薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2025.01.15 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師の人数は?推移グラフや都道府県別・施設別のデータを紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬学部を新設する大学が相次いだことなどにより、薬剤師の人数が増えています。人数増加に伴い、薬剤師の需要が低下するのではないかと気になっている人もいるかもしれません。本記事では、グラフや表を使って年齢別、男女別、都道府県別、施設・業務種別の薬剤師の人数、および施設種別の薬剤師の人数推移をお伝えします。加えて、他職種との比較や薬剤師の需要と供給のバランス、薬剤師として働き続けるために必要なことについて解説します。

1.薬剤師の人数

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2022年12月31日時点における薬剤師の人数は323,690人です。男性は124,183人、女性は199,507人となっています。
 
2020年の統計の結果と比較すると、薬剤師の人数は1,708人(0.5%)増加しました。人口10万対薬剤師数は259.1人で、3.9人増えています。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師|厚生労働省

 

1-1.年齢別の薬剤師の人数

2022年末時点における年齢別の薬剤師の人数は、以下のとおりです。

 

■年齢別の薬剤師の人数
年齢 人数 割合
29歳以下 40,018人 12.4%
30~39歳 82,083人 25.4%
40~49歳 73,232人 22.6%
50~59歳 64,765人 20.0%
60~69歳 44,598人 13.8%
70歳以上 18,994人 5.9%

 

上記のデータは薬局や医療施設だけでなく、製薬企業や行政機関などに勤める薬剤師も含む人数です。30~39歳が最も人数が多く、以降は年代が上がるごとに人数が少なくなっています。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 表16|厚生労働省

 

1-2.男女別の薬剤師の人数

薬局や医療機関に従事する薬剤師の男女別の人数は、以下のとおりです。

 

■薬局・医療機関に従事する薬剤師の男女別の人数
年齢 男女計
29歳以下 11,719人 22,464人 34,183人
30~39歳 27,172人 39,455人 66,627人
40~49歳 19,023人 38,622人 57,645人
50~59歳 14,336人 34,060人 48,396人
60~69歳 11,011人 22,352人 33,363人
70歳以上 5,118人 7,866人 12,984人
全年齢計 88,379人 164,819人 253,198人

 

薬局・医療機関に従事する薬剤師については、女性の方が男性よりも2倍近く人数が多いことが分かります。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 表17|厚生労働省

 

1-3.都道府県別の薬剤師の人数

都道府県別の薬剤師の人数は、以下のとおりです。

 

都道府県別の薬剤師の人数グラフ

 

■都道府県別の薬剤師の人数
都道府県 人数 都道府県 人数 都道府県 人数
北海道 11,625人 石川 2,853人 岡山 4,245人
青森 2,373人 福井 1,500人 広島 7,324人
岩手 2,572人 山梨 1,861人 山口 3,524人
宮城 5,570人 長野 4,667人 徳島 2,595人
秋田 2,055人 岐阜 4,108人 香川 2,429人
山形 2,174人 静岡 8,403人 愛媛 3,186人
福島 3,791人 愛知 16,239人 高知 1,792人
茨城 6,709人 三重 3,607人 福岡 12,796人
栃木 4,376人 滋賀 3,359人 佐賀 2,013人
群馬 4,157人 京都 6,806人 長崎 2,950人
埼玉 16,729人 大阪 27,586人 熊本 3,983人
千葉 14,746人 兵庫 15,594人 大分 2,364人
東京 53,527人 奈良 3,219人 宮崎 2,288人
神奈川 23,718人 和歌山 2,346人 鹿児島 3,307人
新潟 4,563人 鳥取 1,243人 沖縄 2,435人
富山 2,932人 島根 1,451人

 

東京、大阪、神奈川、愛知、兵庫、福岡など、人口が多い都道府県は薬剤師の人数も多い傾向にあり、都道府県によって人数にばらつきがあることが分かります。
 
なお、都道府県別の人口10万対薬剤師数(薬局・医療施設の従事者)は、以下のとおりです。

 

都道府県別の人口10万対薬剤師数のグラフ

 

■都道府県別の人口10万対薬剤師数(薬局・医療施設の従事者)
都道府県 10万対薬剤師数 都道府県 10万対薬剤師数
全国 202.6人 三重 179.4人
北海道 192.9人 滋賀 189.6人
青森 167.2人 京都 196.5人
岩手 187.0人 大阪 221.5人
宮城 199.7人 兵庫 236.6人
秋田 192.9人 奈良 197.4人
山形 176.9人 和歌山 203.5人
福島 178.2人 鳥取 197.6人
茨城 186.5人 島根 189.5人
栃木 187.3人 岡山 191.4人
群馬 181.6人 広島 224.6人
埼玉 190.3人 山口 219.4人
千葉 195.6人 徳島 244.0人
東京 235.7人 香川 209.4人
神奈川 215.5人 愛媛 203.9人
新潟 180.2人 高知 223.2人
富山 186.2人 福岡 214.9人
石川 196.6人 佐賀 215.6人
福井 163.6人 長崎 195.9人
山梨 194.4人 熊本 195.4人
長野 194.8人 大分 187.7人
岐阜 178.5人 宮崎 180.8人
静岡 190.5人 鹿児島 186.9人
愛知 176.0人 沖縄 149.4人

 

人口10万人対薬剤師数は、都道府県ごとにそれほど大きな差はないものの、青森県、福井県、沖縄県など、全国平均と比較して薬剤師の人数がやや少ない都道府県もあります。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 統計表9・10|厚生労働省

 

1-4.施設・業務種別の薬剤師の人数

続いて、2022年末時点における施設・業務種別の薬剤師の人数を紹介します。
 
薬局に従事する薬剤師の人数は190,735人で、内訳は以下のとおりです。

 

■薬局に従事する薬剤師の人数
薬局の開設者または法人の代表者(管理者) 13,587人
薬局の開設者または法人の代表者(管理者以外) 3,136人
薬局の勤務者(管理者) 48,347人
薬局の勤務者(管理者以外) 125,665人

 

医療施設に従事する薬剤師の人数は62,463人で、内訳は以下のとおりです。

 

■医療施設に従事する薬剤師の人数
調剤・病棟業務 59,574人
その他(検査、治験等) 2,889人
病院の従事者 56,585人
調剤・病棟業務 54,845人
その他(検査、治験等) 1,740人
診療所の従事者 5,878人
調剤・病棟業務 4,729人
その他(検査、治験等) 1,149人

 

介護保険施設に従事する薬剤師の人数は1,091人で、内訳は以下のとおりです。

 

■介護保険施設に従事する薬剤師の人数
介護老人保健施設の勤務者 959人
介護医療院の勤務者 132人

 

大学に従事する薬剤師の人数は4,902人で、内訳は以下のとおりです。

 

■大学に従事する薬剤師の人数
大学の勤務者(研究・教育) 4,442人
大学院生または研究生 460人

 

医薬品関係企業に従事する薬剤師の人数は37,086人で、内訳は以下のとおりです。

 

■医薬品関係企業に従事する薬剤師の人数
医薬品製造販売業・製造業(研究・開発、営業、その他) 25,786人
店舗販売業 6,146人
配置販売業 25人
卸売販売業 5,129人

 

その他の薬剤師の人数は、以下のとおりです。

 

■その他の薬剤師の人数
衛生行政機関または保健衛生施設の従事者 6,927人
その他の業務の従事者 8,506人
無職の者 11,980人

 

上記のとおり、薬局や医療施設、医薬品関係企業に勤務する薬剤師が多いことが分かります。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 表15|厚生労働省

2.薬剤師の人数推移

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、薬局・医療施設に従事する薬剤師は年々増加傾向にあります。1982年以降の薬剤師の人数推移は、以下のとおりです。

 

薬局・医療施設に従事する薬剤師の人数推移のグラフ

 

■薬局・医療施設に従事する薬剤師の人数推移
人数
1982年 69,971人
1984年 74,676人
1986年 78,548人
1988年 84,302人
1990年 90,025人
1992年 95,642人
1994年 106,419人
1996年 118,854人
1998年 130,259人
2000年 142,910人
2002年 154,428人
2004年 164,397人
2006年 174,218人
2008年 186,052人
2010年 197,616人
2012年 205,716人
2014年 216,077人
2016年 230,186人
2018年 240,371人
2020年 250,585人
2022年 253,198人

 

薬局や医療施設で勤務する薬剤師の人数は、年々増加していることが分かります。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 図13|厚生労働省

 

2-1.施設種別の薬剤師の人数推移

次に、1982年以降の「薬局」「医療施設」ごとの薬剤師の人数推移を見ていきましょう。

 

薬局・医療施設の薬剤師の人数推移を表すグラフ

 

■施設種別の薬剤師の人数
薬局 医療施設(病院・診療所)
1982年 39,751人 30,220人
1984年 42,173人 32,503人
1986年 43,749人 34,799人
1988年 45,963人 38,339人
1990年 48,811人 41,214人
1992年 52,226人 43,416人
1994年 60,866人 45,553人
1996年 69,870人 48,984人
1998年 81,220人 49,039人
2000年 94,760人 48,150人
2002年 106,892人 47,536人
2004年 116,303人 48,094人
2006年 125,254人 48,964人
2008年 135,716人 50,336人
2010年 145,603人 52,013人
2012年 153,012人 52,704人
2014年 161,198人 54,879人
2016年 172,142人 58,044人
2018年 180,415人 59,956人
2020年 188,982人 61,603人
2022年 190,735人 62,463人

 

薬局・医療施設ともに薬剤師の人数は増加傾向にあるものの、医療施設に従事する薬剤師の増加ペースは比較的緩やかであることが分かります。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 図13|厚生労働省

3.薬剤師の人数は他職種と比べて多い?少ない?

薬剤師の人数は他職種よりも多いのか、少ないかを比較するために、厚生労働省の「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」と「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)」をもとに、2022年末時点における医師・歯科医師・保健師・助産師・看護師・准看護師の人数と、薬剤師の人数を紹介します。

 

医療関連職種の人数を比較したグラフ

 

■医療関連職種の人数
職種 人数
医師 343,275人
歯科医師 105,267人
薬剤師 323,690人
保健師 60,299人
助産師 38,063人
看護師 1,311,687人
准看護師 254,329人

 

上記の職種のうち、人数は看護師が最も多く、助産師が最も少ないことが分かります。薬剤師の人数は、看護師や医師と比較すると少ないものの、歯科医師や保健師、助産師よりは多いという結果になっています。
 
続いて、各職種の男女別の人数を紹介します。

 

医療関連職種の男女別の人数を比較したグラフ

 

■医療関連職種の男女別の人数
職種 人数
医師 262,136人
81,139人
歯科医師 77,854人
27,413人
薬剤師 124,183人
199,507人
保健師 1,947人
58,352人
助産師 0人
38,063人
看護師 112,164人
1,199,523人
准看護師 18,808人
235,521人

※助産師は女性のみと法律で定められているため、男性の人数は0人と記載
参照:保健師助産師看護師法 第三条|e-Gov 法令検索
 
男女比は職種によって大きく異なることが分かります。医師、歯科医師は男性の方が多いのに対し、薬剤師、保健師、看護師、准看護師は女性の方が多くなっています。
 
参照:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省
参照:令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省

4.薬剤師は不足している?飽和している?

前述のとおり、医療施設や薬局に従事する薬剤師の人数は増加傾向にあり、将来的には薬剤師の供給が需要を上回るという推計もあるため、いずれは薬剤師の人数が過剰になり、飽和する可能性があります。
 
しかし、就業先によって人数の推移に差があることに加え、都道府県ごとの薬剤師の人数や、人口10万対薬剤師数にも差があることから、地域偏在や業態偏在があるといえるでしょう。薬剤師は、地域や業態によって不足しているところと飽和しているところがあります
 
特に病院薬剤師の確保は課題となっていることから、厚生労働省は2036年までに薬剤師の偏在を是正するための取り組みを行っています。
 
参照:第12回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 参考資料2-1 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ(概要)|厚生労働省
参照:薬剤師確保計画ガイドライン(概要)|厚生労働省

 
🔽 薬剤師の飽和について解説した記事はこちら

5.今後も薬剤師として働き続けるために必要なこと

将来的に薬剤師が飽和する可能性もあることから、今後薬剤師として働き続けるためには、自身が必要とされる存在になることが大切です。
 
そのためには、より専門性を高めたり、薬剤師の需要が高まる分野のスキルを磨いたりする必要があるでしょう。ここでは、薬剤師として働き続けるために必要なことについてお伝えします。

 

5-1.資格を取得して専門性を高める

薬剤師の専門性を高める方法として、資格の取得が挙げられます。さまざまな勉強会や講習会で知識を習得したり、専門性の証明となる認定薬剤師や専門薬剤師の取得を目指したりするとよいでしょう。
 
認定薬剤師や専門薬剤師にはさまざまな種類があります。自身の得意分野や興味のある分野を選択することで、積極的に学ぶことができるでしょう。

 
🔽 認定薬剤師の種類一覧を紹介した記事はこちら

 

5-2.在宅医療に関するスキルを磨く

高齢化に伴い、在宅医療の需要は今後さらに高まることが予想されています。そのため、在宅医療に関するスキルを磨くのも一案でしょう。
 
在宅医療では、薬剤師としての知識やスキルはもちろん、患者さんや家族、他職種と円滑に関わるためのコミュニケーション能力が求められます。勉強会や講習会への参加、在宅療養支援認定薬剤師などの資格取得を通して、在宅関連のスキルを磨きましょう。

 
🔽 在宅医療における薬剤師の役割について解説した記事はこちら

 
🔽 在宅療養支援認定薬剤師について解説した記事はこちら

6.患者さんや他職種から必要とされる薬剤師になろう

薬剤師の人数は、業種や地域によって不足しているところがあります。しかし、近い将来、需要と供給のバランスが崩れ、薬剤師が飽和する可能性も示唆されています。今後薬剤師として活躍し続けるためには、患者さんや医療関連職種などから必要とされる存在となることが重要です。専門性やスキルを磨き、医療に貢献できる薬剤師になりましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。