薬剤師が多職種連携に寄与~地域フォーミュラリ作成で【日本フォーミュラリ学会】
日本フォーミュラリ学会は10月30日、都内会場とオンラインで第1回学術総会を開催し、有効性と安全性に加えて経済性の観点から最適な使用医薬品の推奨リストである地域フォーミュラリについて議論した。現在、山形県酒田市など7地域で実施、5地域で実施検討中、7地域で実施希望の状況にあるが、医師会や薬剤師会中心で進められている事例が多い。シンポジウムで厚生労働省医薬・生活衛生局の太田美紀薬事企画官は、最適な薬剤評価を行うフォーミュラリの作成支援は「薬剤師だからこそできる業務の一つ」と強調。地域医療で必要性が増す多職種連携にも寄与できると指摘した。
同学会は、地域フォーミュラリについて、治療効果を維持しながらコストを抑え、地域医療の連携後押しと持続性の維持に役立つ取り組みと位置づける。先行する山形県酒田地区では、年間薬剤費削減効果を2億円以上と推定。健康保険組合連合会は降圧薬、高脂血症薬、血糖降下薬の3薬効で3000億円の薬剤費削減が可能と試算している。
実施主体は主に、▽医師会と薬剤師会主体▽地域医療連携推進法人主体▽中核病院と医師会・薬剤師会主体――の3タイプ。県薬務担当課、保険者も交えた推進体制が取られている。医師会と薬剤師会、病院薬剤師会の連携が良好なところが多く、実施地域からは導入により連携関係がさらに強まったと報告された。
基調講演した今井博久理事長(帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授)は、医療DXの加速と診療報酬による後押しで今後5~8年程度で全国展開したいとの決意を示した。地域フォーミュラリは、地域医療の抱える諸課題の解決に寄与するとして「地域医療の革命」と強調。普及・定着に向けて対立しがちな関係省庁、関係団体間の協調を強く呼びかけた。
その上で、人口の減少や高齢化などで地域医療が持続性を問われる厳しい状況にある中、不適切な処方、多剤処方、非効率な処方が放置されていると指摘。
地域フォーミュラリを作成、実施することで、▽地域における標準的な薬物治療の普及▽患者アウトカムの向上▽無駄な費用の削減▽医薬品卸業務の効率化▽薬局の在庫軽減、知識の習熟化、連携促進――に寄与できると強調した。
同学会ではフォーミュラリ導入を支援するため「実施サポート部会」を立ち上げ、実施に向け検討中の地域で支援をしてきたことも紹介。薬効分類ごとのモデルフォーミュラリを策定し、地域の疾病動向など地域事情に合わせてフォーミュラリを作成する際の参考にしてほしいと呼びかけた。
また、2024年度からの第8次医療費適正化計画へのフォーミュラリ導入に期待を寄せ、今年度末から都道府県担当者向けオンライン研修会を実施する予定にしていることも明らかにした。
実際の地域フォーミュラリ推進には、医師会、薬剤師会を中心に、後発品使用促進協議会(または保険者協議会)の枠組みを活用しながら、薬務課、保健所、保険者などの参画を得ながら取り組むことが現実的とした。
さらに今井氏は、地域フォーミュラリに対する誤解にも言及。「処方制限」との指摘に対しては「あくまでも推奨薬の位置づけであり、医師は患者の状態に応じて自由に選択して処方できる」と説明。「診療ガイドラインで十分」との指摘に対しては、フォーミュラリは経済性も加味した内容になっていると紹介した。
一方、シンポジウムに登壇した財務省の大沢元一主計官は、地域の自発的な医療費適正化への取り組みとしてフォーミュラリに期待感を示した。次期医療費適正化計画への地域フォーミュラリの盛り込みを提案している立場から「(次期計画の)議論を見守りつつ、意見を申し上げる。前向きに議論に参画したい」と述べた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
日本フォーミュラリ学会は、10月30日に都内での現地開催とオンラインを併用し第1回学術総会を開催しました。同学会において、治療効果を維持しながらコストを抑え、地域医療の連携後押しと持続性の維持に役立つとしている「地域フォーミュラリ」について、有効性、安全性、経済性の観点から議論を行いました。