ブックレビュー 公開日:2024.07.26 ブックレビュー

薬屋のひとりごと|中世を舞台に薬師がさまざまな事件を解決するミステリー!【ブックレビュー】


舞台は中世の東洋。薬師として花街で生活していた少女が後宮で下女として働くことになり、そこで起こるさまざまな事件に巻き込まれていきます。持ち前の知識で事件を解決するものの、またすぐに新たな事件が起こり、主人公は翻弄され続けます。
 
いつも冷静な主人公が後宮の複雑な人間関係のなかで巧みに生き抜く姿や、膨大な薬や毒物の知識を駆使して事件を解決に導く姿がとても痛快なミステリー小説。作中に登場する、さまざまな生薬の使われかたや民間療法にも注目です。

※本記事は2016年8月17日に公開した記事を再配信したものです。

 

主人公の猫猫(マオマオ)は、ある大国の花街で薬師として暮らしていましたが、薬草を探しに出かけた森で人さらいにあい、後宮で下働きをすることになってしまいます。自分の素性を隠し黙々と日々の仕事をこなす猫猫ですが、あるとき不思議なうわさを耳にして、好奇心からそれを解決するために調査を開始します。薬師としての知識を使い、真相を突き止めた猫猫は、この件をきっかけに薬や毒物について豊富な知識を持っていることが官吏に知られることとなり、上級妃の侍女として毒味役を務めることを命じられます。

 

後宮ではさまざまな事件が起こり、そのたびに猫猫は、相談を受けたり解決を求められたりします。ひとつの事件が解決したように思えても、また別の事件が起こり、猫猫はそのたびに翻弄されながらも持ち前の好奇心と豊富な知識を使って事件を次々に解決へと導いていきます。

 

クールな性格でありながら毒物に対しては異常な関心を持ち、実験と称して自ら毒を口にすることさえある猫猫をはじめ、さまざまな事情を抱えた4人の妃たち、うわさ好きの侍女など、登場人物はみな個性的で一癖ある人ばかり。そんな後宮の人間模様は魅力的で読み応えがあります。猫猫のことを気に入り、何かにつけて接触しようとする宦官の壬氏を巧みにかわし、女同士の嫉妬やいがみ合いがうずまく後宮を賢く生き抜く猫猫の姿は痛快。その立ち回りは現代社会を生きる私たちも学ぶところがありそうです。

 

作中では、猫猫が生薬を調合したり、病人に食事療法を施したりするシーンも描かれています。登場する生薬や食材とその効能は実在のものなので、これらの民間療法がどのように活用されているかに着目して読んでみるのもよいのではないでしょうか。

 

この作品はヒーロー文庫からシリーズ化されており、続刊では猫猫のその後の活躍を楽しめます。気軽に読み進められるライトノベルなので、仕事の息抜きにもおすすめです。

 
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