や、体調面を考慮して働きたい、プライベート時間を確保したいといった理由がある場合、パートタイム勤務は有効な選択肢といえるでしょう。

企業側としても、多忙な時間帯に短時間だけ経験豊富な薬剤師の力を借りたい、といった理由から、スキルを持つパート勤務薬剤師を求める傾向があります。正社員として働けるほどの時間的余裕がなかったり、残業時間や薬局を管理する立場として責任を負うことが難しかったりする場合でも、薬剤師の資格を活かしながら働くことができるのがパート薬剤師の魅力です。

 

1-1. 派遣薬剤師との違い

パート薬剤師と似た働き方として、「派遣薬剤師」があります。派遣は派遣会社と雇用契約を交わしたうえで、派遣先の企業に勤務する働き方です。薬剤師の派遣先には、ドラッグストアや病院、調剤薬局などがあり、派遣会社から給与が支給され派遣会社の社会保険に加入することになります。一方、パート薬剤師は、勤務先からの直接雇用であり、勤務先から給与が支払われて勤務先の社会保険に加入するという違いがあります。

 

また、派遣薬剤師、パート薬剤師ともに有期雇用ですが、派遣薬剤師は数カ月~1年程度に1度、契約更新のタイミングがやってきます。契約更新のタイミングでは自動更新となるケースが多いですが、企業側から更新しない旨が伝えられることもあり、また労働者側も更新しない旨を派遣会社を通じて申し入れることができます。一方パート薬剤師には、とくに定めがないかぎり契約更新などはありません。

 

なお、派遣、パートともに雇用期間が通算で5年を超える場合、無期雇用に切り替えることができるようになります。ただし、無期雇用に切り替えることができるのは雇用先であり、つまり派遣薬剤師は派遣元企業、パート薬剤師は勤務先です。また、派遣には同じ派遣先で3年を超えて勤務することはできないという「3年ルール」がありますが、派遣元で無期雇用に切り替わった場合は派遣期間の制限はなくなります。

 

直接雇用となるパートは、勤務先との交渉によって勤務時間や休日の設定を行い、転勤や残業の有無についても、直接希望を伝えられるという利点があります。ただし、職場によって条件が異なるため、募集要項を確認し、面接の際に相談しておくとよいでしょう。

 

1-2. パート薬剤師の勤務時間と社会保障

2020年4月1日から「同一労働同一賃金制度」が施行され、待遇や賃金格差の解消が進むことになります(中小企業は2021年4月1日より施行)。これにより、同じ職場で同じ内容の業務を担当する者は、パートであっても正社員と同じ待遇になります。

 

これにより平均的な待遇格差は解消されるもの、労働時間の異なる正社員となにもかも同じように福利厚生が利用できるとはかぎりません。例えば、パート勤務者の社会保険加入は、週30時間以上の勤務がある場合、または以下の条件に当てはまる場合とされています(学生は除外、また従業員数が501人以上または従業員数が500人以下で社会保険の加入について労使で合意がなされている場合)。

 

① 所定労働時間が20時間以上
② 月額賃金8.8万円以上
③ 勤務期間1年以上見込み

政府広報オンラインより

 

個人で加入したい場合は、加入条件を満たす働き方になっているかを確認しておくことが大切です。配偶者の扶養内で働きたい場合は、希望する勤務時間と収入の範囲を見極めたうえで、職場探しをおこないましょう。

 

また、労働基準法により、半年間継続して雇用されており、かつ、全労働日の8割以上を出勤していれば、年次有給休暇を取得できます。ただし、取得できる日数については継続勤務年数や週あたりの労働日数などによって異なります。厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト」を確認しながら、取得可能な有給休暇日数を把握しておきましょう。

 

 

2. パート薬剤師の働き方・仕事内容

病院、調剤薬局、ドラッグストアと、さまざまな現場で、パート薬剤師が活躍しています。それぞれの職場における、パート薬剤師の業務内容や働き方を見てみましょう。

 

2-1. 病院のパート薬剤師

病院薬剤師は、調剤や監査、服薬指導や病棟業務など、幅広い業務を行います。パート薬剤師が主に担当するのは、調剤業務になるでしょう。錠剤や外用剤のピッキングや一包化、注射剤の混合といった調剤業務に加え、患者さんが入院するときには持参薬をチェックし、処方薬の整理、病院採用薬との置き換えなどを担当することもあります。また、手術前に休止が必要な薬剤などの管理もします。おおむね正社員と変わらない業務内容です。

 

服薬指導は入院中の患者さんのベットサイドで薬の説明、副作用や薬効のモニタリング、外来での服薬指導などを行います。他にも医薬品の品質管理や在庫管理、DI業務、ご自身の希望によって、勤務先の了解が得られれば緩和ケアチーム、栄養サポートチーム、感染対策チームなど院内委員会に参加することもあります。勤務先によっては子育て中の薬剤師が安心して働けるように託児所を完備しているケースもあります。

 

 

2-2. ドラッグストアのパート薬剤師

ドラッグストアに勤務するパート薬剤師は、一般医薬品の販売がメイン業務となるでしょう。特に、第一類医薬品や要指導医薬品は、薬剤師にしか販売することができない医薬品であり、パート勤務であっても接客等を担当しながら対応します。治療中の病気や服用中の医療用医薬品などに注意を払いながら薬の販売や説明を行うのも大切な仕事です。

 

そのほか、サプリメントや栄養補助食品、機能性表示食品などの健康食品、化粧品などの美容ケア商品の販売にも携わります。また、病気や薬、サプリメント、美容、介護など、さまざまな健康相談や介護相談を受けることもあるでしょう。

シフト管理といったマネジメント業務を担当することはほとんどありませんが、その他は正社員の薬剤師と同じような業務になります。日常業務として商品の品出しや、レジ対応、POP作成、売り場のレイアウト作成、季節商品の選定などの業務を行います。調剤併設店では処方箋調剤がメインとなることもあるでしょう。

 

ドラッグストアでは、パートであっても土日の出勤を求められるケースがよくあります。また、24時間営業の店舗では、夜間のパート勤務という選択肢もあります。夜間のパート勤務は日中に勤務するよりも賃金の水準が高いため、夜間の勤務が苦にならない薬剤師にとっては魅力的な働き方といえます。働きやすい条件を考えたうえで、自分に合った職場を探しましょう。

 

 

2-3. 調剤薬局のパート薬剤師

調剤薬局では、調剤、鑑査、服薬指導、在宅、一般用医薬品の販売などを行います。錠剤や外用剤、散剤、軟膏などの計数調剤や計量・混合、一包化などの調剤をします。用法用量や禁忌事項の確認はもちろんのこと、併用薬や原疾患、副作用歴などの患者背景をもとに処方監査を行い、必要に応じて疑義照会を行います。

 

服薬指導では処方薬の使用方法や副作用などの注意事項の説明、場合によっては健康相談などに応じたりします。調剤や服薬指導が主な仕事となりますが、希望によっては在宅業務に携わることも可能です。

 

 

3. パート薬剤師のやりがい

勤務時間の違いはあるものの、薬剤師としての知識や専門的なスキルを活かせるのはパート薬剤師も正社員と同じです。続けて、パート勤務ならではのやりがいを見てみましょう。

 

3-1. 勤務日や時間が比較的自由

正社員の場合、月曜日から土曜日までの間で週5日、9時から18時まで勤務といった固定シフトが一般的です。一方で、パート薬剤師は勤務時間の融通がききやすいのが大きなメリットです。「子どもが幼稚園や小学校に行っている時間だけ働きたい」、「週3日だけ働きたい」、「水曜日と金曜日は習い事があるので、他の曜日に働きたい」といった希望もかないやすいでしょう。プライベートと仕事を両立できるため、モチベーションを維持しながら働く環境が作れます。

 

3-2. 転勤や異動がほとんどない

大手チェーンの調剤薬局やドラッグストア、全国に病院展開をする医療法人などに勤務する正社員は、異動や転勤が発生することがあります。しかし、パート薬剤師の場合、転勤や異動になる可能性は少なく、自分の住み慣れた地域で働くことが可能です。慣れた職場で働き続けられるため、将来的な人生プランが立てやすく、前向きな気持ちで仕事に臨めます。

 

3-3. プライベートとキャリアの両立ができる

子育てや家事に追われていると、今後の人生もこのまま続いていくのか不安になってしまうことがあるようです。家庭もちろん重要ですが、自分自身のライフワークという観点からは、少し物足りなさを感じてしまうかもしれません。しかし、パート薬剤師として仕事を続ければ、ブランクを作ることなくキャリアの維持が可能です。また、服薬指導や健康相談などを通して、患者さんの健康に貢献できるのも、大きなやりがいになります。患者さんとの会話を通して感謝の言葉を聞くこともあり、社会貢献をしていることを実感できるでしょう。

 

4. パート薬剤師の厳しさ

勤務時間の融通がききプライべートを大切にできる一方で、パート勤務には厳しさを感じる場面もあります。

 

4-1. 正社員ほどの福利厚生や給与は望めない

雇用する側がパート薬剤師を採用する理由のひとつに「人件費の削減」があります。そのため、本人が「もう少し長く働きたい」と思っていても、希望よりも短時間の勤務になることがありえます。また、勤務時間を短縮しすぎると、有給休暇や社会保険などの福利厚生面でも制限がかかってしまう可能性があるので注意が必要です。同様に、働く時間が短くなるほど、自分が望んでいる収入が得られない可能性があります。

 

4-2. 業務に対する裁量が少ない

パート薬剤師は、重要な役職につくことはほとんどありません。店舗の方針をきめたり、薬局や薬剤部のやり方を決めたりするのは主に正社員であり、パート薬剤師は決められた仕事をこなしていくことが多いでしょう。「同一労働同一賃金制度」の施行により、以前と比べて責任が大きくなる可能性がありますが、勤務時間の長い正社員と比べれば、やはり役職に就きにくいのも事実です。

役職に就きにくいということは、「もう少し効率的なやり方があるのではないか」と思っていても、意見が受け入れられなかったり、正社員への相談が必要だったりして、意思決定プロセスでストレスを感じやすい状況になるかもしれません。

 

5. パート薬剤師の時給

パート薬剤師の時給が気になる方も多いでしょう。厚生労働省が発表した「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均時給は2,382円です。全都道府県のなかで最低賃金がもっとも高い東京都でも時給1,032円であり(2020年5月時点)、薬剤師資格なしでのドラッグストアのパート勤務は時給1,000~1,300円程度が相場ですから、一般的なパート勤務の時給よりもはるかに恵まれた時給を得ていることがわかります。

また、年間賞与やその他特別手当は、平均で約132万円です。時給や賞与は、勤務する地域や時間帯、勤務時間数などの条件によっても変わってきますが、一般の職種に比べてパート勤務でも十分な給与を得られます。

 

なお、調剤薬局やドラッグストアの求人数に比べて、病院のパート薬剤師の求人は少ない傾向にあります。

 

 

6. パート薬剤師のキャリア

希望に合わせて勤務時間を設定できる働き方は、パート薬剤師のメリットのひとつです。パート薬剤師は副業が認められているケースも多く、複数の薬局を掛け持ちしてスキルを磨くというキャリアアップの方法もあります。また、病院、ドラッグストア、調剤薬局などのパート募集は、資格があることを前提にして現場未経験歓迎の場合も多く、未経験業務への挑戦も比較的容易です。パート薬剤師としてのメリットをいかしながら、たくさんの経験を積んでみてはいかがでしょうか。

 

パート薬剤師は正社員に比べて、勤務時間や勤務地の選択肢が広く、短時間で効率よく収入を得られるというメリットがあります。職場での裁量や収入面でのデメリットはありますが、自分のライフプランと照らし合わせたうえで、働きやすい職場の選択肢のひとつとしてパート勤務を検討してみてはいかがでしょうか。


執筆/加藤鉄也

薬剤師。研修認定薬剤師。JPALSレベル6。2児の父。
大学院卒業後、製薬会社の海外臨床開発業務に従事。その後、調剤薬局薬剤師として働き、現在は株式会社オーエスで薬剤師として勤務。小児、循環器、糖尿病、がんなどの幅広い領域の薬物治療に携わる。医療や薬など薬剤師として気になるトピックについて記事を執筆。趣味は子育てとペットのポメラニアン、ハムスターと遊ぶこと。

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