「アビガン」を英国に提供 ~ ハンタウイルス発症予防で 厚生労働省
厚生労働省は18日、ハンタウイルス感染症患者の濃厚接触者における発症予防を目的として、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス剤「アビガン」(一般名:ファビピラビル)を英国に提供したと発表した。同剤においてハンタウイルスへの効能・効果の対象外で、ヒトにおける臨床試験データも存在しないが、非臨床試験の結果では、ウイルス血症の発症前に投与することで高い生存率が示されている。
ハンタウイルスはげっ歯類を宿主とする感染症で、ヒトに感染すると重篤な呼吸器疾患や腎疾患を発現する。急激な呼吸困難を引き起こし、死亡率が30~50%に達するハンタウイルス肺症候群(HPS)と、発熱や出血等が見られる腎症候性出血熱(HFRS)に分類される。特効薬として確立された治療法はなく、人工呼吸管理や透析など対症療法が中心となる。集団感染が発生したクルーズ船の乗客には日本人が1人含まれ、英国が同国内で健康観察を行っている。
アビガン提供は、英国健康安全保障庁(UKHSA)との覚書で規定された相互協力に基づくもので、ハンタウイルス患者に接触した人の発症予防を目的に英国側から要請があり、15日に厚労省が提供した。
上野賢一郎厚労相は18日、記者団に対し、提供量、有償・無償、要請時期等に関しては「外交上の理由から公表を控えたい」としつつ、「政府備蓄分からの提供となるが、国内に影響が生じるとは考えていない」との見通しを示した。
アビガンは、ヒトを対象とした臨床試験結果のデータは存在しない。国内では新型または再興型インフルエンザウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染症を効能・効果とし、ハンタウイルスを効能・効果として承認している国・地域はない。
一方、富士フイルム富山化学や米国国立アレルギー・感染症研究所等が共同で2013年に実施した非臨床試験では、ハンタウイルスの主な原因ウイルスのアンデスウイルスに感染させたハムスターに、同剤を1日当たり50mg/kgまたは100mg/kgを経口投与した結果、組織内のウイルスRNAや抗原が減少し、100mg/kg投与群では生存率が100%を示した。
感染後3~4日目までに投与した場合はウイルス血症の発症を抑制し、比較的高い生存率を示したが、血液中にウイルス量が増大する5~6日目に投与した場合は死亡率が著しく上昇している。
同研究では、症状の発現前やウイルスが全身に広がる前の段階で早期投与開始する曝露後予防として、同剤による治療が最も有益と結論づけている。
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出典:薬事日報


薬+読 編集部からのコメント
ハンタウイルス感染症患者の濃厚接触者における発症予防を目的に、厚労省が富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス剤「アビガン」(一般名:ファビピラビル)を英国に提供したことを発表しました。