薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.01.17公開日:2023.07.13 薬剤師のスキルアップ

健康サポート薬局とは?認定の要件や取り組み事例を紹介

文:テラヨウコ(薬剤師ライター)

2016年からスタートした健康サポート薬局は、地域に暮らす人々へ向けて健康支援の取り組みを行う薬局です。2023年3月時点では、3,077軒の薬局が登録されており、これは全国にある約6万軒の薬局のうち5%ほどと多くありません(厚労省データより)。中には、申請を検討しているけれど要件が難しい、地域活動としてどのような取り組みを行うべきか分からない薬局もあるかもしれません。今回は、健康サポート薬局認定を目指す薬局関係者に向けて、認定に必要な基準を分かりやすく解説するとともに、取り組みの一つである健康イベントの実例を紹介します。

1.健康サポート薬局とは

健康サポート薬局とは、厚生労働大臣が定める一定基準を満たす薬局で、かかりつけ薬剤師やかかりつけ薬局といった機能に加えて、地域の人の積極的な健康への取り組みをサポートする健康サポート機能を有することが求められます。健康サポート薬局の認定を受けるためには、定められた要件を全て満たし都道府県知事への届け出が必要です。
 
現状では、健康サポート薬局の認定を受けても、調剤報酬が加算されるといった直接的なメリットはありません。しかし、「健康サポート薬局では気軽に健康相談ができる」ということを地域の人に知ってもらい、足を運んでもらえると、処方箋枚数の増加や店内商品の売り上げアップ、在宅サービスなどへつながる可能性があります。なにより、地域の人の健康サポートに携わることで、地域貢献としてのやりがいが生まれるでしょう。

 
▶ かかりつけ薬剤師とは?指導料・包括管理料の算定要件などを解説

2.健康サポート薬局になるための要件

健康サポート薬局となるには、「かかりつけ薬剤師・薬局の基本的機能」と「健康サポート機能を有する薬局の機能」で挙げられる要件を全て満たし、都道府県知事に届け出る必要があります。詳しい要件は日本薬剤師会の資料から確認できます。ここではそれぞれの要件について、ポイントを絞って分かりやすく解説しましょう。

 

2-1.かかりつけ薬剤師・薬局の基本的機能

かかりつけ薬剤師・薬局として患者さんへ適切な医療を提供するために「服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導」「24時間対応、在宅対応」「かかりつけ医をはじめとした医療機関等との連携強化」の3つの基準を充たす必要があります。具体的な要件を合わせて紹介します。

 

①服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導
健康サポート薬局は、患者さんがかかりつけ薬剤師制度を十分に活用できるようにサポートする姿勢が求められます。制度について丁寧な説明を行うとともに、シフト表の提示などで、かかりつけ薬剤師に気軽に相談できる環境を整えましょう。
 
また、処方薬だけでなくOTC薬や健康食品も含めた情報を薬歴に残すと、継続的な健康相談が可能です。患者さんの中にはお薬手帳を上手に活用できていない人もいます。薬の情報を複数の医療機関で共有する以外に、「次回受診時に医師に尋ねたいこと」「飲み残してしまった薬の数を書き込む」などのコミュニケーションツールとしての使い方の提案もしてみましょう。

また、要件ではかかりつけ薬剤師制度のメリットなどを伝えて、より多くの人がかかりつけ薬剤師を持つことを促すことも求められています。2020年度に内閣府が行った世論調査によると、「かかりつけ薬剤師・薬局を決めている」人の割合は7.6%にとどまっています。
 
かかりつけ薬剤師・薬局を決めた理由を聞いたところ、「信頼できる薬剤師であるため」が49.7%、「服用薬の飲み合わせを確認してくれるため」が44.9%、「生活状況や習慣を理解したうえで、薬の説明をしてくれるため」が36.1%でした。かかりつけ薬剤師として選んでもらうためには、患者さんとのコミュニケーションで信頼してもらえる薬剤師となり、患者さんの背景に応じた丁寧な服薬指導が重要です。
 
②24時間対応、在宅対応
患者さんがいつでも気軽に相談できるよう、原則として24時間対応できることが求められています。もし、かかりつけ薬剤師による対応が難しい場合は、他の薬剤師でも構いません。また、在宅患者へ適切な薬物療法をサポートするため、患者さんの家や施設を訪問し、薬歴管理、服薬指導、残薬の確認などを行う必要があります。
 
③かかりつけ医をはじめとした医療機関等との連携強化
患者さんへの適切な医療提供のためには、周囲の医療機関との連携も大切です。状況に合わせて、疑義紹介や副作用・服薬情報などのフィードバックの他、適切な処方提案を行うよう意識を高める必要があります。また、地域に暮らす方からの相談内容によっては、医療機関への受診を勧めることも大切です。その他、高齢者や難病の方など地域の方を適切にサポートできるよう、地域包括支援センターや居宅介護支援事務所、訪問看護ステーションのスタッフとコミュニケーションを取ることも求められています。
 
参考:健康サポート薬局のあり方について|日本薬剤師会

 
▶ かかりつけ薬剤師としての同意書をもらうには?

 

2-2.健康サポート機能を有する薬局の機能

処方箋を持ってきた患者さんだけでなく、地域の方々の健康的な生活をサポートするのも健康サポート薬局の役目です。ここでは要件に定められている7つの基準を解説します。

 

①地域における連携体制の構築
OTC薬や健康についての相談があった場合は、状況に合わせてかかりつけ医への受診を勧めることが要件の一つとなっています。また、病院だけではなく、介護や看護サービスが受けられる機関を適切に紹介することも必要です。そのため、地域の中で病院や他の機関と密に連携しておく必要があります。また、医師会や薬剤師会などの活動に積極的に参加し、地域の方の健康の維持・増進へ貢献するよう求められています。
 
②薬剤師の資質確保
患者さんや地域の方からの相談に適切に対応するためには、薬剤師自身の資質も高めなければいけません。そのため、健康サポート薬局では、OTC薬や健康食品などについて研修を受け、一定以上の実務経験がある薬剤師の常駐が定められています。
 
③薬局の設備
薬や健康の相談を受ける際は、プライバシーに配慮することも大切です。安心して相談できる環境をつくるため、パーティションなどで区切られた相談窓口を設置します。
 
④薬局における表示
健康サポート薬局であることを掲示し、OTC薬や健康食品などの相談ができることを地域の方に伝えます。ステッカーやポスター、のぼりを利用してアピールしている薬局もあるようです。掲示の際は、薬局の外側の見えやすい場所に、どのような健康サポートを受けられるのかを具体的に記載しましょう。

⑤要指導医薬品等の取扱い
高齢者が多い地域や子育て世代中心のエリアなど、地域によって薬局に求められるOTC薬や商品が異なります。ニーズに合った要指導医薬品等や介護用品を店頭に置いたり、取り寄せたりできる体制を整えます。また、相談があった場合は専門的知見に基づいた説明ができるように、知識を蓄えましょう。
 
⑥開局時間
地域住民が気軽に相談できるよう、平日の開局日には連続して開局(8時から19時までの時間帯に8時間以上が望ましい)するよう求められています。また仕事などで平日の相談が難しい人のために、土日のどちらかも一定時間開局していることも要件の一つです。
 
⑦健康相談・健康サポート
OTC薬や健康食品の安全で適切な使用のためにアドバイスを行い、健康相談について継続的に対応します。そのためには、販売商品や相談内容を記録しなければいけません。また、地域住民の自発的な健康への取り組みをサポートし、健康情報の発信を求められます。人々の健康への意識を高めるためにも、国や地方自治体などが作成した健康に関するポスターの掲示やパンフレットの配布に協力しましょう。
 
参考:健康サポート薬局のあり方について|日本薬剤師会

 

その他、健康サポート薬局は、受け身ではなく積極的な健康支援を行うことになります。例えば、医薬品や健康食品などを安全に適正に使用してもらうためのアドバイスや健康相談の実施です。

また、状況によっては適切な専門職や関係機関と連携したり、健康について情報発信や取り組みを行ったりするなど、率先して地域の健康サポートに努める必要があります。健康サポート薬局は気軽に相談できる場所として、地域の健康を支える場所であることが求められているのです。

 
▶ かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料の違いは?算定要件など解説

3.健康サポート薬局認定に必要な研修

健康への適切なアドバイスをするために、要指導医薬品や健康食品についての知識や、専門職または関係機関との連携について、薬剤師自身が十分に理解しておくことが大切です。そうした背景から、健康サポート薬局では30時間の「常駐する薬剤師の資質に係る所定の研修」を修了し、さらに5年以上の実務経験がある薬剤師が常駐する必要があると定められています。
 
日本薬剤師会が行っている研修を見ると、各都道府県で行われる技能習得型研修(健康サポートのための多職種連携研修4時間分+健康サポートのための薬剤師の対応研修4時間分)とe-ラーニングによる知識習得型研修(22時間分)を合わせて30時間受講することとなっています。
 
健康サポート薬局研修は、複数の団体が実施していますが、規定された30時間の研修は、全て同じ団体で受講しなければいけません。複数の団体を混ぜて受講すると、研修修了証は発行されないため、間違えないように気を付けましょう。

 
▶ 「女性にやさしい薬局」鹿児島県が取り組む女性の健康サポート

4.健康サポート薬局の取り組み事例

転職を考える上で、年収は大きなポイントです。MSは営業職のため、年収は売り上げ成績に大きく左右される傾向があります。また、企業によってはそれぞれの特色があるため、年収だけでなく、自身のライフプランやワークライフバランスに合った企業選びも重要です。ここでは、2つの医薬品卸会社の年収や労働条件、特色を紹介します。

 
■健康サポート薬局の取り組み事例
 

 
参考:
健康サポート薬局の取り組み報告|厚生労働省

健康サポート薬局の現状について|厚生労働省

 

健康サポートの取り組みは、薬局や薬剤師が自発的に行うものです。薬局の特性や地域のニーズに合った内容を発信すると、より多くの方に興味を持ってもらえるかもしれません。地域住民に喜んでもらえる取り組みを考えてみましょう。

 
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5.健康サポート薬局の要件を満たし地域に喜ばれる貢献を

薬局は、薬を通じて地域の健康な生活をサポートする役割があります。広く理解してもらうためにも、かかりつけ薬剤師の存在や、処方箋がなくても気軽に健康や薬のことを相談できる土台づくりが重要です。地域の人々に喜ばれる医療貢献の一環として、健康サポート薬局の要件を満たし、認定を目指してみてはいかがでしょうか。

 


執筆/テラヨウコ

薬剤師。3人兄弟のママ。大学院卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務。大学病院門前をはじめ、内科・婦人科・皮膚科・心療内科・皮膚科門前などで多くの経験を積む。15年の薬剤師歴ののち独立して薬剤師ライターへ。健康や医療、美容に関する記事を執筆。休日は温泉ドライブや着物でのおでかけが楽しみ。