インタビュー 更新日:2020.12.04公開日:2020.12.03 インタビュー

なぜ今、薬局がOTC医薬品に注力するのか?~マロン薬局西国立店の健康サポート

地域医療支援病院である立川病院の前に店舗を構えるマロン薬局西国立店では、複数の疾患を持つ高齢者や難病、癌治療中の患者さん、認知症の患者さんが多く来局。通院患者の高度薬学管理はもちろん、地域の人々に寄り添い、頼りにされる薬局を目指してOTC医薬品の充実にも力を注いでいます。同薬局の薬局長兼管理薬剤師の川崎啓子先生にお話を聞きました。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2019年8月号P.3-4「マロン薬局西国立店インタビュー」を再構成したものです。

お話を聞いたのは……マロン薬局西国立店(東京都立川市)
 

住所/東京都立川市錦町4-3-1 シャトー・ルミエール1F
マロン薬局ウェブサイト(株式会社まろん)
https://www.marron-g.co.jp/
※営業日、定休日などの最新情報はウェブサイトよりご確認ください。

Q.OTC医薬品を取り揃えたきっかけは何ですか?

A.地域住民の健康サポートを充実させるため、OTC医薬品の販売をスタート。

薬局長兼管理薬剤師の川崎啓子先生

開局時から地域の方々の健康サポート健康サポートの機能の充実を目標として健康サポート薬局の認定取得を考えていましたが、認定の取得自体を目指すというよりは、私たちが考える薬局の理想像と健康サポート薬局の条件が重なったので、必然的にそれが目標となりました。

 

私が理想とする薬局は、処方箋が入場券のようになっている薬局ではなく、患者さんとのコミュニケーションを大切にして関係性を作っていくことで生まれる、地域の方々が気軽に立ち寄れる、街の休憩所のような場所。近くにドラッグストアがないこともあり、なるべく充実した健康サポートをと考えるとOTC医薬品は必要なものでした。

 

基本的な薬効群として指定されている48品目を各1種類から取り扱い始めて、現在では80種類以上を販売しています。狭いスペースですが、奥の商品はブロックなどに乗せて高さを出すなどの工夫をして、患者さんが目的の商品を探しやすいように、POPもスタッフそれぞれが楽しんで作っています。

 

48品目以外でよく患者さんにおすすめするのは栄養補助食品ですね。高齢の患者さんから「知らず知らずのうちに体重が減ってしまった」「思うように食事がとれない」という相談をいただくことが多く、そういった方には、食事にプラスするだけで手軽に栄養補給ができる「すっきりクリミール」をおすすめすることが多いですが、独居の患者さんや認知症で食事作りが難しくなった患者さんには、介護サービスや配食サービス(宅配弁当)をおすすめすることもあります。フレイルの入り口にいる高齢者の発見は、薬局薬剤師だからこそできることだと考えていますので、そこは見逃さないように、最近では高齢の患者さんには自宅での体重測定をお声がけしています。

 

その他、便秘でお悩みの方も多いので「ビフィズス菌末」が人気になっています。除菌・消臭・花粉対策ができるスプレー「セイバープラスZ」をお求めの方も多いですね。

消費期限切れのOTC医薬品の廃棄について気にされる薬局も多いかと思うのですが、通常の医薬品の廃棄に比べれば金額も管理の難易度も低いので、私たちはそこまで気にしていません。患者さんが必要とするときに、きちんと取り揃えがあることが何より大切だと思うので、たとえ多少の廃棄が出たとしても、それはちゃんと役割を果たしたのだという思いで取り扱っています。

 

Q.OTC医薬品の取り扱いを始めて、変化などはありましたか?

A.セルフメディケーションの促進につながっていると感じています。

 

OTC医薬品を取り揃えたことで、患者さんのお悩みや相談にとても対応しやすくなったと感じています。OTC医薬品の取り扱い前には、患者さんにおすすめできるものが薬局内にないのでドラッグストアをご紹介することもありました。処方薬であるかOTC医薬品であるかにかかわらず、薬は暮らしと切り離せないものですので、セルフメディケーションの意味でも、今後さらにOTC医薬品のラインナップを増やして、地域の方々のさまざまなお悩み・相談に応えていきたいと思っています。

取り扱う医薬品の選定のポイントは“多くの方に必要とされている”こと。医薬品のニーズについてはドラッグストアなどでチェックするようにしています。また、パッケージに「何のための医薬品なのか」「どんな症状に対応しているのか」などが明確に書かれているのもポイントの一つ。広く知られた医薬品であることも、安心感の意味から大切だと考えています。

Q.健康サポート薬局についてのお考えをお聞かせください。

A.最初の課題は、地域の方々との関わりにあると思っています。

 

健康サポート薬局の認定取得に向けて準備を進めているところですが、健康サポート薬局という名称にふさわしい薬局になるための最初の課題は、地域の方々との関わりをどのように持つか、そして、そこで得た関係性をどのように支援につなげられるかだと考えています。

開局してすぐに行った認知症サポーター養成講座と、その後、毎月開催している認知症カフェ「まろんカフェ」を通じて、地域包括支援センターや生活支援コーディネーターの方などとのつながりができたことでより広い支援が可能になったと感じています。認知症の患者さんや患者さんのご家族はもちろん、物忘れが多くなったなどの心配事を相談できる地域の受け皿として、これからも「まろんカフェ」は続けていきたいと思っています。また、認知症患者さんに限らず、地域の方々が体調に不安を感じたとき、夏の外出時に水分補給したくなったときなど、さまざまな場面で気軽に立ち寄れる、多くの方に親しまれる場所として、この薬局を育てていきたいと思っています。

Q.今後の展望などについてお聞かせください。

A.地域の頼れる薬局として、OTC医薬品のラインナップもさらに充実させたいですね。

 

高齢化が加速するなかで、通院していなくても健康不安や体の不調を感じる方は増えてくると思います。そういった方々のセルフメディケーションを支えるために寄り添うことができるのが「かかりつけ薬剤師」だと考えています。処方箋の有無にかかわらず、より多くの方をサポートしていくためには、OTC医薬品のラインナップをもっと充実させる必要があると感じていますし、健康に関する一連のものが手に入る場所であることは、地域における薬局の役目だと思っています。そこに行けば必要なものが手に入るから、悩みをきちんと聞いてくれるから、コミュニティは大きくなっていくのだと思います。

 

日々、患者さんに真摯に向き合い、「この人に任せておけば大丈夫」「ここに来れば大丈夫」と言っていただける関係性を築いていきたいと思っています。

 

<マロン薬局西国立店での、OTC医薬品販売の工夫をピックアップ!>

Point1
奥行きの狭い棚をセレクトするとともに、棚の前後で段差を作ると、商品がとても見やすくなります。

Point2
POPを効果的に使用して、どういう人に向けた商品なのかを分かりやすく訴求。購買意欲を高めます。

Point3
購入者にとって、効果・効能が分かりやすいパッケージの商品を選ぶと、薬剤師の説明する負担の軽減にもつながります。

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医薬情報おまとめ便サービス」特集2019年8月号

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