医療

問合せ簡素化を広域運用~大阪市で病診薬連携組織

薬+読 編集部からのコメント

2016年11月以降、大阪市天王寺区と北区で取り組んできた院外処方箋問い合わせ簡素化に、さらに東住吉区の病院が参画し、広域化を目指す組織「大阪病診薬連携アライアンス」が発足しました。問い合わせ簡素化とは、院外処方箋を応需した薬局薬剤師が調剤を行う場合に、予め合意した項目については処方医への問い合わせを不要とする取り組みで、全国でも先進的なモデルとして注目を集めそうです。

地域の先進的モデルへ

大阪市天王寺区と北区、東住吉区の基幹病院や診療所、薬局が院外処方箋問い合わせ簡素化の合意項目を共有し、広域化を目指す組織が1日付で発足した。2016年11月以降、天王寺区と北区で取り組んできた問い合わせ簡素化の合意を共通運用し、東住吉区の病院が新たに加わる。今後も複数の病院が参画する見通しだ。全国的に問い合わせ簡素化は病院と薬局間の個別合意から始まったが、診療所を含む地域全体で包括的に合意する形への発展が見込まれる。その先進的なモデルとして注目を集めそうだ。


発足した組織の名称は大阪病診薬連携アライアンス。8病院の理事長や院長、天王寺区と北区の2医師会の会長、両区に大阪市大淀を加えた3薬剤師会の会長が発起人となって立ち上げた。具体的には、天王寺区の大阪赤十字病院、第2大阪警察病院(前NTT西日本大阪病院)、大阪警察病院、四天王寺病院、早石病院、北区の北野病院と住友病院、東住吉区の東住吉森本病院の8病院が参画。事務局は大阪赤十字病院薬剤部に設置する。

 

問い合わせ簡素化は、院外処方箋を応需した薬局薬剤師が調剤を行う場合に、予め合意した項目については、処方医への問い合わせを不要とする取り組み。これまで天王寺区と北区では、同じ8項目で簡素化に取り組んできた。その合意項目を引き継ぐ。

 

新組織には会則を設置し、会員の種別として▽病院▽診療所(医科)▽診療所(歯科)▽薬局――の4種を設けた。会員間で問い合わせ簡素化の合意は成立していると見なし、入会した薬局の薬剤師は8項目を対象に会員の病院や診療所が発行する院外処方箋の問い合わせを省略できる。

 

天王寺区では、5病院全体と個々の薬局がそれぞれ契約を結び、問い合わせ簡素化を実施してきた。今後、これらの薬局には新組織に移行し、入会するかどうかを確認する。天王寺区医師会にも働きかけて診療所の入会を推進する考え。

 

北区でも、2病院と個々の薬局が契約を結ぶ形で進めてきた。北区と北区大淀の医師会と歯科医師会とは、薬剤師会が会同士で契約を締結している。何らかの形で契約関係を新組織へ移行する計画だ。

 

東住吉区では、同区薬剤師会が前向きな姿勢を示し、同区医師会にも参画を働きかける予定。関係者は近く説明会を開き入会を呼びかける計画で、東住吉森本病院は2月上旬までに運用を開始する見込みだ。

 

天王寺区の5病院と契約する薬局は大阪市全域に及び、約430軒存在する。北区と北区大淀の薬局を合わせると約500薬局になる。北区や北区大淀の診療所、歯科診療所も全て移行すれば、大阪病診薬連携アライアンスは大規模な組織になる。

 

北野病院の尾上雅英薬剤部長は、「16年に天王寺区、17年に北区で取り組みが始まった時から、将来の統一を視野に全く同じ合意項目を使用していた」と振り返る。

 

こうした背景に加えて今回、東住吉森本病院が参画の意思を示し、天王寺区でも医師会が前向きな姿勢を示した。大阪赤十字病院の小林政彦薬剤部長は、「それならば新たな組織を立ち上げた方が良いとなった」と語る。幅広く参画しやすい形態になり、実際に現在2病院が入会を検討中だ。

 

広域化には様々なメリットがある。東住吉森本病院の野村剛久薬剤科長は「各病院がそれぞれ独自に問い合わせ簡素化項目を策定すると、薬局は個別対応を迫られて混乱する。同一の項目を用いる有用性は高い」と話す。

 

医師の負担軽減、患者の待ち時間短縮なども見込まれる。大阪警察病院の村田久枝薬剤部長は「これを機会に参画薬局がさらに増えれば、問い合わせは減少する」と強調。大阪市北区薬剤師会の坂東俊完会長は「新組織発足に伴い、合意項目の改定も行いやすくなる」と期待する。

 

問い合わせ簡素化だけでなく、各種連携を推進する母体にもなり得る。天王寺区薬剤師会の堀越博一副会長は「地域でボトムアップし、顔の見える関係者同士で連携を深めることが次の制度につながる」と展望を語る。

 

今回、引き続き共通運用するのは、▽成分名が同一の銘柄変更▽剤形の変更▽別規格製剤がある場合の処方規格の変更▽半割、粉砕あるいは混合▽一包化▽経過措置などによる一般名への変更による名称変更▽残薬確認後の処方箋日数変更▽その他――の8項目。状況に応じて見直すことも可能となっている。

 

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出典:薬事日報

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