薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2022.04.21 薬剤師のためのお役立ちコラム

奨学金を借りた薬剤師とこれから借りる薬学生が知っておきたいこと 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師になるには6年制の薬学部を卒業する必要があり、多くの学費がかかります。安心して学業に専念できるように奨学金の利用を検討する人もいれば、すでに利用している学生や、返済中の薬剤師もいるでしょう。学費だけでなく、一人暮らしに必要な生活費を確保するために奨学金を利用するケースもあると思います。今回は、日本学生支援機構の奨学金制度の概要と返済に困った時の対応など、奨学金を借りるうえで知っておきたいことについてお伝えするとともに、その他の奨学金制度についてご紹介します。

1.薬学生が利用する代表的な奨学金「日本学生支援機構」

薬学生が利用する奨学金として代表的なのが「日本学生支援機構」が運営する制度です。日本育英会が行っていた学生への奨学金貸与事業を引き継いだもので、文部科学省所管の独立法人が支援しています。奨学金貸与事業には、給付型と貸与型がありますが、ここでは、薬学生が利用することが多い貸与型の奨学金について解説します。

 

1-1.無利子の第一種奨学金

日本学生支援機構のウェブサイトによると、第一種奨学金は、国内の大学院や大学などに在学する学生・生徒が対象となる奨学金です。貸与額は、大学院や大学、短期大学など学校種別や、国立や公立、私立などの設置者、自宅通学または自宅外通学などの通学形態によって異なります。

例えば、国公立の薬学部に自宅から通学する場合、月当たり2万円・3万円・4万5000円のいずれかから選択します。ただし、申し込み時の家計収入が一定額以上である場合には、各区分の最高月額は選択できない可能性があります。
 
私立薬学部に自宅外から通学する場合は、2万円・3万円・4万円・5万円・5万4000円・6万4000円の中から月の貸与額を選択でき、入学年度によっても貸与月額が変わります(日本学生支援機構ウェブサイトより)。第一種奨学金は利子がかからず、借りた金額だけを返済します。

 
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1-2.有利子の第二種奨学金

第二種奨学金の対象者は、第一種奨学金と同様ですが、選考基準は第一種奨学金より緩やかです。貸与額についても細かく設定されておらず、家庭の状況に応じて自由に選択が可能です。
 
例えば、大学に通う学生の貸与額は、月当たり2万円~12万円の中から1万円刻みで選択ができます。私立大学の薬学部の場合、2万円増額された月額14万円まで貸与可能です。有利子の奨学金のため、返済総額は借りた金額に応じて数十万円の利子がプラスされる場合もあります。

 

1-3.入学時特別増額

入学時特別増額貸与奨学金とは、第一種奨学金や第二種奨学金とは異なり、入学した初月の分のみ増額して貸与する利子付きの奨学金です。
 
対象者は、第一種奨学金または第二種奨学金のいずれかの奨学金を貸与することに加え、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」に申し込んだが利用できなかった世帯や、奨学金申請時の家計基準における認定所得金額が0円以下(4人世帯の給与所得者の場合年収400万円程度以下)の世帯(入学時特別増額貸与奨学金|日本学生支援機構より)としています。

貸与額は5種類の額から自由に選択ができますが、入学前の貸与や入学特別増額だけを貸与することはできません。入学時特別増額は、10万円・20万円・30万円・40万円・50万円の中から選べます。

 
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2.薬学生が奨学金を借りる時の心構え

これから薬剤師を目指すにあたり、奨学金の利用を考えている学生は将来を考えた選択をする必要があります。在学中と卒業後における奨学金を借りる時の心構えについてお伝えします。

 

2-1.「学ぶために奨学金を借りる」のが前提

奨学金は進学を希望しているにもかかわらず、経済的に学費の工面が困難な人のために用意された制度です。日本学生支援機構の貸与奨学金は、勉学に励む意欲があることに加え、それにふさわしい能力を持った学生に貸与されます。そのため、留年した学生や成績不振の学生からの奨学金の申請は受け付けられていません。

また、奨学金の継続については、毎年1回、学校が継続可否の認定を行い、日本学生支援機構に報告しています。適格認定(学業等)の結果によっては、給付奨学金の支給が廃止されたり停止されたりすることがあるほか、状況によっては奨学金の返還を求められることがあります。
 
奨学金の利用が認められた場合は、留年はもちろん、授業の欠席や遅刻は極力避けるように努める必要があるでしょう。

 

2-2.卒業後は働き続ける覚悟が必要

奨学金の返済額は数百万円から、多い人で1,000万円を超えます。大学卒業と同時に返済義務が生じるので、卒業後は奨学金が返済できるまで働き続けると覚悟しなければなりません。
 
結婚や出産、子育てなどライフステージの変化による収入の減少や、病気・海外留学などで一時的に働けない時期があったとしても、返還を続けなければならないことを肝に銘じておく必要があります。

 
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2-3.卒業後の返済例

例えば、貸与月額が5万円で6年間奨学金を利用していた場合、貸与総額は360万円になります。2021年4月の貸与利率0.26%を参考に計算すると、第二種奨学金を20年間で返還するケースでは、返還額は月15,414円、返還総額は約369.9万円です(奨学金貸与・返還シミュレーションで算出)。貸与月額が10万円であれば総額約740万円の返済となるでしょう。

貸与利率によって返還総額は多少上下しますが、返還総額は決して安くありません。ライフステージによって必要な生活費や収入額が変わることもあるので、繰り上げ返済や貯蓄など返済プランをあらかじめ立てておく必要があるでしょう。

 
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3.奨学金の返済が難しい薬剤師は

日本学生支援機構では、奨学金の返済が難しくなった場合に、2つの対応方法を提示しています。基本的には、いずれも奨学金の返済が免除されたり減額されたりする制度ではありません。また、特例として返済が免除になるケースについても詳しく見ていきましょう。

 

3-1.減額返還の申請

減額返還とは、災害や傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に、一定期間、返還金額を減額できる制度です。減額返還を希望する際には、自己申請が必要です。減額返還適用期間に応じた分は、返還期間が延長になるだけで、返還総額が減額されるわけではありません。また、支払いが延滞している場合には申請できませんので、延滞する可能性がある場合は、事前に申請しておくことで減額返還が認められます。

 

3-2.返還期限猶予の申請 

返還期限猶予は、災害や傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に申請することで、返還しない期間を設ける制度です。ただし、返還すべき元金や利子が免除されるものではなく、返還期限が延長された分だけ、返還終了年月も延長されます。

 

3-3.返還が免除されるケース

奨学金を貸与した本人が、死亡した場合や精神または身体の障害により働くことが難しくなったために奨学金の返還ができなくなった場合は、返還未済額の全部または一部の返還が免除されます。この場合、自身もしくは家族による申請が必要です。

 
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4.奨学金の返済を延滞した場合

日本学生支援機構のサイトでは、奨学金の返済を延滞した場合、督促や延滞金の賦課といった厳しい対応をとることが明記されています。ここでは、督促の連絡と延滞金の賦課について解説しましょう。

 

4-1.督促の連絡

日本学生支援機構では、返済を延滞すると、本人や連帯保証人、保証人に対して文書と同時に電話による督促を行っています。電話による督促は、日本学生支援機構の職員が行う場合もあれば、業務を委託した債権回収会社が行う場合もあります。電話は平日、休日問わず9時~21時の間に行われ、個人情報保護の観点から本人、連帯保証人、保証人のいずれかの確認が取れない場合は、奨学金返還の督促であることが話されないことになっています。

 

4-2.延滞金の賦課

約束の返還期日までに返還されない場合、延滞金が加算されます。延滞金の割合は延滞している期間や時期によって3~10%の延滞金が賦課されますので、引き落とし口座の残額に気を付ける必要があるでしょう。

 

4-3.奨学金の返済を厳しく管理している理由

日本学生支援機構が奨学金の返済を厳しく管理しているのは、「返還金がそのまま次の奨学金として利用される仕組みになっている」からです。

自身が奨学金によって学生生活のサポートを受けていたように、奨学金を借りることで安心して学生生活を送っている学生がいます。奨学金生のためにも、奨学金の返済期日を守り、返還が困難になった場合は延滞する前に手続きを行う必要があるでしょう。

5.企業や病院が支援する「奨学金制度」もある

近年、人材確保を目的として奨学金制度を設ける企業や病院が見られます。こうした支援制度は、条件によって奨学金の返済が免除されるといったメリットがあります。その一方でデメリットも見逃せません。ここでは、企業や病院の奨学金制度を利用するメリットとデメリットについて見ていきましょう。

 
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5-1.返済免除や就職活動の負担がなくなることがメリット

先にもお伝えしたとおり、企業や病院が支援する奨学金制度は、返済の一部または全額免除されることに加え、就職活動を省けるといったメリットがあります。
 
返済規定は企業や病院によって異なりますが、薬学部卒業後、自社に就職し、一定期間働くことを条件としているところがほとんどです(例えば、奨学金を借りた期間と同じ期間、勤務することを条件として、月額5万円~10万円を支給するなど)。

また、対象となる学年も、1年次から借りられるものや、5年次・6年次のみと卒業が見込まれる薬学生を対象としたものなど企業や病院によってさまざまです。国家試験対策や実務実習、卒論などと並行して就職活動をする必要がないため、5,6年次も学業に専念したい場合や、就職したい企業が奨学金制度を設けている場合は、利用を検討してみるのも良いでしょう。

 

5-2.デメリットは、その企業や病院で働き続ける必要があること

企業や病院から奨学金を借りると、大学卒業後の数年間を決められた職場で働かなければならないのはデメリットの1つといえます。
 
定められた期間中に退職してしまうと、未払い分の奨学金について全額一括返済を求められることもあります。事情により退職を検討する可能性に備えて、普段から貯蓄しておく必要があるでしょう。企業や病院の奨学金制度を利用する場合は、就職活動を行うつもりでしっかりと企業研究を行うことが大切です。

6.奨学金を利用するなら、返済のイメージを持つことが大切

薬学生は必須科目が多く、アルバイトをする時間も限られています。奨学金のサポートがあれば、充実した学生生活が過ごしやすくなるでしょう。ただし、卒業後に返済が続くことをしっかり考えたうえで、活用することが大切です。奨学金制度は今回ご紹介したもの以外にもさまざまなものがあります。どの奨学金制度を利用するかは返還時の働き方などをイメージしながら決めてみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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