1.薬局アワード第5回の見どころは?
薬局アワードの開催は今回で第5回目。前回に続きオンラインでの開催となりました。回を重ねるごとに規模も大きくなり、今回の参加者数は300名にものぼったそうです。
さらに今回は、予選会から一般参加者が参加・投票するという初の試みも実施。5日間にわたりオンラインで開催された予選会やYouTubeでの本選選出薬局の発表など、イベント前から盛り上がりを見せていたのも印象的です。激戦の1次・2次審査を経て、本選に進出したのは6薬局。10月24日(日)の本選当日、各薬局の代表者が取り組みについてプレゼンテーションし、一般参加者と特別審査員による投票により、受賞薬局が決定されます。
イベントを主催する薬局支援協会代表理事の竹中孝行さんは、「薬局は薬をもらうだけの場所で、どこも同じようなもの」といった誤解にもどかしさを感じていた、といいます。そして「薬局のすばらしい取り組みや新しい一面を知ってもらい、地域の薬局をもっと利用してほしい。また、参加した薬剤師の皆さんには、自分の薬局チャレンジできないかを考えてみてほしい。薬学生には、将来を考えるうえで参考にしてほしい」と、開会のメッセージを届けました。
今回司会を務めたのは、薬剤師の松村歩美さん(画像左、@ayumin_Mii)と新井田純坪さん(画像右)。また、特別審査員を務めたのは以下の方々でした。
<第5回みんなで選ぶ薬局アワードONLINE・特別審査員の皆さん>
・岸田徹さん(NPO法人がんノート・代表理事 @kishidatoru)
・鈴木信行さん(患医ねっと・代表 @nobusuzu)
・狹間研至さん(一般社団法人日本在宅薬学会・理事長)
・みおしんさん(麻酔科専門医兼メディアアーティスト @YouTubeはこちら)
・白戸良磨さん(全国薬学生アワード2021最優秀賞受賞者)
・平井みどりさん(兵庫県赤十字血液センター・所長)
代表薬局の発表の合間には、チャット機能やツイッター(ハッシュタグ:#薬局アワード)で繰り広げられるコメントもリアルタイムで紹介。全国の参加者との交流がオンラインで繰り広げられます。「新型コロナワクチンの接種時、薬剤師の活躍がフューチャーされないのはなぜ?」といったトークテーマでも盛り上がりを見せました。
2.薬局アワード第5回の出場薬局と取り組み
ここでは、代表6薬局のすばらしい取り組みを紹介します。
出場薬局① 金太郎薬局(京都府京都市)
「薬局×弁当屋!?あなたの口に入るもの、全て責任持ちます」
発表者:川野義光さん
在宅医療に注力する金太郎薬局は、薬局内での業務に加え、個人宅を訪問して処方薬の提供や服薬指導・管理を実施。
あるとき、在宅患者さんの食生活が乱れていることに気付き、「健康は、栄養のあるものを食べてこそ。人の口から入るものは、食事と薬しかない!」と痛感したことから、管理栄養士が監修する弁当屋をオープンしたといいます。
薬局&弁当屋という独自のアプローチで地域住民と接し、病気になる手前の段階から関わることにより、薬局や介護との早期連携が可能に。また、配送者が弁当を渡す際に、薬の飲み残しや体調面の確認をすることで、見守りの効果も発揮しています。
出場薬局②OGP薬局荒川店(東京都荒川区)
「地域の女性と子どもの健康と未来をサポートしたい!!」
発表者:鈴木怜那さん
緊急避妊薬を渡す際、問診票やリーフレットなどの事前準備をしていましたが、祝日の処方医がなかなか見つからず、歯がゆい思いをしたことがきっかけで、「これでは地域で困った女性を救えない!」と危機意識を強くし、女性のヘルスケアや性教育についての講座を開始。
社内の上層部や地域の患者さんに新しい試みを受け入れてもらうため、まずは認知症カフェをゼロから軌道に乗せ、薬局内イベントの成功事例を築きました。
性教育の講座の中では、緊急避妊薬や性感染症、HPVワクチンなどの正しい知識を伝授。「男性薬剤師もぜひ取り組みに参加してほしい」といい、本活動を全国に広めるなど今後の展開にも意欲を燃やしています。
出場薬局③たむら薬局栄町店(東京都練馬区)
「地域を愛し地域から愛される薬局づくり」
発表者:田村憲胤さん
発表者・田村さんの地元でもある東京都練馬区の「江古田」を拠点に地元住民のニーズにとことん向き合う、たむら薬局。地域住民に必要とされる約500品目ものOTC医薬品・日用品・衛星用品などを取りそろえ、売り上げは7年間で7倍にまで増加したそうです。
サービスの質を追求し、デジタル化にも積極的です。患者さんが全4店舗の系列店のうちどの店舗に行っても個別対応を受けられるように、電子カルテやiPadで患者さん情報をクラウド管理。また、処方箋送信やチャットで気軽に相談できるたむら薬局専用アプリ「kakari」(約800人が登録)や、健康情報のプラットホームとしてたむら薬局LINE公式アカウントを開始しています。
薬局内で血圧や体脂肪率、心電図、酸素飽和度などを無料で測定することもでき、測定結果はどの店舗からも「たむら薬局カード」に記録して管理することができます(LINEと連携できるよう開発中)。コロナ禍でできることを模索し、0410対応の周知やマスク・消毒薬・日用品など、必要な「モノ」や情報を切らさず提供し続けました。たむら薬局は、これからも江古田の住民の健康で安全安心な生活をサポートし続けたいとのこと。
出場薬局④(株)ファーコス新潟事業部 市民調剤薬局(新潟県新潟市)
「薬局スタッフもゲートキーパーです!」
発表者:佐藤真樹さん
薬局を利用していたある患者さんが自ら命を絶ってしまったことを知り、「薬剤師として、何かできたことがあったはず……」と思い悩んだ佐藤さん。
発表では、交通事故による死亡者数よりも自殺者数のほうが圧倒的に多い日本の現状を訴え、そして自殺にいたってしまう可能性が高いといわれるうつ病患者さんが、薬局利用者の一定数を占めていることをかんがみ、「薬局がゲートキーパーの役割を果たすことで救える命がある!」と訴えます。
2011年に自殺予防に関わることを宣言して以来、数十例の希死念慮をもつ患者さん対応を実施。県内のみならず全国でゲートキーパー養成研修会を開催しています。患者さんの言動を見守ったり声をかけたりすることで、いち早く変化に気付ける薬局・薬剤師の強みを生かせると訴えます。
出場薬局⑤株式会社折り鶴 調剤薬局元気の森(群馬県前橋市)
「薬剤師が支える企業の健康『健康経営』」
発表者:大島英晃さん
「健康な人にどんなアプローチができるか?」という視点を持ち続ける、「株式会社折り鶴 調剤薬局元気の森」。ヨガセラピー講座、こどもお薬教室、ウォーキングサッカーなど、さまざまな企画を実施してきました(コロナ禍ではYouTube配信)。
カフェで気軽に健康チェックできる取り組み「らしくる(あなたらしい健康サイクル)」をスタートしたものの、営業時間中は働く人が参加できないことから、働く人の健康をサポーツする取り組みができないかと、「健康経営」に着目。健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実施することです。
オフィス版「らしくる」として、企業での出張保健室、測定ブースの設置、結果を出す短期集中トライアルといった取り組みを開始しました。利用者からは、体重や内臓脂肪の減少という成果が得られ、「次の健康診断が楽しみ」といった声が聞かれるなど、手応えを感じています。
出場薬局⑥合同会社みどりや薬局(静岡県島田市)
「パパママ薬局は地域健康のHUB 薬局に+αの拠点で地域を支える」
発表者:清水雅之さん
前回に続き2年連続の本選選出となるみどりや薬局。「うっかりドーピング」について学べるカードゲーム「ドーピングガーディアン」を紹介した前回とは打って変わり、今回は、薬局薬剤師&地域住民というふたつの視点を持ち合わせた地域密着型薬局のあり方について発表しました。
家族経営の強みを生かし、薬局の近くにあるという自宅の1階を改装してみどりや健康ステーションというスペースをつくりました。そこで認知症カフェ「島田オレンジカフェ」を開催し、地域住民との交流の場を生み出しています。また行政の動向にアンテナを張りつつ、自ら関係者に声をかけて運営チームを結成するなど精力的に活動。
コロナ禍では、オンライン形式の認知症カフェに切り替え、行政と連携してデジタルが苦手な高齢者も利用できるように工夫しました。行政のニーズを積極的キャッチ・活用しながら、地域住民の健康をチームで支えています。
3.薬局アワード第5回の受賞薬局は?
6者6様の魅力的な取り組みに、特別審査員や一般参加者からは絶賛のコメントが飛び交いました。ハイレベルな発表に、どの薬局に投票をするか迷った参加者も多かったのではないでしょうか。
そして、一般参加者と特別審査員の投票の結果、受賞薬局が決定! 受賞結果とコメントは次のとおりです。最優秀賞を受賞したのは、OGP薬局荒川店でした。
●オーディエンス賞:地元住民ファーストの活動が高評価【たむら薬局栄町店】
「地域に“超”密着するという覚悟が評価されてうれしいです。同じビジョンを持つ仲間をもっと増やしていきたいです」(田村さん)
●特別審査員賞:地域住民や行政を積極的に巻き込んだ【合同会社みどりや薬局】
「自宅を改装する手段がなかったら、行政の情報を集め、空き家や共有スペースを活用したと思います。薬剤師は実験好きが多いので、ぜひ他の薬局もいろいろな実験をしてほしいです」(清水さん)
●最優秀賞:手を出しにくい問題に果敢に挑んだ【OGP薬局荒川店】
「女性と子どもに特化していたので、どう思われるか不安でしたが、自分の取り組みを多くの薬剤師に知ってほしくて参加しました。それが伝わってうれしいです」(鈴木さん)
最優秀賞を受賞したOGP薬局荒川店の鈴木さんは、涙ながらにコメント。チャットには「感動した」などのコメントが押し寄せました。
本選に出場した6薬局の発表と結果発表・表彰式の様子は、薬局支援協会のYouTubeチャンネルでも公開されています。当日の臨場感が味わえますので、ぜひ視聴してみてください。
年々パワーアップしていく薬局アワードの次回開催は、2022年10月ごろを予定しています。薬局アワードは、運営スタッフや特別審査員、一般参加者の皆さんの薬局愛あふれるイベントです。発表を日々の業務に生かすだけでなく、来年の出場を目指してみてはいかがでしょうか。
► 【前回】第4回みんなで選ぶ薬局アワードONLINEのイベントレポートはこちら
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