薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.06.18 薬剤師のスキルアップ

登録販売者とは?資格の取得方法や試験概要・仕事内容などを解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

一般用医薬品のインターネット販売が解禁されたことにより、セルフメディケーションがより一層推進されています。一般用医薬品の一部を販売できる登録販売者は、国民のセルフメディケーションをサポートする重要な役割を担っています。この記事では、登録販売者の概要や薬剤師・調剤薬局事務との違いを解説するとともに、登録販売者になるために必要な資格試験や仕事内容、年収について紹介します。また、登録販売者の就職・転職先や将来性についてもお伝えします。

1.登録販売者とは?

登録販売者とは、ドラッグストアや薬局などで扱われる、第2類および第3類医薬品を販売できる専門家のことです。ドラッグストアや薬局を利用する人に向けて、一般用医薬品の提案や購入する際のアドバイスなどを行います。現時点で一般用医薬品は次の3区分に分かれており、それぞれ対応できる専門家に違いがあります。

 

■ 一般用医薬品の種類
一般用医薬品 規定 対応する専門家
第1類医薬品 ● 副作用等により日常生活に支障をきたす程度の健康被害を生ずるおそれがある医薬品であって、その使用に関し特に注意が必要なもの
● 新一般用医薬品として承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの
薬剤師
第2類医薬品 ● 副作用等により日常生活に支障をきたす程度の健康被害を生ずるおそれがある医薬品
【指定第2類医薬品】
● 第2類医薬品のうち、特別の注意を要するもの
登録販売者
または薬剤師
第3類医薬品 ● 第1類および第2類以外の一般用医薬品 登録販売者
または薬剤師

参照:一般用医薬品のリスク区分|厚生労働省

 

なお、2024年1月に公表された「医薬品の販売制度に関する検討会」のとりまとめでは、一般用医薬品の現時点での販売区分が、国民にとって分かりにくい内容であることを課題としています。
 
そのため、3区分となっている一般用医薬品を、「薬剤師のみが販売できる一般用医薬品」「薬剤師と登録販売者が販売できる一般用医薬品」の2区分に変更することが検討されています。
 
参照:登録販売者を目指している方|公益社団法人全日本医薬品登録販売者協会
参照:「医薬品の販売制度に関する検討会」の「とりまとめ」 を公表します|厚生労働省

 

1-1.薬剤師との違い

薬剤師の資格を取得するためには、6年制の薬学部への入学・卒業によって国家試験の受験資格を得て、さらに国家試験に合格する必要があります。一方で、登録販売者は、学歴を問わず誰でも資格受験できるため、薬剤師と比較して取得しやすい資格といえます
 
また、薬剤師は全ての医薬品を扱えますが、登録販売者は第2類、第3類医薬品のみの対応であり、第1類の販売や、医師から処方された医薬品の調剤はできません。
 
登録販売者は、薬剤師と比較して扱える医薬品に制限があるものの、一般用医薬品の多くが第2類または第3類医薬品です。登録販売者の資格を取得すると、ドラッグストアや薬局などで、薬剤師に代わって一般用医薬品の一部を販売することができます。

 
🔽 薬剤師になる方法について解説した記事はこちら

 

1-2.調剤薬局事務との違い

調剤薬局事務とは、調剤薬局に来局した患者さんの受付やレセプト業務などを行うスタッフのことです。調剤薬局事務には、調剤事務管理士といった民間資格がありますが、資格の有無に限らず働くことができ、仕事を通して医薬品や医療保険などの知識を身に付けられます。
 
しかし、実際の業務は薬局内の事務に該当するため、登録販売者と同じように利用客の相談に乗ったり、市販薬購入のアドバイスや販売をしたりすることはできません。
 
参照:調剤事務管理士®技能認定試験|JSMA 技能認定振興協会

 
🔽 調剤薬局事務について解説した記事はこちら

2.登録販売者の資格取得から就業までの流れ

登録販売者の資格取得には、まず登録販売者試験へ合格する必要があります。さらに、就業するためには、販売従事登録をしなければいけません。続いて、登録販売者試験の概要や応募資格、販売従事登録についてお伝えします。

 

2-1.登録販売者試験に合格する

登録販売者試験は、年1回都道府県ごとに実施されます。都道府県によって願書の提出期日や試験日が異なり、上述したように、学歴や実務経験などに関わらず、誰でも試験を受けることができます
 
試験問題は5項目に分かれており、それぞれ問題数と試験時間が定められています。

 

■ 登録販売者試験の概要
試験項目 出題数 配分時間
医薬品に共通する特性と基本的な知識 20問 40分
人体の働きと医薬品 20問 40分
主な医薬品とその作用 40問 80分
薬事関係法規・制度 20問 40分
医薬品の適正使用・安全対策 20問 40分
合計 120問 240分

 

合格基準は、総出題数に対して7割程度の正答率であり、項目ごとに一定以上の正答率が求められています。各項目の正答率の基準については、都道府県にゆだねられていますが、3.5割以上としている都道府県が多いようです。
 
登録販売者試験の合格率は、全国平均で2020年度が41.5%、2021年度が49.3%、2022年度が44.4%、2023年度が43.4%でした。実際には都道府県によって試験問題が異なり、2023年度の合格率は20%前後から50%以上まで幅があります。そのため、難易度にも違いが出るのではないか、と考える人もいるかもしれません。
 
試験問題は基本的に厚生労働省が提示する「試験問題作成に関する手引き」をもとに作成されます。受験者数などにも違いがあるため、合格率で難易度を測るのは難しいでしょう。登録販売者試験に合格するには、受験する都道府県の過去問を解き、出題傾向を把握することが大切です。
 

参照:登録販売者試験の実施について 平成19年8月8日|厚生労働省

参照:登録販売者制度の取扱い等について 令和5年3月31日|厚生労働省

参照:これまでの登録販売者試験実施状況等について|厚生労働省

参照:登録販売者試験問題作成に関する手引き|厚生労働省

 

2-2.就業には販売従事登録が必要

登録販売者として働くためには、従事する薬局やドラッグストアを所管する都道府県で販売従事登録をする必要があります。都道府県のホームページに、申請書や必要書類が記載されているため、登録販売者試験に合格したら確認しましょう。

 

● 販売従事登録申請書
● 登録販売者試験合格通知書
● 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍記載事項証明書、本籍の記載がある住民票の写し、本籍の記載がある住民票記載事項証明書のいずれか1つ
● 使用関係を証する書類
● 精神の機能の障害に関する医師の診断書(※原則不要)

参照:登録販売者販売従事登録について|東京都保健医療局

 

都道府県のホームページに記載されている書類と登録料を用意し、申請を行います。
 
また、実務経験については、受験時には必要ありませんが、就業する際には考慮されます。過去5年間のうち実務経験が通算2年未満の登録販売者については「研修中」の扱いとなり、名札等に研修中であることが分かるよう記載しなければなりません。
 
なお、過去5年間の実務経験が以下の場合、店舗管理者を担うことができます。

 

● 通算2年以上の実務経験がある
● 通算1年以上の実務経験、かつ、規定の研修を修了している

 

また、過去に店舗管理者の経験を持っており、通算1年以上の実務経験がある登録販売者についても、店舗管理者になることができます。
 
参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について 令和5年5月31日|厚生労働省

3.登録販売者の仕事内容

登録販売者は、一般用医薬品のうちの第2類、第3類医薬品の販売に対応できるのが大きな特徴です。なお、登録販売者は第2類、第3類医薬品を販売する際、以下の対応をしなければなりません。

 

● 危害発生防止に必要な事項の情報提供
● 個別の情報提供
● 受診勧奨
● 情報提供等を行った専門家の氏名の伝達

 

登録販売者は第2類、第3類医薬品を販売するだけでなく、使用方法や症状に合わせた薬のアドバイス、場合によっては医療機関への受診を促す必要があります。職場によって仕事内容が異なるため、詳しくは後述の「登録販売者の就職・転職先」でお伝えします。
 
参照:一般用医薬品のインターネット販売について|厚生労働省

4.登録販売者の年収

2023年に実施された「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、保険薬局における管理薬剤師の平均年収は約735万円、薬剤師は約486万円、事務職員は約283万円、その他の職員は約303万円です。
 
参照:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和5年実施-|中央社会保険医療協議会
 
登録販売者に限定した平均年収は調査されていないため、具体的には分かりませんが、保険薬局で働く職員として、薬剤師以外に調剤事務や栄養士、登録販売者などが挙げられることから、保険薬局における登録販売者の平均年収は300万円前後と推定されます。
 
一方、スーパーやドラッグストアなどで働く登録販売者は、資格手当がついたり、入職時に副店長からスタートできたりなど、待遇に差が出ることがあるようです。
 
また、登録販売者は小売店で扱う一般用医薬品の多くを管理できるため、店長候補として採用されることもあります。
 
ほかにも、一般用医薬品を扱うコンビニや通販サイトといった就職先もあり、勤務先によって基本給や資格手当の条件が異なるため、年収も変わります。

 
🔽 薬剤師の年収について解説した記事はこちら

5.登録販売者の就職・転職先

登録販売者の主な就職・転職先として挙げられるのが、ドラッグストアや調剤薬局、コンビニなどの小売店です。これらの職場での仕事内容について紹介します。

 

5-1.ドラッグストア

ドラッグストアで働く登録販売者は、第2類、第3類医薬品の販売はもちろん、商品の品出しや陳列、在庫管理や発注業務、会計業務などを行います。
 
また、日用品や食料品を扱う職場では、医薬品以外の知識も求められるため、利用者の要望に合わせられるよう、さまざまな知識が必要です。

 

5-2.調剤薬局

調剤薬局で働く登録販売者は、一般用医薬品の販売業務のほかに、保険調剤事務の業務を行うことが多いでしょう。処方箋の受付や調剤補助、調剤棚への医薬品陳列、レセプト業務などを行います。
 
第2類、第3類医薬品を扱う調剤薬局では、患者さんへ購入相談を行い、安全に一般用医薬品が使用できるようサポートします。一般用医薬品だけでなく処方箋医薬品や保険制度などに携わるため、医療に関するさまざまな知識を深めることができるでしょう。

 

5-3.コンビニなどの小売店

近年では、コンビニやホームセンター、家電量販店などでも一般用医薬品を販売するところが増えています。コンビニなどの小売店における登録販売者の仕事は、一般用医薬品の相談を受けたり、商品の発注や陳列をしたりといったことが挙げられます。
 
そのほか、「花粉症の季節にマスクや目薬、アレルギー薬などの配置を担当する」といった業務を任されることもあるでしょう。
 
インターネットでも一般用医薬品の販売が認められているため、相談窓口での業務を担うこともあり、登録販売者の活躍の場は広がっています。

6.登録販売者の将来性

登録販売者制度が始まる前は、薬剤師の不在時に販売できない一般用医薬品があることや、使用上の注意などを十分に説明できないといった課題がありました。
 
時期を同じくして、薬学教育が4年制から6年制となり、薬剤師は調剤や一般用医薬品の販売だけでなく、研究・開発や地域医療への貢献といった幅広く活躍できるスペシャリストとしての役割を求められるようになりました。
 
そうした背景もあり、2009年の改正薬事法により「登録販売者制度」が新設され、医薬品の販売業務を専門に行う登録販売者資格が誕生しました。
 
近年では、健康の維持増進や疾患の予防を自己管理する「セルフメディケーション」が推奨されるようになっており、こうした消費者のニーズに対応するためにも登録販売者は重要な存在といえます。
 
また、前述した「医薬品の販売制度に関する検討会」で挙がっている一般用医薬品の区分変更については、登録販売者が職能をしっかりと発揮し、国民の安全と健康に貢献することが期待されています。
 
検討会では「医薬品登録販売者」に名称変更する提言もありました。一般用医薬品の専門家である登録販売者は、単なる情報提供ではなく、患者さんや購入者が登録販売者の必要性を感じられるような働きが求められています
 
参照:厚労省・太田薬事企画官「登録販売者の活躍カギに」~OTC薬販売制度改正で

7.薬剤師と登録販売者の職能を生かした協力体制が求められる

薬剤師の仕事であった医薬品販売のうち、第2類医薬品と第3類医薬品の販売を、登録販売者が担うことになりました。一般用医薬品の販売対応を登録販売者に任せられるため、薬剤師は第1類医薬品の販売や在宅医療など、薬剤師の職能を生かした業務に集中できるようになっています。
 
それぞれの職能を生かしてお互いにサポートし合えれば、業務の効率化が期待できます。お互いの役割を尊重しながら、より質の高い医療を提供できる仕組み作りを目指していきましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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