安藤医薬産業課長「バイオシミラー新目標値」国産の製造基盤強化前提~バイオAGに問題意識
厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の安藤公一課長(写真)は、本紙の取材に応じ、今年度末にバイオシミラーに関する新目標値の公表を控える中、「日本で製造されたバイオシミラーが市場に供給されるよう促進していくことが重要。医薬品産業の構造改革が求められている中で、国内の製造基盤を強化するためにどういった目標設定にするかという観点から考えていくのがベストではないか」と述べ、国産の製造基盤強化を前提とした目標設定が望ましいとの考えを示した。バイオシミラーの参入の妨げとなっているバイオ医薬品のオーソライズドジェネリック(AG)については「問題意識を持っている」と懸念を示した。
政府は、昨年6月に閣議決定された骨太の方針で、バイオシミラーについて「医療費適正化効果を踏まえた目標値を今年度中に設定し、着実に推進する」との方針を打ち出した。現在、目標値について検討を行っている段階だ。
安藤氏は「もちろん、バイオシミラーを推進することによる一定の医療費適正化効果は期待されるところだが、そのことのみを目的とした目標設定ではなく、国内の産業基盤を強化することを第一に考えた目標設定とすべき」と述べ、産業育成の視点に立った目標の立て方が重要との考えを示した。
国内で承認されているバイオシミラーのうち、国内製造販売業者の製品は限られ、海外製に依存している現状がある。安藤氏は「わが国の医薬品産業の構造改革が求められている中、バイオシミラーについても単に海外からの輸入量を増やすということだけでなく、国内で製造されたバイオシミラー市場への供給を促進していくことが重要ではないか。目標設定もそれを前提に考えていくべきだろう」との見解を述べた。
製造基盤強化に向けては、「バイオシミラーを製造するとなると、当然製造設備や人材も必要になる。こうした供給面のボトルネックについて、それを全て企業任せにするのではなく、産業構造の見直しを進める中で、国として何らかのイニシアチブを取ることができないかということは真剣に考えるべき」と国が主導的な役割を担う必要性を強調した。
その上で、「バイオシミラーの使用推進は、何か一つの取り組みがあれば進むという話ではない。後発品の使用促進のロードマップを作ったように、今回のバイオシミラーについても目標設定に合わせ、その目標を達成するための包括的な推進対策を、政策パッケージという形で打ち出していかなければならない」と表明した。診療報酬上の対応や人材育成、製造拠点の整備など様々な取り組みを並行して進め、使用促進につなげたい考えだ。
一方、バイオAGについては、「化成品のAGと位置づけは同じものだが、結果的にバイオ医薬品のAGが存在することによって、あるいは先行品メーカーがバイオ医薬品のAGを出しますよと宣言することによって、バイオシミラーが参入できないという話も聞こえてくるが、それが事実であるならば問題」と指摘。
「化成品で言えば、先発企業は革新的な新薬の開発に全力を傾けてほしいし、新薬の特許が切れたならば後発品に道を譲ってほしい。それが従前から目指しているビジネスモデルのあり方だ」とした上で、「バイオの世界でも、同じように特許が切れたらシミラーに道を譲ってもらわないと、いつまでもバイオシミラーは育ってこない。その辺は相当問題意識を持っている」と述べた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2022年6月、政府に「医療費適正化効果を踏まえた目標値を今年度中に設定し、着実に推進する」とされたバイオシミラーについて、厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の安藤課長が国産の製造基盤強化を前提とした目標設定が望ましいとの考えを提示。バイオシミラー参入の妨げとなっているバイオ医薬品のオーソライズドジェネリック(AG)については「問題意識を持っている」と懸念を示しています。