薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.12.24 薬剤師のスキルアップ

漢方養生指導士とは?仕事内容・資格の種類・難易度・試験などについて解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

漢方養生指導士は、日本漢方養生学協会の認定校である薬日本堂漢方スクールの資格取得コースを修了し、資格認定試験に合格することで取得できる資格です。本記事では、漢方養生指導士の仕事内容や、ベーシック・アドバンスなどの資格の種類と難易度、試験内容、薬剤師の仕事で役立つ場面について紹介します。

1.漢方養生指導士とは?

漢方養生指導士とは、漢方に関する知識の証明に役立つ民間資格のひとつです。日本漢方養生学協会の認定校である薬日本堂漢方スクールの資格取得コースを修了した上で、資格認定試験に合格すれば取得することができます。
 
漢方理論に基づき、季節や体調、体質に合わせた養生を行い、心身ともに健やかな生活を作り、指導できる人を認定します。
 
薬剤師認定制度認証機構が認定している制度ではありませんが、薬剤師をはじめ、医療に携わる職種が臨床現場で活用できる知識を習得するためのコースもあります。
 
参考:漢方・薬膳の資格取得コース|薬日本堂漢方スクール
参考:漢方養生指導士|日本漢方養生学協会

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2.漢方養生指導士の仕事内容

漢方養生指導士の仕事内容の例としては、漢方専門薬局の開業、漢方に関するセミナーや講演会の開催などが挙げられます。
 
漢方養生指導士は薬剤師以外に、会社員・職員、登録販売者、飲食・接客業、医療・福祉関係従事者なども取得している資格です。職種によっては、冷え性の人におすすめの食材や調理方法など、薬膳を活用した生活についてアドバイスしたり、レシピを考案したりすることもあるでしょう。
 
ただし、漢方養生指導士は、漢方薬を扱えるようになるための資格ではありません。漢方薬を扱えるのは薬剤師または登録販売者であるため、漢方養生指導士の資格だけでは漢方薬の販売や調剤などができないことに留意しましょう。
 
参考:漢方・薬膳の資格取得コース|薬日本堂漢方スクール
参考:受講生・修了生の声|薬日本堂漢方スクール

3.漢方養生指導士の種類と難易度

漢方養生指導士には、6種類のコースがあります。難易度は易しいものから順に「ベーシック」→「アドバンス」→「漢茶マスター」ならびに「薬膳マスター」→「薬物学マスター」→「臨床マスター」の5段階となっており、それぞれ通学またはオンライン、通信学習により資格取得を目指すことができます。受講するためには、入学金1万1,000円(税込、ベーシックコース)に加え、以下の受講料が必要です。

 

■漢方養生指導士の種類と費用(※税、教材費込)
種類 通学 オンライン 通信
ベーシック 4万2,000円 3万7,800円 3万7,800円
アドバンス 16万円 14万4,000円 14万4,000円
漢茶マスター 8万8,000円
薬膳マスター 8万8,000円 7万9,200円
薬物学マスター 26万4,000円 25万800円
臨床マスター 33万円 31万3,500円

 

続いて、それぞれのコースについて紹介します。

 

3-1.漢方養生指導士 ベーシック

漢方養生指導士ベーシックは、漢方や薬膳に興味があり、基礎を学びたい人に向いているコースです。体質や季節に合わせた養生方法が身に付きます。
 
受講方法は通学またはオンライン、通信から選択できます。通学・オンラインの場合は全18単位中15単位以上の出席、通信の場合は修了アンケートに回答することで修了となり、認定試験の受験資格を得られます。認定試験に合格すると、日本漢方養生学協会から認定証が発行されます。
 
参考:漢方養生指導士ベーシック|薬日本堂漢方スクール

 

3-2.漢方養生指導士 アドバンス

漢方養生指導士アドバンスは、漢方の基礎理論や症状を分析するためのスキルを身に付け、体質や症状に合わせた養生生活のアドバイスができる人を目指すためのコースです。
 
漢方養生指導士アドバンスを受講するためには、漢方養生指導士ベーシック認定試験に合格しなければなりません。受講方法は通学またはオンライン、通信から選択可能です。通学・オンラインの場合は全36単位中29単位以上に出席、通信の場合は修了アンケートに回答し、認定試験に合格することで、資格が取得できます。
 
参考:漢方養生指導士アドバンス|薬日本堂漢方スクール

 

3-3.漢方養生指導士 漢茶マスター

漢方養生指導士漢茶マスターは、食薬の効能を学んで、体質や体調に合わせた漢茶を提案できるようになるためのコースです。体調に合わせたお茶や薬酒をブレンドしたり、上手に食薬を生活に取り入れたりできるようになります。
 
漢方養生指導士漢茶マスターを受講するためには、漢方養生指導士アドバンスの認定試験に合格しなければなりません。受講方法は通学のみで、全24単位中20単位以上出席後、認定試験に合格すると認定証が発行されます。
 
参考:漢方養生指導士漢茶マスター|薬日本堂漢方スクール

 

3-4.漢方養生指導士 薬膳マスター

漢方養生指導士薬膳マスターは、漢方理論にもとづき、食材の効能を理解した上で、体調や体質に合った料理のレシピを提案できるようになるためのコースです。資格取得をすることで、食材の効能を理解できるだけでなく、食材同士の相性や禁忌、レシピの組み立て方、食材に合った調理方法といったスキルを身に付けられます。
 
漢方養生指導士薬膳マスターを受講するためには、漢方養生指導士アドバンスの認定試験に合格しなければなりません。受講方法は、通学またはオンラインで、全24単位中20単位以上に出席することで、認定試験の受験資格を得られます。
 
参考:漢方養生指導士薬膳マスター|薬日本堂漢方スクール

 

3-5.漢方養生指導士 薬物学マスター

漢方養生指導士薬物学マスターは、生薬や漢方薬の効能、体調や体質に合わせた使い方を学べるコースです。生薬の効能や禁忌、漢方薬の組成や服用方法、選び方を学べます。生薬に興味がある人や、病院・薬局で扱う漢方薬について詳しく知りたい人に向いている資格です。
 
受講方法は通学またはオンラインで、漢方養生指導士アドバンス認定試験に合格した人が受講できます。全54単位中44単位以上の出席で認定試験の受験資格を得られ、合格すると認定証が発行されます。
 
参考:漢方養生指導士薬物学マスター|薬日本堂漢方スクール

 

3-6.漢方養生指導士 臨床マスター

漢方養生指導士臨床マスターは、医療従事者として漢方薬を扱うのに必要なスキルを身に付けたい人や、医療現場で漢方薬の選定や生活指導が求められる人に向いているコースです。臨床現場で役立つレベルの知識やスキルが身に付きます。
 
受講するためには、漢方養生指導士薬物学マスターに合格しなければなりません。受講方法は通学またはオンラインで、全60単位中48単位以上に出席することで、認定試験の受験資格を得られます。
 
参考:漢方養生指導士臨床マスター|薬日本堂漢方スクール

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4.漢方養生指導士の試験内容

漢方養生指導士の認定試験について、試験時間や受験料、実施形態、合格基準は以下のとおりです。

 

■漢方養生指導士の認定試験(※受験料は税込)
種類 試験時間 受験料 実施形態 合格基準
ベーシック 75分 6,600円 四者択一問題(50問) 正解率80%
アドバンス 90分 8,800円
漢茶マスター 75分 1万3,200円
薬膳マスター
薬物学マスター 90分 1万6,500円
臨床マスター 1万7,600円

参考:認定試験情報一覧|薬日本堂漢方スクール

 

漢茶マスターと薬膳マスター以外のコースには、認定試験対策講座が設けられています。認定試験の対策をしっかりと行いたい人は、講座の受講を検討するとよいでしょう。

5.漢方養生指導士の資格はどんな場面で役に立つ?

漢方養生指導士の資格は、漢方の基礎知識や生活習慣を改善する方法を学ぶ内容となっています。そのため、患者さんのセルフケアを支援したり、健康相談に生かしたりするのに活用できる資格といえます。ここでは、具体的な活用場面をお伝えします。

 

5-1.薬局・ドラッグストアでの健康相談

OTC漢方薬は処方箋なしで購入できる一方で、患者さんの体質や症状に合った選択が難しいという側面があります。そこで、薬剤師が漢方養生指導士としての知識を生かし、「症状だけでなく、体質・季節・生活習慣まで踏み込んだアドバイス」を提供することで、単なる商品説明を超えた価値を生み出せる可能性があります。
 
例えば、「冷えやすい」「疲れやすい」「ストレスを感じやすい」など、患者さんの体質タイプをヒアリングし、それぞれに合った漢方薬と食事・入浴・睡眠などの養生法をセットで提案することができるようになるでしょう。

 

5-2.セルフケア・予防医療の啓発活動

漢方養生指導士の知識は、地域住民や企業の従業員に向けた健康啓発活動においても有用です。特に、現代人が抱える冷え・疲労・不眠・ストレスなどの不調に対して、漢方の視点から生活習慣を見直す提案は、予防医療の観点からも高く評価されるでしょう。
 
例えば、季節に合わせたおすすめの食材とその効果を紹介して、生活の中で気軽に取り入れられることを啓発するのもよいでしょう。生活に寄り添った啓発活動を行うことで、薬剤師や薬局への信頼と地域への貢献度が高まります。

 

5-3.Web・紙媒体での健康情報発信

漢方養生指導士の知識は、薬剤師としての専門性を生かしながら、読者に寄り添うコンテンツづくりに役立ちます。特に、ブログ・コラム・SNSなどを活用したコンテンツでは、「分かりやすく、でも信頼できる」というバランスが重要です。
 
漢方の理論をベースにした養生に関するコンテンツでは、体質・季節・生活習慣に合わせた具体的な提案ができるため、読者が自分ごととして受け止めやすいでしょう。また、薬剤師資格があることで、情報の信頼性が担保されるため、健康情報を提供する際にも漢方養生指導士の資格は役立ちます。

6.薬剤師が漢方養生指導士の資格を生かすには

漢方養生指導士は、薬剤師以外の職種も対象とした民間資格であり、医療行為や調剤が行えるようになる資格ではありませんが、漢方に関する知識やスキルを身に付けるのに役立ちます。
 
薬剤師が取得する漢方関連の資格には、漢方養生指導士のほかに、漢方薬・生薬認定薬剤師があります。漢方薬や生薬に関する高度な知識と実務経験が求められるもので、医師との連携やチーム医療への参画などで役立つでしょう。それぞれの資格の違いを理解した上で、取得を目指してみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。