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タスクシフト、薬物治療の質向上~業務負担軽減に上乗せ効果

薬+読 編集部からのコメント

2月21日に開催された日本病院薬剤師会のセミナーにて、全国各地の病院薬剤師からタスクシフトの好事例が発表されました。プロトコールに基づくPBPM(薬物治療管理)などの枠組みを活用し、事前に医師と合意した範囲で薬剤師が処方や検査オーダを入力したり、投与量を調節したりすることで、医師や看護師の業務負担軽減だけでなく、薬物療法の効果や安全性向上につながったことが報告。さまざまな事例報告が挙がる中、「好事例をそのまま真似るのではなく、病院によって異なる問題の解決につなげてほしい」と呼びかける演者もありました。

日病薬セミナーで報告

日本病院薬剤師会は21日、都内等でセミナーを開き、全国各地の病院薬剤師からタスクシフトの好事例が発表された。プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)などの枠組みを活用し、事前に医師と合意した範囲で薬剤師が処方や検査オーダを入力したり、投与量を調節することで、医師や看護師の業務負担軽減だけでなく、薬物療法の効果や安全性向上につながったことが報告された。「好事例をそのまま真似るのではなく、病院によって異なる問題の解決につなげてほしい」と呼びかける演者もあった。


高知市にある近森病院薬剤部の筒井由佳氏は、癌領域を中心に、薬剤師が医師の代行で処方や検査オーダを入力するPBPMを実施していることを報告した。

 

一つが癌化学療法によるB型肝炎再活性化を早期に発見する検査オーダの入力。B型肝炎ウイルス(HBV)のキャリアや既往感染者に対して化学療法を実施することで、HBVが再活性化し劇症肝炎に至る場合がある。劇症肝炎の兆候を把握する検査オーダが漏れていた場合に、薬剤師が入力するPBPMを開始した結果、検査の実施率は大幅に高まった。

 

筒井氏は「確実に検査を実施する体制になり、安全な化学療法の実施につながった」と語った。

 

京都大学病院薬剤部の米澤淳氏は、持参薬に基づく服薬計画の提案や仮オーダ入力を薬剤師が行うことで、医師や看護師の業務負担軽減、規格間違いや用法間違いの防止、ポリファーマシーの抑制につながったと報告。

 

さらに、PBPMを導入して薬剤師がワルファリン投与量の調節に関わった結果、目標INR値の維持率が高くなり、出血性有害反応の発現を防止できたことを示した。

 

これらの取り組みを踏まえ米澤氏は「PBPMによるタスクシフトによって、これまでは主に監査者であった薬剤師が提案者になり、さらには実施者にもなっていく。タスクシフトで医師や看護師の負担を軽減するだけでなく、薬剤師の介入によって薬物治療をより良いものにし、臨床的アウトカムを高めることが重要になる」と指摘した。

 

神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部の室井延之氏は、タスクシフトの実施に当たって、「病院全体の業務を把握、整理してから取り組むことが重要。リソースが少ない中、新たな薬剤業務の展開に当たっては、今の業務をしっかり把握する必要がある。当院ではタイムスタディ調査を実施し、現在の業務を徹底的に分析した」と強調。

 

抗癌剤の調製ロボットに加えて、2月からは自動薬剤ピッキングロボット、散薬調製ロボットを導入するなど、ロボット導入による機械化も含め業務のアウトソーシングも進めていることを示した。

 

札幌東徳洲会病院薬剤部の齋藤靖弘氏は、救急領域におけるタスクシフトの取り組みを提示した。

 

薬剤師は、救急搬送された患者に対応する救急救命室(ER)へ出向いて持参薬を鑑別したり、かかりつけ医や薬局に問い合わせて薬歴を明らかにして、多忙な救急の現場を支えている。服用薬が原因で救急搬送される患者も少なくないが、薬剤師が薬学的な視点で評価することで、薬剤起因性疾患の迅速な診断や治療も可能になるという。

 

齋藤氏は、自らの実感やこれまで報告してきたエビデンスをもとに「救急医のタスクシフトこそ薬剤師が本領を発揮する場」と投げかけた。

 

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出典:薬事日報

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