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登録販売者とは?薬剤師との違いと仕事内容、資格取得の方法を解説 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

登録販売者試験の受験者数は、2015年度を境に年々増え続けています。2015年度は49,864名だった受験者数は、2019年度には65,288名に増加。2014年度の31,362名に比べると2倍以上の受験者数です(厚生労働省「登録販売者試験実施状況」平成26年度平成27年度令和元年度より)。受験者が増えている背景としては、2015年4月に施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」によって、登録販売者試験の受験資格が緩和されたことが大きいでしょう。さらに、2017年1月より政府が「セルフメディケーション税制」を創設したことも影響していると考えられます。

 

今後は薬剤師と登録販売者がそれぞれの役割を果たしながら地域医療に貢献することが求められるのではないでしょうか。今回は、薬剤師が知っておきたい登録販売者を取り巻く環境や、薬剤師と登録販売者の違いについてお伝えします。

1. 登録販売者資格ができた経緯

登録販売者制度が始まる前は、旧薬事法に基づき薬剤師か薬種商が一般用医薬品のリスクについて情報提供を行い、販売を行っていました。しかし、薬剤師不足により、薬剤師の不在時に販売できない一般用医薬品があることや、使用上の注意などを充分に説明できないといった課題が浮上していました。時期を同じくして、薬学教育が6年制となり、薬剤師は調剤だけでなく創薬や研究・開発などに幅広く活躍できるスペシャリストとしての役割を求められるようになりました。

 

そうした背景もあり、2009年の改正薬機法により「登録販売者制度」が新設され、医薬品の販売業務を専門に行う登録販売者資格が誕生し、薬種商は廃止となりました(都道府県に申請して登録販売者となる経過措置がとられた)。同制度によって調剤業務と販売業務の切り離しができるようになり、薬剤師の業務負担軽減につながっただけでなく、薬のスペシャリストとしての業務に注力できるようになりました。

 

また、近年では、健康の維持増進や疾患の予防を自己管理する「セルフメディケーション」が推奨されるようになっており、こうした消費者のニーズに対応するためにも登録販売者は重要な存在といえます。

 

2. セルフメディケーションとは

セルフメディケーションは、世界保健機関(WHO)において「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。政府も、医療費の増大をできる限り抑えつつ「国民の健康寿命が延伸する社会」を実現するために、セルフメディケーションの推進を重要視しています。

 

そういった背景から、2017年にセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)が創設されました。健康寿命を延ばすためには、病気の予防に加え、食生活などの生活習慣についても自己管理が必要になります。薬剤師や登録販売者には、医薬品に限らず健康に関するあらゆる知識を習得し、健康についての身近な相談役として患者さんから相談されやすい環境を整えることが求められています。

 

2-1. セルフメディケーション推進の効果

ドラックストアなどの販売店には、医療用医薬品と同成分の一般用医薬品(スイッチOTC)も販売されています。病院に通う時間がない患者さんや医療費を節約したい人、あるいは旅行先で一時的な体調不良や軽い症状を緩和したい時に、スイッチOTCを利用することで、病院で処方される医療用医薬品と同等の効果の薬を使用することが可能です。一般用医薬品の利用が増加することで、国民医療費の削減が期待できます。

また、スイッチOTCの増加に伴い、薬剤師や登録販売者による情報提供の頻度が増えることも考えられます。一般用医薬品を扱える登録販売者は、薬剤師が調剤に専従するためにも必要な存在ともいえるでしょう。

 

2-2. スイッチOTCとは

スイッチOTCとは、医療用医薬品から一般用医薬品として切り替えた医薬品のこと。医療用としての使用実績があり、医師の指導監督がなくても重篤な状態になる恐れがなく、安全性や有効性が一定の基準を満たした医薬品がスイッチOTCとして認められます。

 

ただし、スイッチOTCを販売する際には、医療用医薬品や一般用医薬品を複数服用することによる重複投与の可能性を考慮し、注意を促す必要があります。また、スイッチOTCの服薬で症状が改善しない場合は、医療機関を受診するようアドバイスすることも大切です。スイッチOTCのように知識が必要な医薬品を扱う以上、薬剤師だけでなく、登録販売者も「薬の専門家」としての知識や経験が求められます。

 

3. 薬剤師と登録販売者の違い

医薬品の販売に関わるという点では、薬剤師も登録販売者も同じ立場です。では、どのような点が異なるのでしょうか。ここでは薬剤師と登録販売者の違いについて項目別に解説します。

 

3-1. 資格の違い

薬剤師は、薬学部で6年間学び、国家試験に合格することで取得できる国家資格です。代表的な仕事は、医薬品の情報提供や販売などに加え、調剤に従事することでしょう。

 

一方で、登録販売者は、第1類医薬品を除いた一般用医薬品の販売やアドバイスを行うことができる公的資格です。ドラックストアやスーパーなどで一般用医薬品を販売することができます。

 

3-2. 資格取得方法の違い

薬剤師の資格を取得するためには、国家試験を受験するための要件である「6年制の薬学課程を修めること」を満たさなければなりません。一方の登録販売者は、各都道府県で実施されている登録販売者試験に合格し、従事する店舗がある都道府県に登録販売者販売従事登録をすることで、登録販売者として働けます。

 

登録販売者試験は各都道府県で1年に1回実施されており、各ブロックによって実施日や試験内容、申し込みのタイミングが異なることから、複数県で受験することも可能です。合格基準は全体の正答率の7割程度と定められており、さらに都道府県ごとに各試験項目の正答率を定めています。

 

 

3-3. 登録販売者の受験資格と管理者・管理代行者になるための条件

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(2014年厚生労働省令第92号)が2015年4月1日に施行され、登録販売者試験の受験資格が緩和されました。

 

それまでは学歴によって実務経験年数が定められていましたが、必須要件が廃止され、年齢や学歴・経験を問わずに受験できるようになりました。ただし、上位資格となる管理者や管理代行者になるためには、過去5年間のうち2年間は、管理者や管理代行者の管理・指導の下に業務に従事しなければなりません(登録販売者として登録する前の実務経験と通算して2年以上)。また、管理者や管理代行者の要件を満たす登録販売者と、それ以外の登録販売者を名札で区分するなど、新たに定められた規定があります。

 

3-4. 仕事内容の違い

薬剤師の主な仕事は、調剤薬局や病院、ドラックストアなどにおいて医薬品の調剤や販売に従事するというものです。そのほか、製薬会社などの企業で医薬品の研究や開発、営業に携わったり、公務員や学校薬剤師として公的機関で働いたりと、幅広い職種で資格が生かせます。

一方で、登録販売者は、一部を除いた一般用医薬品の販売に従事するのが業務であり、医療用医薬品の調剤を行うことはできません。一般用医薬品は次の3種類に分かれ、登録販売者が扱うことができるのは、第2類医薬品と第3類医薬品に限られます。

 

<一般医薬品の種類>

・第1類医薬品

副作用等により日常生活に支障をきたす程度の健康被害を生ずるおそれがある医薬品であって、その使用に関し特に注意が必要なもの

・第2類医薬品

副作用等により日常生活に支障をきたす程度の健康被害を生ずるおそれがある医薬品

・第3類医薬品

第1類および第2類以外の一般用医薬品

 

厚生労働省「一般用医薬品のリスク区分」より

 

登録販売者は薬を販売するだけでなく、使用方法や症状に合わせた薬のアドバイスなどを行うため幅広い知識が必要です。

 

3-5. 年収の違い

2020年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は548.3万円)。登録販売者の平均年収は調査されていないため具体的にはわかりませんが、資格保有者は資格手当や登録販売者手当、副店長からのスタートなど待遇に差が出ることがあるようです。登録販売者はドラックストアやスーパーで扱う一般用医薬品の多くを管理することができるため、店長候補として採用されることもあります。他にも一般用医薬品を扱うコンビニや通販サイトなど企業によって資格手当が異なり、就職先によって年収が変わります。

 


 

3-6. 役割の違い

薬剤師と登録販売者が大きく違うのは、「扱える薬の種類が異なる」点にあります。薬剤師は全ての医薬品を扱うことができますが、登録販売者は一般用医薬品の第2類、第3類に限定されており、医療用医薬品や第1類医薬品の販売はできません。しかし実際には、第2類医薬品は約7,300点、第3類医薬品は約2,746点存在しているのに対して、第1類医薬品の商品数は約120点に留まっています(2020年11月8日時点。JAPIC医薬品情報データベース)。登録販売者は、計1万種類以上の一般用医薬品に加え、ドラックストアなどで販売される多くの医薬部外品なども管理しながら、情報提供することが大きな役割です。

 

一方、薬剤師は、薬剤師法第一条により「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」と定められています。登録販売者が販売を前提に一般用医薬品を扱うのに対し、薬剤師は医療用医薬品や一般用医薬品を販売するだけでなく、地域住民の健康づくりに寄与するという役目があります。

 

3-7.やりがいの違い

薬剤師は患者さんだけでなく医師や看護師など多職種と連携し、患者さんの環境に合わせた医療を提供するスキルが求められます。勤務地によって、入院患者さんの治療に関わることもあれば、在宅の管理を担当することもあります。それぞれの状況は違っても、チーム医療に取り組むことでやりがいを感じる場面も多いでしょう。

登録販売者は患者さん自身で行う健康管理をサポートできるように、症状を聞き取り医薬品の薬効や注意事項などの情報を提供するのが主な仕事です。登録販売者は、個々に合わせた薬を提案できる点でやりがいを感じられるでしょう。

4. 薬剤師と登録販売者の職能を生かした協力体制が求められる

薬剤師の仕事であった医薬品販売のうち、第2類医薬品と第3類医薬品の販売を登録販売者に任せることで、薬剤師の役割である調剤や服薬指導といった業務に集中できるようになります。それぞれの職能を生かしてお互いにサポートし合えれば、業務の効率化が期待できるでしょう。お互いの役割を尊重しながら、より質の高い医療を提供できる仕組み作りを目指したいものです。

 


 

(※)年収額は、厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」より「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他の給与額」で算出


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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