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「レケンビ」20日に発売へ~薬価決まる、年298万円

薬+読 編集部からのコメント

認知症そのものの進行を遅らせる効果を発揮する初の医薬品「レケンビ点滴静注200mg、同500mg」(一般名:レカネマブ遺伝子組み換え、エーザイと米バイオジェンによる共同開発)が、12月20日から発売されます。体重50kgの患者が1年間使用した場合の薬剤費は298万円、処方可能施設は1000施設程度になると見込まれます。

エーザイと米バイオジェンが共同開発した早期アルツハイマー病(AD)治療薬「レケンビ点滴静注200mg、同500mg=写真」(一般名:レカネマブ遺伝子組み換え)が20日に新発売されることになった。中央社会保険医療協議会は13日の総会で、同剤の薬価収載予定日を20日と決めた。病因の一つであるアミロイドβの凝集体に直接作用し、認知症そのものの進行を遅らせる効果を発揮する初の医薬品が実用化されることになる。体重50kgの患者が1年間使用した場合の薬剤費は298万円。処方可能施設は1000施設程度になると見られる。

 画期性加算認められず

 

レケンビの効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」で、エーザイが販売し、バイオジェン・ジャパンと共同販促する。9月25日の承認以降、両社の専門MRが医療機関への情報提供活動を行っている。

 

今回、厚労省は、最適使用推進ガイドラインを策定し、投与対象患者、使用可能医師・医療機関の要件を定めており、実際に投与される患者数は限定的になると見込まれる。

 

対象有病者は500万人超とされるが、初年度は400人、2年目7000人、3年目1.4万人と次第に増え、ピーク時販売予測は9年後の3.2万人、金額にして986億円と約1000億円を推計した。

 

焦点の薬価は、エーザイが主張した画期性加算は認められず、原価計算方式による算定となった。原価や流通経費などを積み上げた価格に、有用性加算Iの45%分を上乗せし、200mg2mL1瓶が4万5777円、500mg5mL1瓶が11万4443円と算定された。

 

用法・用量は10mg/kgを2週間に1回であることから、体重50kgの患者の場合500mg製剤を年26回投与すると、薬剤費は298万円となる。

 

補正加算については、新規作用機序であることや、臨床試験では臨床的に意義のある有効性が示され、既存の治療方法で効果が不十分な患者群においても効果が認められたこと、初めて認知症の進行抑制が認められた薬剤であることを評価した。

 

算定過程では、エーザイからは類似薬効比較方式として、中枢神経系に作用する「ビンダケルカプセル20mg」(タファミジスメグルミン)、「タイサブリ点滴静注300mg」(ナタリズマブ)の二つの医薬品を最類似薬として算定すべきとし、ADの臨床症状の進行速度を抑制する初の薬剤であることなどの理由から画期性加算(70~120%)に該当するとの不服意見が出された。

 

これに対し、薬価算定組織は、ビンダケルとタイサブリの効能や薬理作用はレケンビと異なるため、類似性は限定的と判断。最類似薬は「なし」とし、原価計算方式での算定となった。画期性加算の適用は「重症度の進行した範囲を対象としていないことなどから、加算するまでの評価とならない」とエーザイの主張を退けた。

 

同日の中医協総会で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「薬価は原価の約2倍となっており、一定程度のイノベーションが認められたのではないか」と述べ、妥当な薬価と評価した。

 

同剤の使用基準について、最適使用推進ガイドラインでは、▽MRI検査が実施可能▽認知機能評価を示すMMSEスコア22点以上▽臨床認知症尺度のCDR全般スコア0.5または1――などの要件を全て満たし、アミロイドPETまたは脳脊髄液(CSF)検査を行い、Aβ病理を示唆する所見が確認されている患者に投与する。無症候でAβ病理を示唆する所見のみが確認できた人、中等度以降のADによる認知症患者には投与開始しないこととした。

 

投与施設は、ADの診療に関連する学会の認定を受け、軽度認知症障害の診断や治療など一定の臨床経験のある医師が治療の責任者として、常勤で複数人配置されていることなどを満たす必要があるとした。

 

投与開始後、6カ月に1回評価を行い、臨床症状の経過から有効性が期待できないと考えられる場合は投与を中止する。投与期間は原則18カ月までと制限し、18カ月以上投与する場合は有効性・安全性の評価に基づき判断する。

 治療体制の確立「最優先」‐エーザイ・内藤CEO

 

エーザイの内藤晴夫CEO(写真)は同日、都内の本社で記者会見し、かかりつけ医での簡易な認知機能検査から確定診断、処方、副作用の安全管理までの診断・治療体制の確立に「最優先で取り組んでいく」と強調した。

 

内藤氏は、同剤の発売に当たり「責任の重さをひしひしと痛感している」と述べた上で「AD研究のパイオニアとして再び新たな診断・治療のパラダイムを切り開く役割を担う」と決意を表明。同剤による診断・治療体制は「ゼロから1を起こす取り組み。パイオニアとして当事者とその家族、介護者、医師、薬剤師、保険者などのステークホルダーとしっかり連携して取り組む」と述べ、体制整備を急ぐ姿勢を示した。

 

今後については、皮下注製剤の開発、他の標的など次のAD薬開発を課題に挙げ、「チャレンジは続いている。いつまでできるか分からないが、レケンビで終わったわけではない」とした上で、「チャレンジは続いていく。続きを次の人にバトンタッチしていきたい」と話した。

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出典:薬事日報

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